春の暖かい陽光。

ゆったりと流れる雲。

そよぐ風。

格好のお昼寝日和である。

レンはぎゅっとクッションを抱くと、ポカポカの床の上を転がった。

 

「ごろごろ……♪」

 

 

                       とらハ3SS 

『晶とひなたぼっこ』  
           By た〜な

 

 

 

 

「あははーっ♪」

よぽど楽しいのかレンは意味も無く笑みをこぼす。

「ごろごろ〜♪ ごろごろ〜♪ ごろ…」

ドン!

何かにぶつかった。

「ん?」

不意にレンの顔に影が落ちる。

晶が怪訝な顔で覗き込んでいた。

 

「………………お前、何してんだ?」

 

レンはのんびりと晶の顔を見上げる。

「んー? なんや……晶君やないですかー。 そないなおさるみたいな顔してどないしたん?

……って、おさるなんは前からやったなー。 あははーっ」

楽しげに笑う。

「殺すぞ」

晶は拳を握り締めるが、レンは気にした様子も見せない。

「おさるー……ウチは今、優雅な午後の一時を過しとるんや……ほっといてんかー」

のんびりとした口調でそう言うと、クッションをお腹に抱くように体を丸め、幸せそうに目を閉じた。

 

「…………まるでカメだな」

 

ひょい

 

レンの手が無造作に伸び、晶の足を払う。

「うわぁぁあぁぁっ!!」

晶の体が空中で1回転……そのまま地面に叩き付けられた。

「て、てめぇー、何すんだコラー」

「晶ー。 ウチはほっとけ言うたはずやー!」

レンの声に凄みがこもる。

「うっ……ま、真っ昼間からごろごろとしてる方が悪いんだろ! そのたるんだ性根…俺が叩きなおしてくれる!!」

晶は構えをとる。

「全く……こりんやっちゃなー」

レンは面倒くさそうに立ちあがる。

「ま…そういうんが、おさるな証なんやけどな…」

「うるさい、うるさいっ!!」

ブンブンと晶の拳が唸る……が、

ひょい…ひょい

レンは風のようにゆらゆらと揺れて、晶の拳を交わしていく。

「この……ちょこまかと……」

じれた晶は大振りの一撃を繰り出した。

レンはなんなくその攻撃を交わすと同時に、ステップイン。

スッと晶の体に密着すると、とん…と晶の胸の中央に手を添える。

「!?」

晶が驚愕するがもう遅かった。

「ウチの至福の時間を邪魔する奴はー」

レンの手が突出される。

 

『寸掌』

 

「わぁあぁあぁぁぁぁぁーーーっ!」

どん、と弾かれたように晶が吹っ飛ぶ。

5m位離れた場所でワンバウンド……。

晶は片手を天に突出し、ピクピク震わせたかと思うとガクッと項垂れた。

「んー、今日も絶好調♪」

ガッツポーズを決める。

 

「……………」

レンは晶の反撃を考慮してしばらく様子を見守る。

……が、晶が起き上がってくる気配は無かった。

「あややー。ちょう気合入れすぎてもーたかも……。 晶の奴、気絶してもうたみたいやな。

んー、でも…流石にこのままほっとくゆーんはなんやし……しゃーない」

レンは晶に近づくと、倒れてる晶の足首を掴んだ。

「よいしょっと」

 

ずるずる……

 

そのまま縁側まで引きずっていく。

そして晶の体をくの字に丸め、腕にクッションを抱えさせると、いかにも昼寝中という格好を装った。

 

「ふぅ……これでよし♪」

手をはたいて自分の仕事の成果に満足すると、レンは晶の隣に腰を下ろしクッションに手を伸ばす。

「まあ、おさるとひなたぼっこゆーんも、たまにはえーかもなー」

そう言うと、レンはごろんと横になり、再び優雅な午後の一時へと浸っていった。

 

「ごろごろ……♪」

 

 

 

 

****************************************

 

 

 

夕刻

高町家の玄関が開かれる。

「ただーいまー♪」

フィアッセが帰って来た。

レンはちょこんと背を起こす。

「あー、フィアッセさん。 おかえりなさい」

フィアッセはレンを見つけるとニッコリ微笑み縁側にやって来た。

「レン…ただいまー……ん?」

視線がレンの隣で寝ている晶に向けられる。

「ふふ……今日は二人で仲良くひなたぼっこ?」

「えっ! えと……そ、そうですー」

レンは冷や汗を浮かべつつ、フィアッセと晶の間に入り込んで晶を隠す。

「んー、お土産にケーキがあるんだけど……。晶、完全に熟睡してるみたいだね……」

(キュピーーーン)

レンの瞳が妖しく輝く。

「そ、その…フィアッセさん? よくよく思い返してみれば、晶の奴…ダイエットするとかなんとか言うてましたー(大嘘)

「ダイエット? 晶には必要ないと思うけど…」

フィアッセが首を傾げる。

「ま、まあ、このおさるにもようやく女の子としての自覚が出て来たいう事で、いやー目出度いですなー、は……ははは……(大嘘)

「う〜ん、私は……晶は今のままの方が晶らしくて良いと思うけどなー」

「ま、まあそれは兎も角、さっさっ、晶が目覚めないうちに、パパッと食べてしまいましょー」

「う、うん……」

レンは何か納得しきれないでいるフィアッセの背を押したてた。

「あっ、晶の分のケーキは、ウチが責任を持って処分させてもらいますー♪」

そう言うと、レンは上機嫌でリビングへと歩き出した。

 

 

 

その夜、高町の家に晶の絶叫が響き渡った事は言うまでもない。

 

「俺のケーーーーーキーーーーーーっ!!」

 

 

 

   おしまい

 

 

 


 あとがき

読んで下さったみなさん。 ありがとうございます。

今回も、お気に入りのレンちゃんの物語でいってみましたがどうでしょう?

よかったら感想など下さいね♪

 

     『簡易感想』  ← もご利用下さい♪ ボタン1つでらくらく操作ですよ♪

 

2001/04/08