「儂(わし)がお前にしてやれることは、字(あざな)をつけてやる事だけになってしまったかもしれんな」
父らしい事は、他になにもしてやれぬ。そう、彼の父は14になった息子の頬に手を伸ばした。その顔を眼ではなく触れた掌に確かめる様な動作だった。無言でそれを享けながら、彼はじっと父の手の乾いた感触と、窶れた、そしてその所為で酷く老け込んで見える顔を瞳に映していた。
承奕(しょうえき)。
それが彼に与えられた字(あざな)であった。字を持つということは即ち、一族の中で彼が一人前と認められた事に他ならぬ。それまで子供は、名で呼ばれる事があるならば、小字(幼名)もしくは諱(いみな)と呼ばれる本名をそのままに呼ばれる。古くは男子21歳の加冠(成人)の儀においてその字が選ばれるものではあったのだが、今はその歳まで待つ事は滅多にない。
14の自分に字(あざな)をつける、その意味を彼は漠然とした不安の中で捉えていた。父は長くない。父自身がそれを悟っている。そう、彼は慮(おも)った。
眼の前にする父は、確かに患いついて長い。だが今日明日に死ぬという重体ではないと見えた。ただその病身である己にできぬ何かを、未だ力残されているうちに息子に託そうとしている、そんな風に見えた。
その緊張が、彼の表情の中に曇りとして顕れたのか、父は弱く笑った。
「岱(たい)よ―――」
今しがたつけた字ではなく、諱(いみな:本名)で息子を呼び、父は諭すように静かな声で続ける。
「岱とは泰山のことだ。高き山岳の名だ。東方にあって東方を鎮める大山、天子が天意を受ける為に上る台…」
天に上るものを支える高きもの。
そう、父親は云いながら、息子の頬から手を離した。
「そして字の承奕―――奕の文字はやはり岱に通じる。おおきくすぐれたものの事だ。突出した山容を『奕々』と表す。岱、いや承奕」
名に愧(は)じぬ者となれ。そう、父は息子を諭す。
「山の如く、静かにそこに存ることそのものが勁さである…それは難しい」
だが山がなければ人は天に近付けぬ。その父の言葉を酷く難しいものと感じながら、それでも彼は黙ってその嗄れた声を聞いていた。僅かな時間を、こうして向い合って語り過す、それだけの事にも疲労するのか、父の呼吸が幾らか忙しくなるのを感じながら、しかしそれを遮ることは、してはならぬ事の様に思え、ただじっと、父の顔を見上げていた。
「承奕、我等馬氏は、落魄(おちぶ)れたりといえども漢の名将、伏波将軍馬援の末裔(すえ)だ。同時に羌族とも境を接し、ある部族とは闘い、ある部族とは血を交えて今に至る」
羌族とは、遊牧を生活の糧にする異民族である。山岳に住む民族で、気性は穏やかであるといっていい。ただ漢に倣わずその支配から離れたところにあり、部族に分れ、己の部族の自由の為に漢との抗争を起こすものもあれば、従わぬまでも恭順の意志を見せるものもある。
その羌族はその昔、天より山岳を与えられたと伝えられていた。山岳あるところに彼等の自由はあり、山岳は地上の帝の力は及ばぬ。及ぼしてはならぬ。その山岳ある限り、羌族はそこに拠(よ)って、決して滅びる事なく、天の恵みを与えられる。
その山岳の恵みを享けよ。そう父は云っているのだと、彼は漠然と感じた。
その父が死んだ。彼に字を与えてよりすぐ後の事であった。
病ではなく、戦死であった。鎧を着たまま運ばれてきた父は既に動かぬ骸となり果てていた―――
扶風郡の馬氏。漢の功臣、馬援の子孫である。老いて尚、輝かしき武勲を挙げた馬援という将軍は、一旦途絶した漢朝を光武帝が再び復権させる折の貢献ひとかたならず、また光武帝が位に登って後も、異民族との闘いに大いに力を揮っている。
だが時代は降り、その馬氏はいつか落魄していった。馬氏の先代は天水郡蘭干県の尉となり、官位を失った後もそ隴西の地に留まった。困窮する生活の中、妻を持たなかった先代は、その地で漢に混じり暮していた羌族から娘を娶り、子を成した。
ひとりは岱の父であり、今ひとりは岱の叔父にあたる馬騰である。
今、馬氏を事実上率いているのは、二人の子のうち、弟である馬騰であった。岱の父があまり丈夫ではなかった事も理由の一つではあろうが、今ひとつの理由は、同じ羌族の娘でも馬騰を産んだほうがその羌の部族の族長の娘である正妻であり、岱の父を産んだのはその正妻となる娘についてきた侍女(おくりめ)であったからである。
どちらも妻は妻。先代も生まれた子には分け隔てをしなかった。だが常に、岱の父は弟である馬騰を立てた。
『父上は兄なのに、何故弟である叔父上に仕えておられます?』
