糖尿病の治療の3本柱は、
「運動療法」「食事療法」「薬物療法」であることは、古くから知られているところですが、実際にそれぞれの治療法を実施できない事が多いようです。そこで、まず運動の効果を理解してから、日常の生活の中で出来る運動から実施していきましょう。生活自体が不便な時代は、生活することで身体を動かし筋肉による糖の取り込みが促進されていました。しかし、自動車が普及しこれだけ便利な時代ではそういう訳にはいきません。自分の身体の健康を維持するために、健康を得るために運動しましょう。
 また、運動療法を実施する前には必ず、医学的検査と診察を受けて運動療法が適応となるか確認して下さい。



<運動による効果>
☆糖尿病がよくなります(糖代謝の改善)
1)血糖が下がります
      
 運動により筋肉が活動することによって、エネルギーの源である糖が筋肉に取り込まれます。このため、運動前に比べて糖が取り込まれた分(消費された分)だけ血糖値は低下します。

2)食後の血糖の上昇を抑えます
 


 血糖値は、1日中一定ではなく各食事ごとに上昇と低下を繰り返します。食後の血糖が上昇する時間帯(食後1時間程度)に運動すれば、血糖値の上昇を押さえることができ、空腹時血糖値も速やかに下げることが出来ます。




3)血糖を下げる効果が持続します

 運動は、筋肉や肝臓に蓄えられている糖分(グリコーゲン)も分解して利用します。運動終了後は、利用した糖分を補給するために血糖が使われるので、血糖を下げる効果が持続します。運動の量にもよりますが、糖分の補給には1〜3日かかると言われています。その為、運動翌日にも効果が持続しているわけです。

4)運動を続けると血糖が上りにくくなります
 血糖が高いときにはインスリンという血糖下げるように働くホルモンが分泌されます。2型糖尿病の患者さんは、インスリンに反応して筋肉がうまく糖を取り込めない病体になっています(インスリン抵抗性)。そこで、運動を継続的に行うと筋肉のインスリン抵抗性が改善されて、血糖を積極的に消費するようになります。このように筋肉のインスリン感受性の改善が、運動による最も大きな効果です。今のところ、インスリン感受性に関しては運動に勝る薬はありません。

☆身体がスマートになります(脂質代謝の改善)

1)肥満が改善されます
 
運動を長時間行うと脂肪もエネルギーとして利用されます。肥満は、血糖のコントロールを悪くする原因ですから、20分以上の長時間の運動を行って是非肥満を改善しましょう。食事療法とあわせて行うことで 、より大きな効果が得られます。

2)内臓の脂肪が取れます

 運動では内臓の脂肪が使われるので食事療法のみで減量するより健康的な効果が得られます。内臓の脂肪が少なくなればウエストがしまってきますから、スタイルの改善とあわせて一石二鳥です。しかし、腹部の皮下脂肪は内臓・腕・脚の脂肪の次に使われる場所なので、腹部の皮下脂肪が取れないからと言って決して運動を中断しないで下さい。身体の中身は確実に変化しているのですから。



3)血液中の脂肪を正常にして、善玉コレステロールを増やします

 運動によって中性脂肪が分解されて筋肉で利用されやすくなり、血液中の中性脂肪が低下します。また、運動は血液中の善玉コレステロールを増加させる効果があることは有名です。血液中の中性脂肪が減少し善玉コレステロールが増加することで動脈硬化の進行を抑制することが出来ます。
                
☆体力がつきます(基礎体力の向上)
1)筋力がつきます
 運動によって筋肉を動かすことで、筋肉は強くなります。

2)持久力がつきます
 長時間のリズミカルな運動を継続することで、筋肉への血糖や酸素の供給や取り込みが円滑に行われるようになって持久力が向上します。もちろん、筋肉へ栄養や酸素を運び、老廃物や二酸化炭素を排出するための血液の循環を良くするために、心臓や肺の能力も向上します。

3)日常生活の動きが楽になります
 筋力がつき、持久力も向上することから、日常生活での身体の活動が楽に行えるようになります。


<運動を行ってはいけない場合>

1)合併症が進行している場合

 網膜症
 腎症

 神経障害
2)血糖コントロールが著しく悪い場合
 血糖値250mg/ml以上で尿ケトン体陽性
3)脚の関節が痛い場合
4)心臓や血管に障害がある場合

 血圧が上が180mmHg以上
 安静時の脈拍が100回/分以上
5)体調が悪い場合
 発熱・腹痛・頭痛・下痢・睡眠不足など


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運動中にこんな症状が出たら運動を中止しましょう>
・運動前のチェック

