とらハ3SS
『ひなたぼっこ』
By た〜な
高町家の縁側。
「ごろごろ……♪」
日の光で程好く暖められた縁側の床の上。
レンはクッションを抱くようにして、ごろごろとひなたぼっこを満喫していた。
「んー、しあわせやー」
大きく背を伸ばし寝返りをうつ。
「はぁぁぁぁぁっ!」
キィーーン!
「とりゃぁぁぁっ!」
鳴り響く剣戟。
のんびりとひなたぼっこを楽しむレンとは対照に、高町家の庭では恭也と美由希が日課の鍛錬に勤しんでいた。
「お師匠も美由希ちゃんも、よー頑張るなー」
レンはそんな二人をのほほんと見詰めていた。
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「よし美由希。しばし休憩だ」
「はぁ…はぁ………うん」
美由希は息を整えつつ木刀をしまうと、ふらふらと縁側に向け歩き出した。
「レン。ちょっと一緒してもいい?」
流れる汗をタオルで拭きながら美由希がレンに話し掛ける。
「どうぞですー。あっ、この時間だと…そこいらの床がポカポカしていてウチのお薦めですよー」
サッ、と指差した先はレンから1mくらい離れた場所だった。
「えっ? どう違うの?」
「えーと…………まあ論より証拠、ちょう座ってみて下さい……」
美由希は言われたとおりに腰掛ける。
「あっ、ホントだ! ここ…ちょっと暖かいよ」
レンは得意そうに微笑む。
「時刻と太陽の角度がポイントなんですー♪ まあ、この家のひなたぼっこスポットの事ならウチに任せて下さい」
「ふむ……では俺には、火照った体を休める冷ややかなスポットを紹介してもらえるか?」
「冷ややか……ですかー? んー、そやったら、あまりお勧めは出来ませんがあそこなんかが条件にあいますが」
レンが指差す先。
そこは……トイレの前だった。
「……うっ」
「1日中おひさんの日は当りませんし、他に熱源となるもんもあらへんし……、まあ…におうんはしゃあないとしまして、そこでごろごろ寝転がってるだけで、通りかかるみなさんからは、それはそれは冷ややかな視線が……」
恭也は最後まで聞かず、スクッと立ちあがる。
「よし美由希……休憩は終わり。 走り込み行くぞ……」
首にスポーツタオルをあてると返事も待たずに走り出した。
「えっ!? きょ…恭ちゃん?」
美由希はすかさず追おうと立ち上がるが…。
「うぅぅ……このポカポカ気分が心残りだけど……じゃあ、レン…行ってくるね…」
後ろ髪をひかれながらも恭也を追い、走り出した。
「いってらっしゃ〜〜〜〜い♪」
レンはクッションから片手を離して、手を振って見送った。
「恭ちゃーん、ちょっと待ってよーっ」
「恭ちゃんってばぁー」
「恭ちゃん………」
美由希の叫び声が徐々に遠ざかっていく。
レンは塀ごしに声のする方角を見送り続けた。
そして声が聞こえなくなると、眩しそうにおひさんを仰く。
「んー、今日も良い天気やー」
レンは改めてクッションを抱きなおし静かに目を閉じた。
おしまい
あとがき
読んで下さったみなさん。 ありがとうですー♪
最近、私内で人気急上昇中(笑)のレンちゃんのSSです。
はじめは、そないでもなかったんですがー、何かこう……ぼでぇーぶろぉーのように
じわじわと効いてきまして、どうにかしてこの思いを伝えたい……そう思て書き上げました。
ちょう短いんですが、許したって下さいね♪
であ、みなさん。
感想などありましたら下さいませ。
2001/04/01