まだものの道理をのみこめぬ幼い頃、岱はそう尋ねた事がある。父は苦笑し、そして応えた。
『確かに、家を継ぐのは長子であるのが決まり事の様に思われてはいるが』
それだけが正しい事ではないのだよ、と父は彼に語った。
『たとえば、お前の祖母(ばあ)さまの族―――羌では季(すえ)の子が家を嗣ぐ。何故だか判るか?』
人は順当にゆけば、先に生まれたものが先に老いて死ぬ。後に生まれた子が一番長く生きる。だからその分、家の祀りが長く続く。岱が応える前に父はそう続け、更にそれを否定するように呟いた。
『それも、決まり事ではないが』
どの一族も、それが勁くなろうとする時、最もその長(おさ)として相応しい、勁いものを選ぶ。
『困窮し、財産もなかった馬氏を支えてきたのは、騰だった。材木を切出し市で売り、誰に頼る事もなく一族を養った。そして乱が起きた折に功績を挙げ、賊を討伐して馬氏の名を挙げたのは騰だ』
儂には出来ぬ事だった、と父は穏やかに続ける。
落魄した馬氏の中でも、馬騰は抽んでていたと言えよう。体格にも容貌にも恵まれ、市で材木を売っていた折も、喧嘩の仲裁やならずものの退治など人の世話をなにくれとなく焼いたらしく、いつしか彼に人望が集まった。賊討伐の為に州から兵の募集の通達があった折も、その中にいた馬騰は既に名を知られていたらしく、すぐに一軍の指揮を任され、手柄を立てた。
賊というのが、羌など辺境の異民族の起こした叛乱であった事も、彼に天が味方したと言えるかもしれない。叛乱を起こした羌の一部族と敵対関係にあった別の羌族が、彼の部曲(私兵団)となって味方した。馬騰の母親の部族と、それに呼応するものたちであった。
偉大なる叔父、馬騰。確かに岱もそれを仰ぎ見る時、いつも畏敬の念(おも)いを抱いていた。自分の叔父はこれほどに勁い男だと、憧れすらあった。
だが、同時に複雑な思いもあった。穏やかで思慮深い父には、馬騰ほどの武勇はない。己の側に人を惹きつけ、それを率いるには余りに静かな父。躰があまり丈夫ではない事もそれに拍車をかけたのであろう。
父は決して、言葉にも面にも馬騰に対して嫉む様な感情の色を乗せた事はない。兄でありながら、同時に一族の長は馬騰であるという姿勢を崩さず、従い続けた。だが岱に『馬氏の頭領に相応しい力を持つのは、騰だ』と告げる毎に、まるでそれを己に言い聞かせる様な響きがあったのを、岱は聞いた様な気がする。
鬱屈した矜持が、己の子に「岱」という名を撰ばせたのか。天子を支え、天意を享ける「泰山」を意味する、羌族の拠り処となるその山の名を与えたのか。
それを問う事は岱にはできなかった。問うてみたくとも、既に父はおらぬ。
ただ漠然と、父の死を眼前にして、やはり父上は叔父上を羨んでいたのかもしれぬと、そう思ったばかりだ。男としてかくありたいと、弟を見る毎にそう想っていたのかもしれぬと。
岱の叔父であり、馬氏を率いる馬騰は、賊の討伐以降も殊勲を認められ、昇進を重ねている。この西の辺境に駐屯し、征東将軍という官位を得た。
だが、官位は得ても、財はそれに追い付かぬ。兵糧とするべき穀物が不足し、軍中にありながらも窮乏する者が夥多あった。見かねた馬騰は自ら上表し、池陽という地において穀物を得ることを願い出た。それが認められ、駐屯地を移したのではあるが、しかしそこで問題が起きた。
その地に元々派遣されていた者たちが、頭角を顕した馬騰の存在を目障りだと感じたのである。ここで力をつけさせれば、何れ自分達の禍となるのではないかと、そう懸念した。
その理由の中には、馬騰が羌の血を半分享けた事もあったのかもしれぬ。羌と結託した馬騰の部隊は精強であった。膨れ上がる前に叩かねば、自分たちの地位が脅かされるかもしれぬ。漢の功臣の裔(すえ)とはいえ、それを嵩に着て期に乗じ、自分達を追い出して代りにこの西州を我がものとするのではなかろうかと。名族とはいえ、あれは半分羌であろう。漢の威光を、その漢から遣わされた者を、重く見る筈もない異族の縁(ゆかり)の者ではないかと―――
彼等は、馬騰が兵糧を集めに陣営を出た隙を狙った。よもや襲撃を受けると思わなかった陣は混乱し、その中で病床にあった岱の父が立った。
騰がおらぬといえど、この馬氏に敗北などはない。そう軍を叱咤し病身に鎧を着け、幼い者や弱兵を後退させ、岱の父は陣頭に立った。そして、槍を掴んで馬に乗る父の後ろ姿が、岱の眼に映った生きてある父の、最後の姿となった。
隙を狙われた陣営は、指揮をしていた岱の父が落命したと同時に敗走を始めた。変事に気付いた馬騰が戻ると、しかし反撃を行なう事はなく、残った兵と兄の遺骸を速やかに回収し、陣を退いた。今ここで無駄に兵力を費やす訳にはゆかぬ理由があったらしい。
