『きねんの肉まん』

 

 

 

 

 

もう〜、まったく祐一ったらどこで寄り道してるんだか。

せっかく、新しいいたずらを・・・じゃなかった、復讐を考えついたのにぃ〜。

真琴が1日掛けて考えた苦労を無駄にする気ぃ〜。

生意気だよぉ、祐一のくせに・・・・

 

チラッっと時計を見る。

いつもならもう帰ってきてもいい時間なのに。

おそい、おそい、おそ〜〜〜〜〜〜〜い!

名雪の部屋から奪ってきたケロピーを抱きしめながらぶつぶつ呟く。

本当におそいなぁ〜

どうしたんだろう?

   ・

   ・

   ・

   ・

しばらくして

 

まだかなぁ〜

チラッ

何度時計を見ても、さほど時間は経っていない。

だんだんと不安になって来た。

 

あぅ〜・・・祐一、まさか事故にでも遭ったんじゃ無いよね?

・・・・は、ははっ・・・そ、そんな訳ないかぁ〜・・・

はぁ〜(ため息)

また、チラッっと時計を見る。

祐一ぃ〜・・・早く帰ってきてよぉ・・・・・・・・1人は寂しいよぉ・・・

ギュッ

ケロピーの顔が歪む。

 

 

 

 

ガチャ

玄関の方からドアを開く音が聞こえた。

ピクッ!

祐一が帰って来たぁ〜!

スタタタタタァ〜〜〜〜

物凄い勢いで玄関にダァ〜ッシュ!

「祐一ぃ〜〜! おそ〜〜い!!」

しかし、玄関に現れたのは祐一じゃなく、名雪だった。

「えっ!? な、何、・・・・・真琴ちゃん?」

突然、『おそ〜〜い!』と言われた名雪は、思わず後ずさる。

あぅ〜・・間違えちゃった。

「お、おかえりなさい・・・・」

「ただいま、真琴ちゃん。突然で、びっくりしちゃったよ」

クスッっと笑らわれる。

あぅ〜、恥掻いちゃったじゃないのようっ。これも全部、祐一のせいだからねぇ。

いったい何処であぶらうってるんだか・・・あ、そうだ!

「ねぇ、祐一は一緒じゃ無いの?」

「違うよ、私は部活があったから・・・、祐一まだ、帰ってないの? 私より先に帰った筈だよ」

 

 寄り道決定!!

 

ふ・ふ・ふ、このあたしを待たせるなんて、いい度胸よ、祐一!

帰ってきたら覚えておきなさい!

新たな決意のもと、ケロピーを抱きしめる。

「あぁ〜! 真琴ちゃん、それ、名雪のケロピーだよ〜」

し、しまった!

ご、誤魔化すのよっ! 真琴、このままじゃ・・・・

「あぅ〜・・・こ、これは、・・・そ、そう、ケロピーが真琴と遊びたいって

言うから、だから遊んであげてたんだよ」

あぅ〜・・・・、こんな言い訳、すぐばれちゃうよぅっ〜

「ふ〜ん、そうだったんだぁ・・・」

へっ?

「乱暴に扱わないでね」

もしかして、信じたの?

「う…うん、もちろんだよ、ケロピーは真琴の友達だからね」

ケロピーの頭に手を添えて、

「そうだよね〜ケロピー」

コクコク

「ほ、ほら、そうだって」

名雪はクスッ、と笑い、

「真琴ちゃん、ケロピーとは仲良しなんだね」

「も、もちろんだよ〜(汗)」

う、嘘は付いてないわよぅっ、真琴、ケロピー好きだもん・・・

それにしても……う〜…よくわかんない人だよ〜?

いまだに、あの性格は掴めない……

 

 

 

「じゃあ、私、着替えてくるね」

タッタッタッタッ・・・・

名雪は2階に駈けて行く。

ふぅ〜〜

「な、なんとか、危機は脱したようね」

ムカムカムカ・・・

あぁ〜、なんだか急に、腹が立って来たぁ〜

あれもこれもみ〜〜んな祐一が悪いのよぅっ!

