幸せの時…番外編
『迷探偵まこぴ〜』
−(仮)隆山温泉湯煙旅情−
4
「祐一〜〜〜っ! 祐一〜〜〜〜〜〜っ!!」
ドタバタと廊下を駆ける足音が響く。
その足音は徐々に近づき、やがてリビングへと辿り着くと一際大きな声で叫んだ。
「祐一っ!!」
呼ばれた主、祐一こと相沢祐一はゆっくりと振りかえる。
そして……。
「えぇ〜い、騒がしい!!」
ぽかっ
一言怒鳴り、ついでに軽く小突いた。
「わっ、なんで真琴が殴られなくちゃいけないのよぅーっ!」
「ご近所迷惑だからだ」
祐一は少しも悪びれずに言い放つ。
「祐一。 女の子を殴らないの」
リビングのソファーに座っていた名雪は立ち上がり、真琴を庇う様に二人の間に割って入る。
「でも近所迷惑だぜ?」
「それでも殴らないの。 真琴ちゃん大丈夫だった?」
「あぅ…お姉ちゃ〜〜ん」
真琴は名雪の胸に顔を埋め甘えた声を上げる。
そして祐一をキッと睨みつけて一言。
「……暴力亭主っ!!」
「クスッ……祐一、暴力亭主だって」
「違う、これが暴力なんかじゃないぜ。俺達の愛情表現なんだ」
祐一はしれっとした表情で言い切った。
「そんな愛情表現なんてないわよぅ。 もう……祐一はお留守番決定ねっ!」
「ん?」
話しの繋がりが見えない祐一は首を傾げる。
「留守番って何の事だ?」
そこへ遅れてリビングに入ってきた秋子さんが、今の真琴の言葉を聞き取ったのか残念そうに祐一に話しかけた。
「あら、祐一さんは行かないんですか?」
「行くって何処にですか?」
「温泉よ♪」
『『おんせん?』』
祐一と名雪の声が綺麗に重なる。
「お母さん。温泉に行くの?」
「えぇ、真琴が商店街のふく……」
「わっ、わっ! 言っちゃダメ〜〜〜っ!!」
真琴は秋子さんの前で両手をバサバサと振る。
「あら、どうして?」
「えと……二人には真琴の口から言いたかったの……だから……」
「クスッ…そうね、じゃあ真琴にお願いするわ」
「うん」
真琴は笑顔で頷き、二人に向き直った。
「へへへ〜、祐一聞きたいでしょう〜」
「……………」
「まあ祐一がどうしても聞きたいって言うなら、教えてあげなくもないわよぅ♪」
先程小突かれた恨みを晴らす為か、真琴の言葉は挑発的だった。
祐一は真琴から視線を逸らすように横を向く。
そして憮然とした表情で言い返した。
「…………いや、別にいい」
「私は聞きたいな〜。 祐一、真琴ちゃんに教えてもらおうよー」
「い・や・だ。 俺は聞きたくないんだ」
意地になった祐一は、強い口調で拒絶する。
その言葉を聞いて、思ってた反応とは違ったのか途端に真琴は慌てた。
「ちょ、ちょっと嘘でしょう? どうして温泉に行けるか聞きたくないの?」
祐一は面倒くさそうに言い返す。
「どうせあれだろ? 商店街のふくび……ん?」
祐一は突然口篭もる。
真琴の背後に何かを見つけたようだ。
真琴の背後……そこでは秋子さんが口をパクパクさせて何かを訴えかけていた。
「……………………」
祐一は秋子さんの口の動きを一言一言読み取っていく……。
(お・ね・が・い・ゆ・う・い・ち・さ・ん)
「(お願い祐一さん……で合ってそうだな)」
(こ・こ・は・ひ・と・つ・わ・た・し・に・め・ん・じ・て……ね?)
「(ここは一つ私に免じて…………って、言われてもなぁ……)」
秋子さんは更に両手を合わせてお願いポーズ。
「………………はぁ……わかりました」
秋子さんにこうまでされては祐一に断わるすべは無かった。
祐一は大きなため息をひとつ付くと真琴に向き直る。
「どしたの…祐一?」
「いや……その、なんだ…悪かったな真琴。 よかったら教えてくれないか? どうして温泉に行けるんだ?」
秋子さんの顔に免じて祐一が折れると真琴は途端に上機嫌になった。
おまけに調子にも乗っていた。
「えへへ〜、やっぱり聞きたかったんだ〜。 祐一ったら強がっちゃって〜♪」
「……………」
祐一の頬がぴくぴくと引き攣る。
だが真琴はそんな祐一の様子に気付く事も無く、得意げに話しだした。
「実はね……。真琴、商店街の福引で見事特賞を引き当てたんだよぅ〜っ♪」
そう言うと特賞の温泉旅行のクーポン券を高々と掲げた。
「わぁー、真琴ちゃん凄〜い」
「えへへ♪ お姉ちゃんも行くよね?」
「うん、楽しみだよ」
「……………………」
真琴は頬を引き攣らせている祐一に笑顔を向ける。
そして楽しそうに言った。
「安心して、祐一もちゃんと連れてってあげるからね」
「そりゃ、ありがとよ」
祐一は憮然とした顔で腕を組んでいたが、楽しそうに笑顔を振り撒く真琴を見るにつれ、しだいに表情を和らげた。
つづく
第4話です♪
真琴ちゃんご機嫌〜☆
と言う訳で(?)皆さん……真琴に免じて感想下さいね(笑)
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