同時に、兄の死に、馬騰もまた衝撃を受けたのだろう。何故すぐに退かなかった、病をおして陣頭に立つ必要がどこにあったのだと、馬騰はそう悲痛な声で繰り返していた。
だが岱にはそれが判る気がした。言葉にはできぬ。だが父が生前、岱に向かって『騰こそが馬氏を率いる器だ』と告げた声に潜んでいた僅かな苦さに、その答えがある様な気がした。
父は己もまた、馬氏の一族として誰かに認められたかったのかもしれぬ。
そう、思った。
葬儀の喪主には、弟である馬騰が立った。長子である岱が未だ年小である為でもあったが、進行する葬儀に参列しながら、岱は何故か涙の出ぬ己を、不思議な思いで受け止めていた。
それ以前に、父の死というものが、酷く遠く感じられた。患いついた父の姿を長く見ていた彼は、いつかはそうなるだろう、と漠然とそれを捉えていた。覚悟も出来ていた筈だった。
だがそれは、まだ少し先の事だと思っていたのだ。医師や、父に薬を届ける羌族の男は、静養すればまだ岱が子をなす頃までは大事ありますまいと、そう告げていた。岱もまた、そう思っていた。
しかし、現実に父はおらぬ。その事実が、どうにも腑におちて来ないという状態で、彼は進められる葬儀をぼんやりと眺めていた。彼の眼には、最後に父が鎧を着けて出陣した、その姿がはっきりと灼き付いている。病とは思えぬ身のこなしで、彼が父のそんな勇ましい姿を見たのは殆ど初めてだったといってよい。確かに父もまた、叔父と同じ血を享けた馬氏の男なのだと、軽い感動すら彼にはあった。
その父の名を、幾度も呼ぶ声が聞こえる。哀哭の声を上げ、音曲を鳴らし、死者の魂がまだそこに逍遥うなら今いちど肉体に戻れと呼び続ける、それが葬儀の礼であった。撒かれる紙銭の中に繰り返される父の名を聞きながら、しかし彼はその儀礼が酷く遠いものの様に感じられる。そして、哭礼をなす叔父の馬騰の姿を、その歎きの様を、まるで他人事の様に眺める自分の耳に、ふと声が飛込んだ。
今、馬氏を束ねるのが寿成(馬騰の字)殿といえども、なんといっても兄上を蔑ろにはできまい。亡くなられた方には申し訳ないが、これで寿成殿が馬氏の頭領たるに何の憚りもないというもの。安堵されよう。
誰の声であったか。ひそやかに囁かれる声には確かに何者かが頷いた声が重なった。よもやこうなることが判っていて、寿成殿は陣を離れられたのではあるまいか。
軽い衝撃と共に、岱は哀哭する叔父の姿に眼を向けた。そこにはただ兄を喪った哀しみだけがあり、安堵の気配など感じられよう筈も無い。礼であるから哭している、ただそれだけなら、あれほど悲痛な声で哭けるものだろうか。
だが、しかし。
その一瞬の疑念と動揺を払う様に、自分の側で誰かが立ち上がる気配を、彼は感じた。はっとして振向いた先に、自分と同じく、袖を縫わずに断った白い喪服の、少年の姿がある。
「超どの―――」
自分より2歳年小の少年が、立ち上がって今しがた声のした方を睨んでいた。馬騰の長子の、馬超である。
ひそやかに上がった心無い声はぴたりと止み、大人たちは固唾を飲んで、立ち上がった少年を見上げていた。
「超どの」
岱は今一度繰り返し、その少年の喪服の袖を掴み、つよく引いた。そうせねば、少年が、そのまま声の主であろう何者かに殴りかかるのではないかと思えたのだ。それだけの気迫が、そこにはあった。
袖を引かれ、馬超はゆっくりと彼を振返る。固く引き結ばれた唇許は、歯を喰い縛っているのか、微かに顫えていた。
そして、泣き腫らしていたのだろう、その瞼から、更に新たな雫が転がりおちる。だが無言で馬超は袖を引かれる侭に坐り、膝の上で拳を握り緊め、項垂れた。その手の甲にも、喪服の膝にも、いくつもの雫が滴り陥ちて、新たな染みを作る。
馬超が坐った事で、それ以上の声は上がらぬものの、明らかな安堵の空気がそこに流れた。無理も無いと岱は思う。馬超の気性のはげしさは既に知れていた。寿成(馬騰)のところの若は快活で、父上に肖て、とても少年とは思えぬ器だが、同時に怒らせると手のつけられぬ情の強さだ、と、それが風評だった。岱が感じた様に、その熾しい視線を向けられた側も、やはり殴られるとでも感じたのだろう。
「岱―――」
項垂れたまま、馬超が呟いた。一族の中で年長の岱は、本来なら従兄弟である馬超には兄と呼ばれて然るべきだろうが、かれは昔から岱をそう呼ぶことはなく、名で呼んだ。岱自身、それが自然だと思っていたが、敢えて父と叔父との暗黙の諒解のうちにそうなったのだという事を、後に薄々感付いた。馬氏を束ねるは馬騰、そしてそれを嗣ぐのは馬超。それを明らかにせねば必ず禍となると。そして、それを岱はごく自然に受入れていた。
