幸せの時…番外編
『迷探偵まこぴ〜』
−(仮)隆山温泉湯煙旅情−
3
突然の声に振り向いた二人の前には、手に紙袋を抱えた少女がいた。
その紙袋からは、タイヤキの頭が顔を覗かせている。
「あら…あゆちゃん。 こんにちわ」
「こんにちわ秋子さん。 それに真琴ちゃんも…こんにちわ」
あゆは二人に駆けよるとニッコリ微笑む。
「……どうしたのあゆちゃん……こんな処に……」
真琴はきょとんとあゆを見詰める。
「あっ、もしかして、あゆちゃんも福引?」
「ううん、違うよ。 ボク…商店街に居たんだけど、真琴ちゃんの声が聞こえたから来てみたんだよ。 真琴ちゃんは福引?」
「う…うん…」
突然、声のトーンが下がる。
「それで……どうだったの?」
結果を知らないあゆは、無邪気に尋ねた。
「あぅ……ティッシュが当った……」
「……………………そ、それは残念だったね……」
「で、でも、もう一回やれば、きっと特賞が当たるはずなんだから〜っ」
根拠などありはしないだろうが、真琴は自信を持って言い切った。
「えっ? 何でそんな事がわかるの?」
「ふっ……名探偵としての勘よ……」
「へ〜真琴ちゃんって、名探偵だったんだ……凄いんだね」
あゆは何の疑問も持たずに素直に信じた。
「えっへん」
調子に乗った真琴は、両手を腰に当てて胸を張る。
「でもボク、福引で特賞を当てた人なんて、今まで見た事ないよ」
「えっ……そなの?」
「そう言えば……私も見た事がないわね…」
「………………やっぱり……」
秋子さんの言葉に、あゆの表情が変わる。
「実はね……本当は特賞の玉なんて入ってないんじゃないかと、密かに疑ってるんだよ…ボク」
あゆの言葉に、皆の視線がお姉さんに集中した。
お姉さんは慌てて口を開く。
「ひ、人聞きの悪い事を言わないで下さい……ちゃんと入ってますよ! 私が保証します」
「ふん、まあいいわ……どうせ今から真琴が当てて見せるんだから」
そう言うと真琴は、さり気なく福引の箱に手を伸ばした。
「だからお客さん。 ダメですって……」
お姉さんはしっかりと箱を押さえていた。
「あぅ……ケチ……」
「ケチじゃありません。 後5枚福引券を集めてから来て下さい」
「ん? 真琴ちゃん……福引券が足りないの?」
「うん……後5枚……」
「……………」
あゆはポケットをごそごそと探り、数枚の福引券を取り出した。
「ボク何枚か持ってるから、真琴ちゃんに上げるよ……はい」
取り出した福引券を真琴に差し出した。
「えっ、い…いいの?」
「うん、もちろんだよ」
「ありがとう、あゆちゃん♪」
真琴は福引券を受け取ると、バン……っとテーブルの上に叩きつけた。
「これで文句無いでしょっ!!」
真琴はお姉さんに挑発的に言い放つ。
お姉さんは頬をピクピク痙攣させながら答えた。
「は…はい……福引券さえ戴ければ……でわ、どうぞ……」
渋々、お姉さんは押さえていた箱から手をどかす。
「真琴……頑張ってね」
「真琴ちゃん、ふぁいとだよ」
「う…うん、任せて……」
二人の応援を背に、真琴は福引の箱の前に進み出ると取っ手に手を添えた。
「………………………………………」
真琴は取ってを手にしたまま固まっていた。
「……真琴……どうしたの?」
心配になった秋子さんが話し掛ける。
「あぅ……ちょっと緊張……」
仕切り直しに、1度取ってから手を離すと大きく深呼吸する。
「真琴ちゃん、もっと気を楽にして……。 福引のコツはね、兎に角強く願う事なんだよ。心の底から、一心に特賞が当たる事を願えば、きっと叶うよ」
「……強く願う?」
「うん……願い事はね、強く願うと必ず叶うんだよ」
「……………………………じゃあ、あゆちゃんも一緒に回して。 きっと1人より2人の方が願いは強いから」
「うん……わかったよ」
あゆは真琴の隣に来て、真琴の手に添える様に取っ手に手を置いた。
「あっ、どうせなら秋子さんも一緒にやろうよ。1人より2人……2人より3人だよ」
「あら…いいの?」
「うん」
真琴は頷く。
3人は緊張した面持ちで、取っ手に手を掛けた。
「じゃあ……いくよ」
真琴の確認に二人が頷く。
「せ〜の……えぃっ!!」
掛け声に合わせて、福引の箱が勢いよく回された。
三人の願いを込めて……。
『『『(おんせん…おんせん…おんせん…)』』』
箱は物凄い勢いで回された。
そして……。
カラン
箱から玉が飛び出した。
コンコンコン……。
全員の視線が飛び出した玉に注がれた。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
『『『!?』』』
「ま、真琴ちゃん……こ、これ……金の玉だよ!?」
「え〜と…金の玉は………」
秋子さんがボートで確認する。
「あっ! 真琴、やったわね」
「あぅ……こ、これって……」
真琴は確認するかのようにみんなの顔色を伺う。
秋子さんとあゆは、にっこり微笑みコクンと頷くと……。
「大当たり〜〜〜〜〜」
カランカラン♪
お姉さんが思い出したかのように、手振りの鐘を鳴した。
その音を聞きつけて、通りの通行人達も何事かと集まって来た。
真琴の顔に徐々に笑顔が浮かぶ。
「う……うぅぅ………やったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♪ 特賞だぁ〜〜〜〜っ♪」
そう叫ぶなり、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びをあらわした。
「真琴ちゃん……おめでとう」
「えへへ〜、あゆちゃん…温泉…温泉だよぅ。 一緒に行こうね」
「えっ……で、でも……」
「あゆちゃんは、ウチの家族よ……だから一緒に行きましょう」
「秋子さん………うん、ありがとう♪」
特賞を当てた喜びに浸る真琴達。
その様子を、何故か驚きの表情で見詰めるお姉さんがいた。
お姉さんは箱から転がり落ちた金の玉をじっと見詰める。
そしてポツリと呟いた。
「…………ホントに入ってたんだ……特賞の玉……」
お姉さんの妖しい呟き。
幸運にもその呟きは誰の耳にも届く事は無かった。
つづく
第3話です♪
真琴、特賞ゲット〜☆
であ、皆さん。真琴の特賞ゲットを記念して、よかったら感想下さいね☆
『ここをクリック』 ボタン1つで、あなたに代わって、Kanonキャラ達が感想を述べます♪
2001年10月24日(水曜日)