(mizuaoiの写真館改題) (こちらは石川の植物の別館です) |
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133 シコクママコナ 2016年10月4日 |
シコクママコナという植物に初めて出会った。石川県では過去に1箇所だけて見つかっていたものであるが、今年はさらに2箇所で自生が発見された。「シコク」と付いているせいで、石川県に分布するのか不安であったが、四国とは限らず中国地方や九州にも広く分布しているようである。 |
図1 シコクママコナの群落 |
図2 シコクママコナ |
図3 下唇に1対の黄色い隆起があって分かりやすいが、色の薄いこともある。苞の下縁には少数の歯牙がある |
日本の野生植物(平凡社)の記述では、 ママコナについては、花喉の両側に白色の斑がある。 ミヤマママコナについては、花喉の両側に黄色の斑がある、となっている。 シコクママコナとミヤマママコナは、どちらも同じ基本種に属する変種の扱いで、学名は次のようになっている。 Melampyrum laxum Miq. var. laxum シコクママコナ Melampyrum laxum Miq. var. nikkoense Beauv. ミヤマママコナ 花冠は、長い筒状で先が唇形となり、上唇と下唇に分かれている。下唇に大きな1対の隆起があり黄色をしているので、白色のママコナ(図13)とは明らかに異なり、分かりやすかった。しかし、隆起の色は淡色のものも、時には無色のものもあって、???と思った。 図鑑をよく読むと、日本の野生植物などには「花喉の両側に黄色の斑」とか「花喉の両側に白色の斑」とか記述されている。新日本植物誌(至文堂)でも、「喉部の側面に黄点がある」「喉部の側面に白点がある」等と記述されている。ちなみに「喉」とは、図説植物用語事典(八坂書房)によれば、「喉(のど、花喉:上唇と下唇の間にあって子房につながる空隙)」とのことである。 下唇に見られる隆起が「黄色」であるとか「白色」であるとかの記述にはなっていないのである。要するに、隆起部の色で判断しているのではないのである。 特に注意しておきたいのは、軽めの図鑑やネット上の記事では「黄色の斑」と記述しながら、「隆起部の色」を指しているのがほとんどである。ネット情報を読むときには、よく注意して頂きたい。 |
図4 隆起部が黄色いか否かではなく、その上部に黄色の斑があるのがシコクママコナやミヤマママコナである |
図5 花を真っ正面から見ると、確かに喉の所に黄色の斑があることが分かる。 隆起部や花糸が黄色くなっているのは、たまたまであって、本来はママコナのように白いのであろう |
図6 喉部に黄色い斑があるかどうかが重要で、隆起部が黄色かどうかが識別ポイントでないことが分かって頂けるであろう |
図7 隆起部が薄く黄色になっている花。隆起の色は決定的ではない。というより本来は白なのであろう |
図8 苞の下縁に少数の歯牙がある |
ミヤマママコナとシコクママコナの違いは、ミヤマママコナでは、苞の縁に鋸歯がなく、シコクママコナでは苞の縁に刺毛状の歯牙が散生するという。(日本の野生植物 平凡社) この植物は確かに、苞の下縁に少数の歯牙があるので、シコクママコナであることは間違いないが、歯牙の見られない苞もあったりするので(図12)、ミヤマママコナとシコクママコナとは厳密に区別ができるものなのかは疑わしい感じがするが、日本の野生植物のママコナ属の解説では、「葉は対生し、鋸歯はないがしばしば上部のものは刺毛状の歯牙がある。苞は全縁または刺毛状の歯牙がある」との記述があることから、歯牙についてはある程度緩やかに考えても良いのだろう。 |
図9 花序の下方の苞は大きくて、歯牙が見られない。上方の苞は明らかに小型で歯牙がはっきりしている |
図10 花序の下方の苞は大きくて、歯牙が見られない |
図11 花序の上方の苞は小さくて、歯牙がはっきりしている |
図12 花序の上方の小型の苞でも、歯牙が見られないこともある |
図13 ママコナ。下唇に1対の白い隆起がある。喉部の白斑については、注意が行き届いていない画像なので残念である。苞には多数の刺状の長い歯牙がある。これはシコクママコナとは明らかに異なる特徴である |
図14 在庫のママコナの画像を探したところ、なんとか喉部の白斑が写っているものがあった。なお、この写真を見ても花序の下方の大型の苞では、ママコナ特有の刺状の長い歯牙が少ない。そういう意味では、シコクママコナで花序の下方の苞に歯牙が見られないことと似ている |
いずれにしても、苞にある刺毛状の歯牙の様子は、明らかにママコナとは異なる。これまで、ママコナやミヤマママコナをしっかり観察していなかったことが悔やまれる。 |
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