「岱、父上は、」
疾く戻ろうとしたのだ。だが間に合わなかった。まさか伯父上が陣頭に出るなど、父上は考えもしなかった。
そう馬超は続け、岱はただ頷き、馬超の握り緊められたままの手を掴んだ。
先の戦闘の際、馬超もまたその場にいなかった。父である馬騰と共に、陣を離れていたのだ。よもやこの事態を予測した馬騰が、万が一を考えて馬超を敢えて側に置いたと、悪意を持って考えれば、そう見えなくもない。馬超は幼いながらも、その武芸は大人顔負けだと誰もが賞賛するところだ。もし陣に残れば、父でなくこの従兄弟の方が陣頭に出ただろう。馬超の気性を考えれば、確実にそうなる。
だが、真偽はどうあれ、馬超が今呟いた言葉は、真実だと彼は思った。そして、父の死を悼む馬騰の姿もまた、偽りではあり得ないと。
そして。
葬礼は進み、哭礼を行なう段となって尚哭けぬ自分よりも、恐らくは馬超の涙は真実に近い。そう、彼は思った。礼であれば哭くふりをして、それに引き摺られる様に涙は落ちる。だがしかし、その涙が感情から酷く遠いところから零れていると、そう感じた。
自分は薄情な子なのかもしれぬ。馬超の半分も心の篭らぬ涙しか流せぬ。
そして同時に、未だ葬礼に空々しさすら感じるほど、父の死という事態が理解できぬ。その不可解な浮遊感だけが、彼にとってはっきりと感じられていた。
葬礼が終わり、すぐに岱は熱を出した。さほど高い熱ではないが、ゆるやかに体力を奪う様な発熱が続き、医人は暫し安静にせよとのみ告げている。
一度、叔父である馬騰が見舞に現れた。牀台から身を起こそうとした岱を制する様に大きな掌を額に置き、馬騰は云った。
「大人しく寝ていろ。予期せぬ戦に加えて、父を亡くしたのだ。疲れが出たのだろう」
こどもにはよくある事だ、と馬騰は苦笑し、岱もまだまだ子供なのだからな、と付け加えた。その声音にも、向けられる眼差しにも、暖かみが感じられた。この叔父は、実子である馬超と自分を、これまで兄弟の様に扱ってきた。これからもそれは変わらぬと、その眼差しと触れられた掌が告げている様な気がして、岱はふと唇許に笑みを浮かべた。
「どうした、何が可笑しい?」
子供扱いされるのが嬉しいか、と尋ねた叔父に、岱はいいえ、と答える。
これまで自分は父の病床の側についている事はあっても、こんな風に誰かに見舞われた事はなかったといっていい。だから、逆の立場になった自分が可笑しかったのだ。
それを云う岱に、そうか、と馬騰は笑った。
こうして見上げると、やはり叔父は魁(おお)きい男だと思える。躰の魁(おお)きさもあるが、同時に存在そのものの偉(おお)きさが感じられた。病身であった父は、子供の岱が見てすら希薄と感じる部分があった。だが叔父には、それがない。
労られる事で、確かな安堵を覚える。同時にこのひとは自分の父ではないのだな、という遠慮が僅かに生まれたのも事実だ。
父がそうしたように、自分もまた、この叔父に仕える立場なのだと。
「岱―――」
その岱の内心を感じ取ったか、馬騰は掌でその頭を撫でながら、幾分心配げな色彩を表情にも声にも乗せた。
「泣かなかったのだな」
泣けなかったのか、と叔父は問い掛ける。怪訝そうに彼が眉を顰めると、馬騰は更に続けた。
「親の死を哀しまぬ子はおらぬ。泣いたとて、誰もお前を泣き虫とは罵らぬ」
恥じる事はない。その叔父の言葉に、岱はただ瞬きを繰り返すばかりだった。
そういえばそうだな、と岱はやはり他人ごとの様に思った。父ほどではないが万事控え目で、大人しいと思われがちだったが、岱は泣く事も笑う事も素直に顕す少年だった。年下の馬超には武芸の稽古でよく打ち負かされ、手酷くやられるとべそをかく事もままあった。それで馬超や周囲の者からは、泣き虫とよく揶揄われていたのだが。
堪(こら)えている訳ではない。自分はそれほど我慢強くはないだろうと岱は自身でも思う。だが哀しいという感情はどうしても沸き起こらず、戸惑った様な心持ちだけが、そこにある。
労られながら、どうすればよいのか判らない。労られる理由すら無いのではないかと、そう思えた。
「堪(こら)える事はない」
まず、疲れを癒せ。熱が引いたら、西へ行こう。そう、馬騰は云った。
「東には戻らん。我等が力が未だ整わぬうちは、この間の様に我等を侮り、不意打ちで潰そうとする者が出てくる」
今暫し、西の地で力を蓄え、また我等が勁さを中原にまで鳴り響かせる必要がある。その為に、三輔という地を奪取(と)ろうと思う。