「祐一の馬鹿ぁ〜」

「祐一のアホ〜」

「祐一のスケベ〜」

あぅ〜・・・、まだムカツクぅ〜〜!

大きく息を吸い込んで、

 

「祐一の・・・」

 

「俺が、どうかしたのか?」

へっ!?

恐る恐る声のする方を振り返ると・・・

「あっ、祐一〜〜〜〜!」

なんてタイミングで帰ってくるのよぅ〜

はっ!!

こ、このままじゃ、私、影で悪口を言う様な、根暗な女の娘だと思われちゃうじゃない!

ここは、なんとしても、誤魔化すべきよねっ。

 

でも、ふふっ、祐一なんて、私のプリティ〜〜な笑顔でイチコロなんだからぁ・・・

ニコニコ

「おかえり、祐一」

「・・・・・・・・・・・・で、俺がなんだって?」

あぅ〜・・・祐一の意地悪ぅ〜〜〜

 

 

 

 

ん?

なんだろう、この匂い?

微かに漂ってくる、この香り・・・・これって、もしかして!?

 

「祐一、それ・・・手に持ってるのってまさか・・・」

匂いは、祐一が持っている紙袋から漂ってくる。

「あぁ、肉まんだ」

やっぱり! ・・・・・でも?

「違う、いつもの肉まんじゃ無いよぅっ! この匂い・・・祐一!?」

「ふっ、さすがだな、真琴・・・この肉まんの違いを匂いで嗅ぎ分けるとは・・・

そう、確かにこの肉まんはただの肉まんじゃ無い!」

ゴクッ

な、何? ただの肉まんじゃ無いって・・どう言う訳なの?

「この肉まんはなぁ〜、ほれ、お前がいつも肉まんを買ってる店があるだろう?」

あぁ、あのお店の事ね。

「帰りに、ふらぁ〜っと寄ってみたら、なんと、記念すべき御来店1万人目だった訳だ」

あぅ〜・・・なんでいつも買ってる真琴じゃなくて、たまたま寄った祐一がぁ・・・

そんな事なら、真琴も買いに行けばよかったよぅっ!

「そこでだ、普段は値段の都合上、お店で売る事が出来ない、この豪華でスペシャルな

スーパー肉まんをプレゼントされたって訳だ・・・どうだ? 良いだろう?」

コクコク

あぅ〜・・・た、食べたい〜・・食べたいよぅ〜〜〜〜〜〜〜!

 

「祐一ぃ〜〜〜〜〜〜〜!」

肉まんの袋に飛びつく。

サッ

祐一が横に避けた・・・当然私は、

べちゃ〜〜!!

あぅ〜・・・い、痛いよぅ(涙)

なんで、避けるのよぅっ!

キッ

祐一を睨む

「まあ、がっつくな真琴、ちゃんと、お前にやるからさぁ」

「あぅ〜・・・・ほんとぅ?」

じゅるじゅる(ヨダレ)

「あぁ、取り敢えず、ほらっ」

ポ〜ン、と肉まんを1個投げてよこす。

わぁっ、と、とと

何とか受け取る。

こ、これが、スーパー肉まん・・・・・・・ゴク・・・

「ゆ、祐一ぃ〜、ほんとに食べていいの?」

「あぁ、元々、お前へのお土産にと思って、買いに行ったんだからなぁ」

祐一ぃ〜・・・私の為に・・・・・・・・

う、うれしいよぅっ〜〜〜〜

「へへっ、いただきま〜〜〜す♪」

はぐぅ(モグモグ)

「どうだ?」

「うん、とってもおいしいよ、祐一」

このスーパー肉まんは、もちろんおいしいけど・・・それだけじゃあない

祐一が私の為に買ってきてくれたから・・・私の為に・・・・・・

 

 

へへへっ

はぅ〜、真琴幸せだよぅ〜〜♪

はぐぅ(モグモグ)

ん? 何か大事な事を忘れている様な気が・・・・・・まっ、いっか♪

 

 

 

 おしまい

 

   

 

 

 

 

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