幸せの時…番外編
『迷探偵まこぴ〜』
−(仮)隆山温泉湯煙旅情−
6
出発の朝。
天気は晴天。
澄みきった青空には雲一つ見当たらない。 まさに絶好の旅行日和であった。
真琴は、水瀬家の玄関口に荷物と一緒に佇んでいた。
後ろ手に指を絡めて空を見上げると、大きく深呼吸……。
「えへへ〜♪」
何を思ったのか意味不明の笑みをこぼした。
「おはようございます」
「あぅ?」
真琴は振り向き挨拶の主を確かめた。
「あっ! 栞ぃ〜」
そこには重そうな旅行鞄を両手に持った栞が立っていた。
「おはよう。 早かったね」
栞は旅行鞄を地面に置くと一息つく。
「はい…出掛けにちょっとありまして……」
「あぅ?」
真琴の疑問の表情に答えるように栞が話した。
「北川さんがお姉ちゃんを迎えに来たの。 それでちょっと気をきかせてみました」
「北川〜? はぁー……栞のお姉ちゃん、相変わらず悪趣味〜。 あんな変な奴の何処がいいんだか」
「クスッ。 祐一さんの事がラブラブな真琴も、人のことは言えないと思いますよ」
「あ、あぅ……」
その時、栞の背後に伸びる手が……そして……。
ぽかっ
栞の頭が小突かれた。
「わっ」
栞は頭を押えて背後を振り返る。
………と、そこには憮然とした表情の祐一が立っていた。
「ゆ、祐一さん!? ……いつの間に」
「北川の話しが出た処からだが………つまり栞は…俺の事を変な奴と言いたい訳だな」
「え、えと…えと……それはですね、その……………………………てへ……冗談です♪」
舌を出して可愛らしく誤魔化す。
祐一は、その仕草に毒気を抜かれたのか溜息を洩らす。
「………はぁー。 ったく、お前らもしかして、いつも俺の事をそんな風に言ってるのか?」
「ま、まさか……違いますよー。 いつもは美汐さんと一緒に真琴と祐一さんのラブラブ話しで盛り上がってますから」
「それは止めてくれ」
祐一は即座に言いきった。
「…………」
(クイクイ)
真琴が祐一の袖を引っ張る。
「ん…なんだ?」
「祐一は……その…真琴と噂になるの……嫌なの?」
悲しそうに祐一を見上げる。
「うっ、そ…そんな訳無いじゃないか……俺はお前の事が………その……なぁ?」
「えと……う、うん……」
二人は真っ赤になって俯く。
「ひゅ〜ひゅ〜です。 祐一さん」
栞は口元に手を添えてはやしたてる。
「う、うるさい」
照れ隠しも手伝ってか、祐一は栞を小突こうと手を振り上げた。
が、その手を振り下ろす事は出来なかった。
ガシッ!
祐一の手が何者かに掴まれたからだ。
「だ、誰だ!?」
振り向いた瞬間、祐一の表情が固まった。
そこに居たのが………美坂姉こと、美坂香里だったからだ。
「げっ、香里!?」
「相沢君? その手……まさかウチの栞に振り下ろそうだなんて思ってないわよね?」
天使のような悪魔の微笑み。
「うっ……そ、それは………」
「思ってないわよね?」
香里はもう1度繰り返す。 その瞳の奥には危険な色が見え隠れしていた。
「………………」
祐一は目を泳がせ必死に言い訳を探す。
「…………!?」
そして、良いものを見つけたのかススッと移動すると、
「お、遅いぞっ、北川!!」
ぽかっ
香里の後ろに控えていた北川の頭に手刀を打ち込んだ。
「……と云うわけだ。 決して栞に対して手を上げた訳じゃないんだぞ……ほ、ほんとだぞ……」
「……………」
祐一はおどおどと香里の顔色を伺う。
「(ぼそっ)……おい、相沢……なんで俺が叩かれなくちゃならないんだ?」
「(ぼそっ)お、俺の命が危なかったんだ。 勘弁してくれ……この通りだ」
珍しく祐一が北川に頭を下げる。
「(ぼそっ)……貸し1つだぜ」
「(ぼそっ)……了承だ」
香里はしばらく祐一の事を見ていたが、許してくれたのか、視線をそらし栞の元に歩き出した。
「はぁーーーーーー。 た、助かった……」
祐一は心の底から安堵した。
(タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ………)
その祐一の背後には、新たな脅威が、謎の足音と共に近づいていた。
つづく
第6話です♪
設定上、真琴と美汐と栞は同級生です(汗)
まだ、そのへんの事情はSSにしてませんが、いつかきっと……(汗)
と言う訳で(?)少しでも心動かされた方は、感想下さいね♪
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