「西には韓遂という男がいる。その男と共に事を起こせば、巧くゆくだろう」
その叔父の言葉をぼんやりと聞きながら、岱は自分もまたそこに付いて行くのだという実感の沸かぬ侭、ただ頷く事しか出来なかった。
だが、さしたる原因もないままの岱の発熱に、不穏な声があがっていた。
非業の死を遂げた岱の父の魂が、何事かを訴え、疫鬼となって岱に降りているのではないかという囁きだ。弟の馬騰が自分の上に立った事を、やはり死した方は何も云わぬまでも憾(うら)んでいたのではないか。あまつさえ、長子の岱ではなく、馬騰が喪主と立って改めて馬氏を嗣ぐものとして認められている事を、呪っているのではないかと。
それが故に、馬氏に仇成そうと地に留まっている、それが岱の病の因(もと)なのではなかろうか。
それを耳にした馬騰は烈火の如く怒った。
「何故、大哥(あにうえ)が我が馬氏に仇成す必要がある!」
万が一にも儂に不満があり、己の立場を憾んだならば、何故、儂や儂の子等に祟らず、自分の子である岱を苦しめねばならぬ。筋が通らぬ。そう、馬騰は一喝し、声は止んだ。
「大哥は確かに武芸は儂に劣った。躰も弱くあった。だがひとしく馬氏の血統だ」
最後に一族を守るべく生命を賭けた。その矜り高い姿を佞言で穢す気か。己の血統を守って死んだものが、一族の守りとなるならともかく、一族を滅ぼそうとするなど、考えられる筈も無い。その声の熾しさに表立って逆らうものはない。だが、岱の発熱が原因も定かならぬまま、ずるずると続いているのは事実である。
無論、その言葉は岱に届かぬように配慮されてはいた。だが、えてしてそういう悪意ある言葉ほど、どこからともなく流れ聞こえてくるものである。
だが、岱は怒りはしなかった。可恐しいとも思わなかった。ぼんやりと、確かに父は口惜しかったのかもしれぬ、と考えたのみだった。
永くないとは覚悟していたであろう。だが最期にいちど、戦に捷(か)って死にたかったのではなかろうか。弟である馬騰の様に、人々の賞賛を生きて浴びたかったのではないだろうか。
それを成せずに死んだ口惜しさ。死んで漸くその死に様を賞賛されるような在り方を、寂しいと思っているのではないだろうか。同時に、その死に際して涙すら流せぬ我が子を、憾んでいるのではないだろうか。
自分よりも叔父の馬騰を憧れを持って仰ぎ見た息子の岱を、何も言わぬまでも苛立たしく思っていたのではないだろうか―――?
山岳に守られた民が死せば、魂は山に存る鳥となり天へ還る。
そんな言い伝えを、聞かされた事があった。岱が4つの頃までは祖母も生きてはいたから、多分その祖母から聞いたのかもしれない。羌族の言い伝えなのだろうか。
だが天へ還る前の魂は未だ地と天の間を逍遥い、それが天へ登る道を見失えば、生きてある者に仇成す鬼(き)となる。だから死者が道に迷わぬ様に、残された者は祀りを絶やさず、また葬儀にあっては歎き、遺された者の哀しみの深き事を顕す。
哭く事のできぬ者があれば、それは故人に対しての慮(おも)いが足りぬか、もしくは故人を憎んでいたか―――故人の魂がその者を悪(にく)む理由のひとつとなる。
自分が、哭けなかったから。
岱はそう思った。父は未だ行くべきところへ行けぬのだろうか。祖母や、岱を産んですぐに亡くなったという媽(母)の許へと行く事が出来ぬのであろうか。
―――それは、どこなのだろう。行くべき場所。天の向こう、山より遥かに高い場所であろうか。
もし、ひとりでゆくのが寂しいなら、自分が父を連れていってもいいかもしれない。父が待っているというのなら、追いかけても良いのかもしれない。
そんな風に感じられる。大体、父が死んだというその実感すら、まだないのだ。だから岱にとってそれは、離れたところで一人病床に取り残されている父の許を音訪(おとな)う事と、さして変わりは無い事の様に思われた。
自分が調練へと出掛けても、父は病床から離れる事ができぬ事が多かった。従兄弟の馬超や、叔父の馬騰と共に外で駆回り、埃塗れで戻って来ると、父は微笑を浮かべ、肩を撫でてくれた。年下の馬超は自分よりずっと勁いが、それでも叔父が「岱も勁くなった」と褒めてくれたとそう告げれば、父もまたそれを喜んでくれていた。
けれど、父もまた、外で駆回りたかったのだろうか。叔父ではなく、自分自身が、実子である岱に稽古を付けたかったのだろうか。あの微笑の中にあるさびしさに肖た翳は、それを顕していたのだろうか。
父は、一人で館の内にあることが、寂しかったのであろうか。
自分が父の事も忘れて外にあった間もずっと。
―――忘れて…?
