『ボケボケみねちゃん♪』  

 

 

 

 

「あの、すいません」

私が街を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。

「はい……? なんですか?」

「これ、落としませんでした?」

男の子がスッっと、パスケースを差し出す。

「えっ? あ〜っ、そうです…私のです………すみません、ありがとうございました…ほんと、助かります〜」

男の子は、私の顔をジーっと見ている?? な、なに?

そして、おずおずと切り出す……

「あの、もしかして、みね…ちゃん………?」

えっ!なんで?

「あれっ!もしかして違ってた?」

「いえ、はい、そうです……みねです……でも……どちら様でしたっけ?」

う〜ん、私の記憶には無い顔なんだけどなぁ?

「あっ、別に知り合いって訳じゃないんだけど……」

思いだそうと考え込む私に気付いて、教えてくれた。

「俺、ただのファンです。いつもみねちゃんのラジオ……楽しみに聞いてます」

「えっ、えっ!そうなんだ……へへっ…どうもありがとうございます」

うわっ!こんな所でリスナーの人に会えるなんて、みね感激♪

…………ん? でも……

 

「なんで、私だって分かったんですか?」

「いや、声とか話し方とか、ラジオのまんまだったから……」

うっ! 確かに……私、ラジオは地でやっちゃてるからなぁ……

「へぇ〜そうなんだ、分かっちゃうんだぁ……でも何か嬉しいなぁ、えへへ」

誰かにファンだなんて直に言われたのって、実は初めてだったりする……

 

「みね、リスナーの人とこうしてお話するのって初めてなんですよねぇ、え〜と、もし、よかったら、

そちらのお名前も教えてもらえますか?」

「あぁ、俺は藤田浩之って言います」

「藤田浩之………浩之君って呼んでいいよね? 覚えときますよ、なんてったって初めて会った

リスナーですからね……よかったら、これからもみねのラジオ、聞いて下さいね」

「もちろん!これからも毎週かかさず聞かせてもらいます!!」

ホント、元気な男の子だなぁ。

 

「ふふっ、じつは今日もラジオの収録なんですよ〜」

「へ〜…スタジオ、この近所なんですか?」

「いえ、スタジオはぜんぜん違うんですけど」

「??? じゃあ、なんでこんなところに?」

浩之君が疑問に思って聞いてくる。

 

「今日はですねぇ、とまとを引き取りにきたんですよ」

「とまとぉ〜??」

あぁ、とまとってゆうのは、わたしの愛用の自転車なんですけど、普通わかんないかぁ、

「とまと、って言うのはですねぇ・・・・・・」

私が説明しようとした時、

「あぁ〜思い出した。 たしか、みねちゃんの自転車の名前だったよね」

えっ、なんで?

「まえにラジオで言ってたやつだね、あってる?」

すご〜い、浩之君……そんな事まで覚えててくれるなんて。

「浩之君……ほんとうに、みねのラジオ…聞いててくれてるだね。」

「みねちゃんファンとしては、当然ですよ。………で、とまとが、どうかしたんすか?」

 

「う〜ん、みねがサイクリングが好きなのは知ってますよね?」

先週の放送で言ったばかりだから知ってるよね?

「最近ね、この街からよくハガキが送られて来るんですよ、それでね…サイクリングがてら、

ちょ〜っと行って見ようと思ったんですよ。 ……で、この街をいろいろ散策して、さあ帰ろうかなぁ〜と

思った時、………パンクしちゃったんですよ……とまとが」

「はぁ〜、それは災難でしたね」

浩之君が同情してくれる…

「その後、なんとか自転車屋さんに持っては行ったんですけど、その日は夕方からラジオの

収録があったんで、そのまま預かってもらっちゃたんです、で、今から取りに行く所なの」

「へぇ〜、この辺りの自転車屋といったらあそこかな?」

キラーン

浩之君……自転車屋の場所……知ってるのかなぁ?

 

「ねぇ〜浩之君……場所…知ってるの?」

期待を込めた眼で聞く。

「えっ、たぶんわかるけど………みねちゃんも場所、知ってるんじゃ?」

私は、照れ笑いを浮かべながら、

「へへへ……実はね、みね……お店の場所忘れちゃったんだぁ〜、もうどうしようかと、途方に

くれてたんですよ………そこで……浩之君と出会えたのも神様のお導きって事で……」

両手を合わせ、ペコリとおじぎし、

「お願い、浩之君! お店まで連れてって? 後で、お礼するから、ね、ね、お願い」

 

「いいですよ」

そう返事した後、浩之君は悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「ボケっぷりまでラジオと同じなんだね……みねちゃんって」

「あっ、ひっど〜い、みね、そんなにボケてないよ〜」

 

 

その後、自転車屋にむかいながら、私のボケっぷりについて話題が花咲いた。

 

 

 

 

 

 

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