葵ちゃんアフターストーリ』   

 

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誰かが俺の頭を撫でている

なんだろう? とても良い気持ちだ、心が優しく包まれるような安心感

いつまでも、こうしていたい気持ちになる・・・・・・・・・・・・

ん? そう言えば俺、何してたんだっけ・・・急激に、目覚めがやって来る

 

 

パチッ!

俺は目覚めた。

その目に最初に浮かんだのは、心配そうな女の子の顔だった。

「・・・・あれ?・・・・・・・・・セリオ・・・か?」

俺の顔を覗き込むセリオと目が合う

「はい」

どこかホッとした感じで、

「気が、付かれましたか?」

気遣う様に聞いてくる。

「あぁ、俺、どうして・・・」

確か、風呂に入っていて・・・それから・・・・・・・・・・あっ!

「そうだ、じじいの一撃を受けて俺は・・・」

「はい、気を失った浩之さんを、長瀬さまが運んで来られました。後は頼むと言われて・・・」

じじいが俺を?

はっ! そういえば俺、今服を着てるよなぁ・・・考えたく無いが、まさかじじいが?

「なぁ、セリオ。 俺が運ばれて来た時、そのぉ〜・・・・・服は着てたか?」

俺の問いに、キョトンとし、

「はい、着てましたが・・・・それがどうかしたんですか?」

じじいが、裸の俺に服を・・・

 

想像中 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポッ

 

ぶんぶんぶん(首を思いっ切り振って)

削除だ! 消去だ!! 滅殺だぁ〜!!!

俺の記憶から永遠に封印だぁ〜〜〜〜〜〜〜!

ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん!!

ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん!!

 

はぁはぁはぁ・・・

よし、これで無かった事にしよう

 

俺の突然な怪しい挙動に、セリオは慌てて、

「ひ、浩之さん! そんなに動かれると、落ちてしまいます」

えっ? 落ちるって・・・・・・俺は、改めて自分の状態を確認してみた。

どうやら、ソファーらしきものの上で横になってるらしい

頭の下には柔らかい感触

そして、俺を覗きこむセリオの顔

 

・・・・・・・・・・・・・・セリオの膝枕?

 

うわぁ〜!? なんて恥ずかしい状況なんだぁっ!

・・・でも、ま、いっかぁ〜気持ち良いし♪

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・???」

暴れたと思ったら、今度は突然大人しくなった俺を不思議そうに見て、セリオは首を傾げる。

 

 

「そう言えば、浩之さん。長瀬様とお手合わせされたのですか?」

「あぁ、まあ成り行きでなぁ」

「・・・無茶をされますね。今の浩之さんでは、あの方のお相手はちょっと無理ですよ」

「俺もそう思うぜ。 ただ、ちょっと事情があってなぁ」

「・・・事情?」

「そう、葵ちゃんのお風・・・・・い、いやなんでもないんだ・・・気にしないでくれ・・・(冷汗)」

言える訳無いぜ、覗きの為だなんて・・・

セリオは???な表情を浮かべ、俺を見つめる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

妙な間で見詰め合う2人。

 

ん? 心なしかセリオの頬が赤く染まっていくような・・・

「おいセリオ、お前、顔が赤いぞ」

「えっ! そ、そんな事はありません。診断プログラムでも問題無しと出ています」

何故か思いっきり焦ってそう答える。

「そ、そうか、なら良いんだけどな」

「と、ところで・・・・・・・・・・・・・・浩之さん?」

セリオが、モジモジして聞いてくる。

「その・・・お体はもう大丈夫なんですよね?」

「おぉ、この通りピンピンしてるぞ」

俺は、腕を伸ばして見せて元気だとアピールする。

「それでしたら・・・え〜と・・・その・・・」

セリオは何か言いにくそうだったが、やがて思いきって、

「もう、起きられても大丈夫ではないでしょうか?」

確かに体にダメージはもう無いようだ。

・・・けど、もうちょっとセリオの膝枕を堪能したいな(笑)

よし! ここはとりあえず、仮病だ

「うっ! セリオ。 急に痛みがぁ〜、まだダメージが残ってるみたいだぜ!

悪いがもうしばらくこのままでいさせてくれ・・・」

わざとらしいとは思ったが、痛がる振りをする。

あぁ〜、セリオの膝枕〜♪(すりすり)

「・・・・・・・・・・・・・・」

セリオは、困ったなぁと言う風に俺を見つめる。

おそらく俺の思惑などお見通しなのだろう。

しばらくどうしようかと思案した挙句、何か思いついたのか悪戯っぽい笑みを浮かべると

不意に視線を上げて、

「あっ! 葵さん」

がばぁっ!

俺はすかさず飛び起きる。

ど、何処だ! 葵ちゃんは?

見渡す範囲には、誰の姿も無い。

・・・・・・・・どう言う事だ?

俺はセリオを振り返ると、

「浩之さん・・・・お体の方は、大丈夫の様ですね」

セリオは、クスクスっと笑み漏らす。

は、はめられたぁ〜〜〜!