「岱!」
不意に袖を引かれて、がくりと躰が傾いだのが判った。急に高いところから抛り出されたその感覚にも肖た衝撃と共に、岱は地面についた自分の手を見た。その手を照す夜明かりを見た。
何が起こったのか判らず茫然としている岱の袖を、脇から今いちど誰かがつよく引いた。それに揺さぶられ、辺りを見回せば、中天にかかる亮(あか)るい月と、そして風にざわめく草や樹が見える。埋葬されぬ父の棺を収めたままの、殯(もがり)の仮庵が見える。
それが見えるところに、ぺたりと座込んでいた自分に岱は気付き、いつの間にこんな処に出てきたのだろうと、怪訝に思った。袖と裾を断ったまま縫わぬ喪服のまま、自分は牀台ではなく外にいる。自分で歩いて来たのだろうか、足がつめたく泥と夜露に濡れているのが判る。
「岱!」
今一度呼ばれ、岱はゆっくりと自分の袖を掴む姿に眼を向けた。ひどく険しい表情の少年がそこにいる。それは、怒っている様にも見えた。何故怒っているのだろうと、間の抜けた事を考えながら、岱はその少年に呼び掛ける。
「超どの―――」
どうしてここに、と問い掛けても答えはない。そこにいたのは、馬超であった。薄着であるのは、夜着に着替えた後であるからであろうか。それにしても、望(満月)が高く昇ったこの時間に、この少年がどうしてこんな処にいるのだろう。
訝しむ岱の袖が幾度も無言で引かれ、地面に手をついた岱は、彼が自分をここからどこかへ引き戻そうとしているのだと、そう察した。
だが動く事はせず、年下の従兄弟であり、恐らくはこれから自分が、父が馬騰にしたように仕えるべき相手となるだろう少年に、岱は微笑を向け、宥める様に告げた。
「超どの、皆が心配なさいますぞ」
お戻りなさいませ、と告げる言葉に、馬超はきつく唇を噛んで、岱を睨み据えた。その涼やかな眼差しにある鋭い光に気圧された形で、岱は覚えず、躰を引こうとする。
しかし、馬超の手は、岱から離れなかった。
「岱、俺は―――」
伯父上が好きだった。あまりお会いする事はなかったけれど、でもとても優しい方だったと知っている。優しくて、思慮深い方だった。
そう告げながらも馬超の眼は岱を睨んだままだった。だがその語気の荒い、殆ど瞋りを顕している様な声は微かに顫え、切れ長の眼に、零れんばかりの雫が滲み出す。
「父上も、伯父上の事を、案じていた。暫しの間休息を取られればよいと陣に置いて来たが、嫌な胸騒ぎがすると、ずっと云っていた」
父も、おれも、伯父上の事が好きだった。
「だから、」
搾り出す様に、馬超は続け、それを茫然と岱は聞いている。
「だから、伯父上がもうおられぬ事が、とても寂しいと、そう、思う」
「超どの」
「でも、」
岱が伯父上と同じ処に行くのは赦さん。
その言葉に岱は眼を見開き、馬超は更に、両手で岱の腕を掴みながら、言葉を叩きつける様に投げてくる。
その瞳から月明かりを受ける雫がこぼれ落ちる事も意に介さぬ容子で、岱に真っ直ぐにそのつよい光を打付けてくる。
「俺より、ずっと岱の方が辛いのは判る。岱の、父上だから。あの殯の庵にあるのは、岱の父上の骸だ。けれど、」
岱は、いくな。
馬超の声に打たれた様に、岱の躰に衝撃が走った。それに衝き動かされるままに彼は殯の庵を振返り、未だ松明の焚かれ、夜闇に浮び上がるその場所を見た。
あそこにいるのは、父上だろうか。ほんとうに、父上がそこにいるのだろうか。
たったひとりで、そこにいるとでも云うのだろうか。
字(あざな)を、付けてくれた。その承奕という字に、岱という名に敗けぬ男となれと頬を撫でてくれた。
そしてあの日、慣れぬ鎧を病身に負い、槍を掴んで振返る事もなく奔り出して行った。「この馬氏に敗北はない」と周囲を叱咤し、岱に後方へ退けと叫んでいた。
その声を、後ろ姿を、触れた手の感触の全てを覚えている。けれどその後、父はどうした。未だ戻らぬ。戦は終わったというのに、父は戻ってこない。
あの、殯の庵の中に―――?