 身体の調子が悪い。脈が乱れている。関節や筋肉が痛い
・運動中のチェック
 動悸がしたり、脈が乱れる・胸が痛む、締め付けられる
 関節や筋肉に強い痛みが走る。気分が悪くなる。
 目がかすむ・めまいがする・疲れる
 低血糖症状(冷や汗・悪寒など)
・運動後のチェック
 脈拍を確認し、乱れがないか・速くないか(120拍/分)

以上の症状が頻回に出るような場合は、必ず主治医に相談しましょう。



<運動療法への流れ>
1)医学的に検査して運動療法が適応になるか診察を受ける
2)運動方法について話し合う
 日常生活パターン、運動習慣、趣味
3)実施を継続する。必要の応じて運動の量を増減する。
4)効果を医学的に確認する(血糖コントロールされているか、合併症発症はないか)

<運動の方法>

1.運動の強さ
「少し疲れるかな」「少し汗ばむかな」・脈拍110拍/分

 血糖を下げるためには有酸素運動となる軽い運動が効果的であり、無酸素運動となる強い運動は血糖値を上昇させる恐れがあり逆効果となります.一般的には「少し疲れるかな」または「少し汗ばむかな」という程度の自覚症状の出る運動が目安となります.脈拍では110拍/分が目安となります(個人差があるので注意が必要です).

2.運動の時間
20分間の運動・前後2〜3分の準備時間

 運動を行うエネルギー源として、まず糖質が消費されますが、その取り込みは10分以上で効果が現れてきます.そして長時間運動を行うことによって脂質の消費も行われてきます.血糖をコントロールするためには最低10分、理想的には20〜30分の運動が必要です.減量が目的なら30分以上の運動が必要となってきます.
 また、突然運動を始めたり、突然止めたりする事は体にとって負担となります.必ず運動の前後にはウォーミングアップとクールダウンを入れましょう.


3.運動の回数
1日2回・1週間に5日以上

 運動は1日2回、できれば食後1〜2時間の間(血糖値がピークとなっている時)に行うのが効果的です.逆に食前1時間の間は血糖値が低くなっているため、低血糖を防ぐために運動は控えましょう.
 血糖値を下げるためには1週間に5日以上の継続が必要です.血糖値の維持を目的とするならば1週間に3日以上の継続が必要です.運動を行うことによって、効果は1週間ほどでみられますが、逆に4日以上休むとその効果はなくなってしまいます.


<運動をする前に・・・>
 
糖尿病の治療の一つとして運動療法があげられますが、1人1人の症状の違いもあります.まず、運動を始めるにあたって医師の確認をとるほうが良いでしょう.そして、運動の効果をあげるためには、まず継続することです.

日常での運動
                   
 
散歩    サイクリング       水中歩行       柔軟体操など     

 
運動は大きな筋肉を動かす歩行やサイクリング・水中歩行など全身運動が望ましいのですが、座った状態での手足の運動でも体力の低下の予防や血糖コントロールの効果が期待できます.
 運動を長続きさせるためには、なるべく簡単に出来る運動を選ぶことです.中でも散歩、「歩くこと」が一番取り入れやすい運動と思われます.買い物や通勤などを利用して、運動を毎日の生活時間の中に取り入れることが長続きの秘訣です.

<歩いてみよう!>
1.準備
 足に疲れの出にくい履き慣れた靴を選びましょう.(紐をしっかりと結びましょう)
 体調は悪くないですか?
 脈拍は測れましたか.(100拍/分のときには中止しましょう)

2.ウォーミングアップ

 まずのんびりと歩きましょう.
 急に運動を行って心臓や肺などに負担をかけないように、まず2〜3分ゆっくりと歩き、体を慣らしましょう.

3.軽快に歩きましょう

 ウォーミングアップの後は少し速度を上げて、「少し疲れる程度」を目安に体調に合わせて歩きましょう.汗や脈拍も目安となります.
 夏場は汗をかきやすいため、水分補給を忘れずに行い、熱射病や脱水症状などに気を付けましょう.

4.クールダウン
 ゆっくりと速度を落としましょう.
 運動を終了するときも急に立ち止まるのではなく、ゆっくりと2〜3分歩き、体を落ち着かせてから休みましょう.

 体調に異常はないですか?
運動を行ったことによる頭痛や冷や汗、気分の悪さ、しびれはありませんか?
もし体調の低下がみられたときには無理をせず、主治医に相談しましょう!