「セリオ、お前段々綾香に似てきたぞぉ」

「クスッ、ありがとうございます」

いや、誉めてないんだけどな・・・・・・・・(苦笑)

 

 

 

 

「それでは私は食事の準備がありますので、食堂の方へ戻ります。 浩之さんはどうされますか?」

「あぁ、俺も行くよ。 葵ちゃん達も居るだろうからな」

俺達は食堂に向かった。

 

食堂に着くと、

「それでは、私は準備がありますので」

ペコリとお辞儀をして、厨房に向かう。

「あっ、セリオ!」

俺はセリオを呼び止めた。

「・・・そのぉ・・・・さっきはありがとな・・・それと」

「ふふっ、判ってますよ。 葵さんには内緒にしておきます」

セリオはそう言うと厨房に入ってしまった。

 

俺はポリポリと頭を掻いて、食堂に入って行く。

食堂には既に葵ちゃんと綾香が居た。

俺の姿を確認した葵ちゃんは、いつもの笑顔で振り返り、

「せんぱ〜〜〜〜い♪」

大声で俺を呼び、大きく手を振る。

俺は葵ちゃん達の居る場所に近づいて行った。

「よぉ、葵ちゃん良い湯だったなぁ〜」

微かな後ろめたさを吹き飛ばす様に、俺は精一杯のさわやかな笑顔を浮かべた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

葵ちゃんは無言のまま、俺の顔を凝視して固まってしまった。

ん? どうしたんだ、葵ちゃんは?

「せ、先輩! どうしたんですか? その顔」

「えっ? 俺の顔がどうかしたのか?」

「はい、左の頬にアザが出来ています」

思わず頬に手を当てて見る。

微かに鈍い痛みが残っている。

そうか、じじいに殴られた箇所がアザになっているんだな。

「確か、お風呂に入る前は無かったですよね? 一体どうしたんですかぁ?」

「こ、これは・・・その・・・・・」

う〜ん、正直に話す訳にもいかないしなぁ〜

俺が困っていると、

「ふ〜ん、風呂に入る前に無かったアザが、風呂上りには付いてたって訳ねぇ〜」

綾香が興味津々って感じで、

「ねぇねぇ、お風呂で何があったの〜」

「ちょっと、風呂で転んでな」

ちょっと苦しいかな? 風呂で転んで、頬にアザが出来るって言うのは・・・

それでも葵ちゃんは疑いもせずに、気遣ってくれる。

「先輩ぃ〜、痛みますぅ?」

「大丈夫だよ葵ちゃん。もう痛みは殆どないからな」

俺の言葉に、

「よかったぁ〜」

心底安心してくれる。

「悪ぃ、心配掛けちまったな」

「いえ、先輩が無事なら私はそれで・・・」

「葵ちゃん・・・」

くぅ〜〜! 何ていじらしいんだぁ〜葵ちゃん♪

葵ちゃんとのラブラブモードに入ろうとした俺の耳に、綾香の呟きが聞こえた。

「ふ〜ん、風呂で転んだ・・・ねぇ〜」

ギク!

綾香はニヤリと意味深な笑みを浮かべている。

気付いてる、絶対こいつは何か気付いている!

まさか、じじいから何か聞いてるんじゃないのか?

早くこの話題を変えなくては・・・

 

「そ、そう言えば、せんぱいは何処にいるんだぁ? 見当たらないけど・・・」

「私達がここへ来た時は、もういなかったんですよ」

丁度そこへ、両手にお皿を持ったセリオが通り掛かる。

「なぁセリオ、せんぱいどこ行ったか知らねえか」

セリオは立ち止まり、

「芹香さまは、お庭の方で夕食の準備をされています」

・・・庭で?

そう言えば、仕上げに儀式がいるって言ってたよなぁ〜、その為か。

「せんぱいの料理ってもう出来てるのか」

「はい、既に儀式の方は終わりました。じきに夕食の時間ですので、お庭の方へどうぞ」

儀式が終わったって・・・サラッと言うなぁ。

案外ここでは日常的な事なのかもしれないな。

「あのぉ〜・・・セリオさん」

葵ちゃんが控えめに、尋ねる。

「正直な所、芹香さんの料理って、そのぉ〜大丈夫なんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫・・・・・です」

長い間を置いて答える。

「・・・あ、あのぉ、今の間は・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・すいません」

複雑な表情で謝るセリオ。

「すいませんって・・・・・・・・・・」

葵ちゃんが不安げな表情を俺に向ける。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺達は互いに見詰め合い、『はぁ〜〜〜〜〜』 と深い溜息を吐く。

「葵ちゃん、・・・もう覚悟を決めようぜ」

「そ、そうですね」

重苦しい沈黙が訪れた。

     ・

     ・

     ・

ピロロー〜〜〜〜

その時、突如電子音が流れてきた。

セリオはポケットから携帯を取り出し、

ピッ

「はいセリオです・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・それで今どちらに・・・はい、わかりましたから泣かないで下さい。

今から迎えに行きますから、そこから動かないで下さいね。はい、それでは」

ピッ

携帯を切ると、こちらを振り返り、

「すいません、私ちょっと出掛けて来ます」

「なあセリオ、今の誰だったんだ?」

「マルチさんです・・・・・ちょっと迷ったみたいなので、迎えに行ってきます」

「・・・相変わらず見たいだなマルチは・・・あぁ、じゃあその皿、俺が持ってってやるよ、庭でいいんだろ」

「・・・はい・・・それではお願いします」

セリオは俺に皿を渡すと、大急ぎでマルチを迎えに行った。

ふふっ、すっかりお姉さんって感じだなぁ〜セリオは・・・

 

俺は、セリオが出て行ったのを確認してから、

「さあ、俺達も行こうぜ葵ちゃん」

「はい先輩、あっ、半分持ちますよ」

「あぁ、助かるぜ」

 

俺達は重い足取りで、庭に向かった・・・

 

 

 

 

 

 

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あとがき

ど〜も、久しぶりになってしまいましたが、葵ちゃんアフターストーリ7話、ようやく書く事が出来ました。

今回、まるでセリオSSみたいになっていますが、気にしないで下さいね(笑)

次回からは、もう少し葵ちゃんの出番が増える事でしょう・・・たぶん(^^;

せんぱいの料理については、次回をお楽しみに♪

マルチちゃん登場もね

 

それでは〜っ