違う、と誰かが叫んだ様な気がした。
そこにあるのは骸でしかない、と。
「伯父上は、戻って来られぬ。戻って来ぬ場所へいってしまわれた。だから、」
岱までそこに行くな、という声が聞こえ、岱は庵からゆっくりと視線を戻し、自分をそちらへ引き摺り戻そうとするような、少年の姿を見た。
「超どの、」
敗けん気の勁い少年の頬に、涙が伝っている。呼吸が酷く荒いのは、しゃくりあげようそうになるのを堪えている為だろうか。普段は自分を「泣き虫」と揶揄うだけの事はあり、この少年は滅多な事では涙を見せぬ、強情で剛胆な少年だと大人たちまで呆れる程だというのに。
頑是無い子供の様な表情で、それでいてこちらが気圧される様な気迫で、馬超は岱を睨んだまま、その表情を隠す事もない。
「超どのは、」
どうして、ここに。
今更の問いを再び投げれば、潤んだ声が、拗ねたような響きを帯びて、答えを返す。
「岱が」
泣かぬから。本当に哀しいのは岱なのに、俺よりずっと辛いのは岱の筈なのに。
「泣き虫の岱が、泣かぬから――――」
泣かぬまま、どこかへ行ってしまった様な気が、したから。
少年の声が、岱の中の何かを、勁く弾いた様な気がした。息を呑み、岱は地面についた手を伸ばし、眼の前の少年を勁く引き寄せ、自分の腕にかき抱いた。
縋る様に力を込め、その髪に半ば顔を埋める様な形で岱はきつく瞼を閉じた。驚いた様に腕の中の少年が身を強ばらせる、その顫え。そして、確かな重さと、衣服を通してかんじられる呼吸の熱さ。それは確かに真実、ここにあるものだと彼は思う。
「岱は、」
ここにおります。そう答える自分の声が詰まったのが判った。
自分はここにいる。けれど、既にあの父はここにおらぬのだと、そう、初めて感じられた。
字をつけてくれたあの声が「岱」と自分を呼ぶ事は、もうない。触れる事も、縋る事も出来ぬ。その理不尽さに対する瞋りの様なものが喉を顫わせ、嗚咽となって零れ出そうとしている。自分を子として抱く腕はどこにもないのだと、その実感が押し寄せ、瞼の奥が酷く熱く、その熱さが頬を伝って零れ落ちた。
「ここに、おります…から」
搾り出す声が揺れ、腕の中の少年の手が、自分の袖を未だしっかりと掴んでいる事に彼は気付いた。離すまいとする様に。喪われたものを追って、どこかへ行かぬようにと畏れる様に。畏れるものなど何もないと思えるほど、傲慢できかん気の勁い少年が、しっかりと自分をここに繋ぎ止めようと、必死に力を込めている、それが、判る。
泣けぬ自分の代りに涙を零し、遊離しかけた自分の魂を呼び戻す様に。
ここにおります、と、今一度岱は答えようとした。その少年の名を、呼ぼうとした。だが声は言葉にならず、はげしい嗚咽だけが喉を破り、顔を上げる事すらできなかった。
相手を抱き竦める腕に力を込め、そうせねば自分を呼び止めた者すら喪われるのではないかと、それが怖かった。
「ちちうえ…ッ」
少年の名を呼ぼうとした声は、いつしか父を呼ぶ声に代り、その岱に抱き竦められたまま、少年の手が、宥める様に岱の背に回る。自分の父を好きだったと、そう云った少年の掌はそのまま岱の背を幾度か叩き、そして叱咤する様な言葉が響いてくる。
「ばか、岱!」
勝手にどこかへ行くな。俺は赦さないからな、という声は既に涙の曇りはなく、けれど乱暴ではあるが、あたたかかった。そのあたたかさが更に自分の中の何かを搾り出して行くようで、声が、涙が止まらない。
しかし馬超はそれを咎める事なく、抱き竦められたまま、逆に岱を支える様に腕を回し、じっとその場を動こうとはしなかった。
ふたりの少年がいない事に気付いた大人が、漸く彼等を発見するまで、彼等はただどちらがどちらを支えているのかも判らぬまま、月亮(つきあかり)の中、動かずに存った。
感情を暴発させるように泣き喚いたのが功を奏したのだろうと、医人は告げた。ゆるやかに続いていた岱の発熱が、その夜から急激に熾しくなり、まる2日経ってそれが収まった頃には、既に岱の体調は元に戻りつつあった。
その岱が起上がれる程に回復してから暫くの日数を置いて、馬騰は自分の陣営を西へと移動させた。
韓遂という男が、隴西の地を包囲したばかりの頃の事であった。その韓遂と馬騰は呼応し、事を起こそうとしていたのである。
その慌ただしい陣の中、岱は起上がると、自ら従軍を願い、鎧を着けた。叔父である馬騰は初陣には尚早ではないかという色を表情に顕したが、しかし武具を調(ととの)えた岱の表情に、何かを感じ取ったものらしい。
「超の側にいろ。あれにも今度の戦は見せておくつもりだ」
