幸せの時…番外編
『迷探偵まこぴ〜』
−(仮)隆山温泉湯煙旅情−

 

 

 

 

「で、面子はどうなるんだ?」

「面子?」

真琴は首を傾げ秋子さんを見上げる。

「そうね……今の処は家の4人と、後、あゆちゃんを入れた5人って処ね」

「あゆも行くんですか?」

「えぇ、福引会場でばったり会ってね。 福引券を分けてもらったのよ」

「あっ、そうだ。 祐一、今度あゆちゃんにあったらお礼を言うのよぅ」

「……何故だ?」

祐一は不思議そうに首を傾げる。

「今日一緒に福引を回してもらったの。 だから、この特賞はあゆちゃんのおかげでもあるのよぅ」

「ほぉ…そうなのか、あゆも偶には人の役に立つこともあるんだな。 よし、今度タイヤキを奢ってやろう」

本人が居ない事を良い事に気前よく言った祐一の言葉に、すかさず真琴が反応した。

「えっ? じゃあ真琴には肉まん♪」

「あっ、私はイチゴサンデーで良いよ♪」

「ちょっと待て。 何でお前らにまで奢らなきゃいけないんだ」

祐一は表情を顰める。

「だって真琴が福引を当てたのよぅ。だから当然の権利ね」

「私はついでだよ」

「却下だ!」

祐一は即座に断った。

「あっ、そんな事言っていいのかなぁ〜。奢らないと祐一は留守番決定なんだからぁ〜♪」

「そうそう、決定だよ〜」

「……………」

祐一は納得いかない表情で考え込む。

真琴と名雪は期待に満ちた眼差しで、祐一の言葉を待っている。

やがて祐一は、本日2度目の大きな溜息を付くと…。

「…………はぁ……わかったよ。今度学校の帰りにでも奢ってやるよ」

諦めの混じった声で呟いた。

 

『『やった〜♪』』

 

真琴と名雪は手を合わせて飛び跳ねた。

 

「じゃあ面子は5人で決まりですね」

気を取り直した祐一は秋子さんに話しかける。

「祐一さん。他に誰か誘いたい人が居れば言って下さいね」

「他にですか? う〜ん」

 

(おらぁーっ、相沢ーっ!!)

 

一瞬、祐一の脳裏に、やけにリアルな北川の顔がよぎった。

(ぶんぶんぶんぶん)

祐一は大きく頭を振ってそのイメージを吹き払う。

「???」

秋子さんは祐一の突然の奇行に首を傾げる。

 

「あの……秋子さん……」

そこへ真琴がおずおずと話し掛けた。

「……美汐も誘って……いい?」

そう言うと、不安げに答えを待つ。

秋子さんはにっこりと微笑みこたえた。

「えぇ、良いわよ」

「やったぁーっ♪ 私、美汐に聞いてくるっ!」

真琴はそう言うなり、リビングの角の方に置いてある電話に飛びついた。

電話の横に備え付けてあるアドレス帳には目もくれない。

今ではもうすっかりお馴染みとなっている天野家への番号を真琴はすばやく押した。

受話器を片手に待つこと数秒……。

 

ガチャ

『はい、天野です』

「あっ、美汐? 私……真琴だよぅ」

『真琴? どうしたの?』

「うん、あのね。 温泉行こ〜」

真琴は何の前置きもな切り出した。

『はい??』

「だから……温泉。 真琴が福引で当てたんだよ♪」

『福引? それは凄いですね。 おめでとう…真琴』

「えへへ〜♪ で、美汐も行くよね?」

『…………いいの? 私なんかがが行っても…』

「良いに決まってるよぅ。 秋子さんも良いって言ってくれてるから……」

『……秋子さんが……そうですか。 では遠慮無くお言葉に甘えてさせて貰いますね』

「ホント?」

『はい。真琴と温泉……とっても楽しみです♪』

「うん♪ 真琴も……」

その後二人は、二言三言会話を交わすと受話器を置いた。

 

 

真琴は笑顔で秋子さんに報告。

「美汐、温泉行けるって♪」

「そう、よかったわね」

「うん」

満面の笑み。

真琴は心底幸せそうにリビングのソファに腰を沈めた。

 

 

「あの、お母さん。 私も香里…誘って良いかな?」

「了承」

相変わらず秋子さんの了承は早い。

「あっ、名雪……香里を誘うなら、一緒に栞も誘ったらどうだ?」

「そうだね。 お母さん栞ちゃんも良いかな?」

「えぇ、にぎやかになって楽しいわ」

名雪は早速香里に連絡する為、受話器に手を掛けた。

 

 

「それで、祐一さんは誰か誘わないんですか?」

秋子さんは改めて祐一に問い掛けた。

「俺ですか? う〜ん」

再び祐一は考え込む。

 

(相沢……俺達親友だよな?(キラーン) )

 

又もや祐一の脳裏に北川の顔がよぎった。

「…………特にいませんね」

「そうですか……」

 

(相沢ーっ!!)

 

「…………」

 

(俺達は親友だよな???)

 

「…………」

 

(仲良しラブラブコンビだよな???)

 

「…………」

 

(相沢〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)

 

「えぇ〜い、五月蝿い!!」

「ゆ、祐一さん。 どうしたんですか? 突然大声を出して」

「い、いや……北川の奴が」

「北川君?」

秋子さんは訝しげに首を傾げる。

その時、受話器を片手に名雪が大声で呼び掛けて来た。

「祐一〜っ、北川君は祐一が誘うんだよね?」

「いや、そうとは限らないが……どうかしたのか?」

「うん。香里がね、北川君が来ないなら行かないって……」

その直後、名雪が押えている受話器から、恐らく香里のものだと思われる声が漏れてきた。

(名雪っ! 私はそんな事は言ってないわよっ。 只、来るのかどうかを聞いただけで……ちょっと名雪聞いてるのっ!!)

「………………………わかった。 香里の為に北川を誘う事にするよ。 そう言っといてくれ」

「うん、わかったよ」

怖いもの知らずの名雪は、祐一の言った言葉をそのまま香里に伝えた。

受話器からは香里の怒声が響き渡った。

 

 

「……と言う事で、北川も追加で良いですか?」

「了承よ。 これで何人になったかしら? え〜と、家の4人とあゆちゃんに、天野さん。 それに香里ちゃんに栞ちゃんに北川君で……9人になるわね」

「結構大人数になりましたね。大丈夫なんですか?」

「えぇ、家族なら何人でもいいそうですから」

「へっ?」

祐一の表情が固まる。

「そ、それって不味いんじゃないですか?」

「大丈夫よ」

不安そうな祐一とは裏腹に、秋子さんの表情には迷いは無かった。

「この旅行の間はみんな家族よ。そう決めたの」

「決めたって……」

「あぁ〜家族が増えて、私嬉しいわ♪」

 

「あ、秋子さん……」

しみじみと幸せを噛み締める秋子さんに、祐一は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

   つづく

 

 

 

 


第5話です♪

温泉メンバー決定〜☆

と言う訳で(?)次回は美坂姉妹が登場です♪

美坂姉妹萌え〜な方………感想下さいね(笑)

 

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