幸せの時…番外編
『迷探偵まこぴ〜』
−(仮)隆山温泉湯煙旅情−

 

 

 

 

突然の声に振り向いた二人の前には、手に紙袋を抱えた少女がいた。

その紙袋からは、タイヤキの頭が顔を覗かせている。

「あら…あゆちゃん。 こんにちわ」

「こんにちわ秋子さん。 それに真琴ちゃんも…こんにちわ」

あゆは二人に駆けよるとニッコリ微笑む。

「……どうしたのあゆちゃん……こんな処に……」

真琴はきょとんとあゆを見詰める。

「あっ、もしかして、あゆちゃんも福引?」

「ううん、違うよ。 ボク…商店街に居たんだけど、真琴ちゃんの声が聞こえたから来てみたんだよ。 真琴ちゃんは福引?」

「う…うん…」

突然、声のトーンが下がる。

「それで……どうだったの?」

結果を知らないあゆは、無邪気に尋ねた。

「あぅ……ティッシュが当った……」

「……………………そ、それは残念だったね……」

「で、でも、もう一回やれば、きっと特賞が当たるはずなんだから〜っ」

根拠などありはしないだろうが、真琴は自信を持って言い切った。

「えっ? 何でそんな事がわかるの?」

「ふっ……名探偵としての勘よ……」

「へ〜真琴ちゃんって、名探偵だったんだ……凄いんだね」

あゆは何の疑問も持たずに素直に信じた。

「えっへん」

調子に乗った真琴は、両手を腰に当てて胸を張る。

「でもボク、福引で特賞を当てた人なんて、今まで見た事ないよ」

「えっ……そなの?」

「そう言えば……私も見た事がないわね…」

 

「………………やっぱり……」

 

秋子さんの言葉に、あゆの表情が変わる。

「実はね……本当は特賞の玉なんて入ってないんじゃないかと、密かに疑ってるんだよ…ボク」

あゆの言葉に、皆の視線がお姉さんに集中した。

お姉さんは慌てて口を開く。

「ひ、人聞きの悪い事を言わないで下さい……ちゃんと入ってますよ! 私が保証します」

「ふん、まあいいわ……どうせ今から真琴が当てて見せるんだから」

そう言うと真琴は、さり気なく福引の箱に手を伸ばした。

「だからお客さん。 ダメですって……」

お姉さんはしっかりと箱を押さえていた。

「あぅ……ケチ……」

「ケチじゃありません。 後5枚福引券を集めてから来て下さい」

「ん? 真琴ちゃん……福引券が足りないの?」

「うん……後5枚……」

「……………」

あゆはポケットをごそごそと探り、数枚の福引券を取り出した。

「ボク何枚か持ってるから、真琴ちゃんに上げるよ……はい」

取り出した福引券を真琴に差し出した。

「えっ、い…いいの?」

「うん、もちろんだよ」

「ありがとう、あゆちゃん♪」

真琴は福引券を受け取ると、バン……っとテーブルの上に叩きつけた。

「これで文句無いでしょっ!!」

真琴はお姉さんに挑発的に言い放つ。

お姉さんは頬をピクピク痙攣させながら答えた。

「は…はい……福引券さえ戴ければ……でわ、どうぞ……」

渋々、お姉さんは押さえていた箱から手をどかす。

「真琴……頑張ってね」

「真琴ちゃん、ふぁいとだよ」

「う…うん、任せて……」

二人の応援を背に、真琴は福引の箱の前に進み出ると取っ手に手を添えた。

 

「………………………………………」

 

真琴は取ってを手にしたまま固まっていた。

「……真琴……どうしたの?」

心配になった秋子さんが話し掛ける。

「あぅ……ちょっと緊張……」

仕切り直しに、1度取ってから手を離すと大きく深呼吸する。

「真琴ちゃん、もっと気を楽にして……。 福引のコツはね、兎に角強く願う事なんだよ。心の底から、一心に特賞が当たる事を願えば、きっと叶うよ」

「……強く願う?」

「うん……願い事はね、強く願うと必ず叶うんだよ」

「……………………………じゃあ、あゆちゃんも一緒に回して。 きっと1人より2人の方が願いは強いから」

「うん……わかったよ」

あゆは真琴の隣に来て、真琴の手に添える様に取っ手に手を置いた。

「あっ、どうせなら秋子さんも一緒にやろうよ。1人より2人……2人より3人だよ」

「あら…いいの?」

「うん」

真琴は頷く。

 

3人は緊張した面持ちで、取っ手に手を掛けた。

「じゃあ……いくよ」

真琴の確認に二人が頷く。

「せ〜の……えぃっ!!」

掛け声に合わせて、福引の箱が勢いよく回された。

三人の願いを込めて……。

 

 

『『『(おんせん…おんせん…おんせん…)』』』

 

 

箱は物凄い勢いで回された。

そして……。

カラン

箱から玉が飛び出した。

コンコンコン……。

全員の視線が飛び出した玉に注がれた。

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

『『『!?』』』

「ま、真琴ちゃん……こ、これ……金の玉だよ!?」

「え〜と…金の玉は………」

秋子さんがボートで確認する。

「あっ! 真琴、やったわね」

「あぅ……こ、これって……」

真琴は確認するかのようにみんなの顔色を伺う。

秋子さんとあゆは、にっこり微笑みコクンと頷くと……。

「大当たり〜〜〜〜〜」

カランカラン♪

お姉さんが思い出したかのように、手振りの鐘を鳴した。

その音を聞きつけて、通りの通行人達も何事かと集まって来た。

真琴の顔に徐々に笑顔が浮かぶ。

「う……うぅぅ………やったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♪ 特賞だぁ〜〜〜〜っ♪」

そう叫ぶなり、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びをあらわした。

「真琴ちゃん……おめでとう」

「えへへ〜、あゆちゃん…温泉…温泉だよぅ。 一緒に行こうね」

「えっ……で、でも……」

「あゆちゃんは、ウチの家族よ……だから一緒に行きましょう」

「秋子さん………うん、ありがとう♪」

 

 

 

 

 

特賞を当てた喜びに浸る真琴達。

その様子を、何故か驚きの表情で見詰めるお姉さんがいた。

お姉さんは箱から転がり落ちた金の玉をじっと見詰める。

そしてポツリと呟いた。

 

「…………ホントに入ってたんだ……特賞の玉……」

 

お姉さんの妖しい呟き。

幸運にもその呟きは誰の耳にも届く事は無かった。

 

 

 

 

   つづく

 

 

 

 

 


第3話です♪

真琴、特賞ゲット〜☆

であ、皆さん。真琴の特賞ゲットを記念して、よかったら感想下さいね☆

 

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2001年10月24日(水曜日)