そう、馬騰は告げ、岱は頷いた。馬超の下にいる馬鉄、馬休といった子等はまだ幼児であるため後方に残すが、馬超だけは今回の出陣に伴うつもりであるらしい。
「岱、お前、」
寝て起きたら、いきなり男の顔になったな。そう、叔父はちらりと笑顔を向けた。それに岱はやはり笑みを返す。
「若が―――」
俺を呼び戻してくれましたから。そう答えた岱に、馬騰は微かに怪訝そうな表情を向けた。
「若と呼ぶか、超を?」
是(はい)、と岱は躊躇わずに答える。
「父もそれを望んでいた事でしょう。最期に馬氏の矜持を守ろうとした父は、馬氏を最も勁く導く方を守るように、最期にその背中で、俺に教えてくれましたから」
その筈ですから。そう、岱は答える。
「それが、超か」
「若がおられねば、俺は父の死のあと、己の弱さに敗けて、ここに戻れなかったかもしれません」
その恩義に報いる為にも、俺は若の側におります。
その岱の言葉に、馬騰は頷き、呼び掛けた。
「承奕よ」
岱と呼び捨てるのではなく、敢えて字で自分を呼んだ叔父が、既に自分を一人前の馬氏のひとりと認めた事に気付き、岱は表情をひきしめ、背筋を伸ばした。
「殿、俺は、」
父のできなかった事を、父の分まで成し遂げるまで、ここに存ります。
自分を殿と呼ぶ甥の言葉を受入れ、馬騰は更に頷き、行け、と促した。その自分が仕えるべき主人(あるじ)たる叔父に認められた事に頬を紅潮させ、岱は素速く拱手すると、馬騰の幕舎を後にする。
「岱!」
自分を呼ぶ声に、岱は笑顔を向け、跪いた。
「若」
此度の戦では、俺は若の側にて、しっかりと御身をお守りします。そう告げる岱に、馬超はあざやかな笑顔を向ける。
「莫迦を言え!俺は誰かに守って貰う必要などない!」
お前こそ、戦が怖くて泣き出すなよ、泣き虫。
そう揶揄う声はただ明るくて、あの夜、子供の様に涙を流して岱にしがみついていた面影など、片鱗もない。
「俺も父上に挨拶をしてくる。この戦が終わったら、」
父上は改めて拠点を定め、その地に伯父上を埋葬なさるおつもりだ。それまで死ぬなよ。
その声を酷くまぶしいと感じながら、岱はその、きらびやかな鎧を纏った少年を見上げ、頷いた。
「若のおそばにおりますれば、万一の事などある筈もない!」
「云ったな?俺の背後(うしろ)に隠れていやがったら、容赦なく前へ蹴り出すぞ」
その言葉の後に翳りのない哄笑が続き、それを聞きながら、岱は立ち上がり、父親の陣幕の中に消えて行く後ろ姿を、見送っていた。
埋葬が終わり、しかし自分はその父の眠る地に留まる事はなく、あの従兄弟や叔父の側にある事だろう。そこでもしかすると、徐々に父の姿や、その声の記憶すら薄らいで行くのかも知れぬ。
けれど。
名に愧じぬ男になれと云った声と、最期に見た後ろ姿。それだけは忘れる事はないだろうと、岱は思った。
そして、声にならぬ父の声を感じながら、自分はこうして、自分をつよくひきつけているものに、仕え続けてゆくのだろうと。
高く、つよく、けれど物言わずそこにある奕々たる岱(やま)が、天を望み空を超(こ)えようとする者の傍らにある様に。
Return
馬超12歳ごろのおハナシとか云ってませんでしたか私。すみません、訂正します。馬岱14歳ごろのお話です(爆)。しかも、ほぼ捏ち上げというかオリジナルというか!
馬騰が穀物を乞いに軍を動かしたら、池陽で王承に留守を衝かれたという事実と、その後に西へ転戦しつつ、韓遂の乱に乗じて三輔を攻略したのは事実なんですが。
問題は、岱の字も、それどころか岱の父親の設定すらも三国志には垣間見得ず、その、なんというか…平たくいえばウソです。拙作ではこういう設定にさせて頂きましたということで。歴史専門の方にすれば片腹痛いところでしょうが眼を瞑ってやってくださいませー!せめて後漢書あたりをつついて見ればよかったんですが。スミマセン今回、後漢書読み返しをしませんでしたー!白状しておきますー!だから逆に、その辺詳しい方にあれこれ教えて頂いたりツッコんで頂いたりできれば嬉しいかな、という具合で。
今回、コドモ二人という事ですが、なんつーか、書いてて変に照れました。「超どの」と岱が呼び掛けるのも照れれば、生意気な科白を次々吐き出してる若が「声変わり前」だという事実が更にこう、なんというか(腐)。ちなみにこの段階で、岱ちゃんは背ばっか伸びてひょろひょろ、若のほうは普通のコドモぐらいの背丈というか。何故か自分、若については「14、5歳のころに成長痛でぎっしぎっし躰が軋んでいた」様な印象が勝手に植え付けられていてその。すみません、ハズしていたらすみません。特に河東先生、萎えちゃってたらスミマセン。 |