僕の名前は佐藤雅史。
浩之とはもう幼稚園の時からの長いつきあいになる。
偶然かもしれないし、必然であったかもしれない。
けれども僕は、ここまで浩之と一緒に歩んで来れた事をとても幸せに思う。
僕は浩之の事を一番信頼できる親友だと思っているし、多分浩之もそう思ってくれているんじゃないかと思ってもいる。
僕はホモセクシュアルじゃないけれど、浩之とはこれからもずっと一緒にいたいと願っている。
と言うか、僕の中で浩之とずっと一緒にいることが当り前になってしまっているから、思うも願うも、
そんなものはないのかもしれない。
それは同じく幼稚園時から浩之と一緒でいるあかりちゃんにしてもそうなのだろう。
あかりちゃん。 神岸あかり。
僕や浩之の幼なじみである、ちょっと気の弱い、けれども芯はしっかりしている女の子。
間違いなく彼女は浩之の事が好きなんだと思う。他の誰よりも。
繰り返そう。僕はホモセクシュアルではない。けれども浩之の事は大好きだ。他の誰よりも。
『他の誰よりも』
じゃあ、僕とあかりちゃんとを比べたら、どっちが浩之の事を深く、強く想っているのだろう?
そもそも僕が浩之と同じ男である以上、勝ち目が無い事なんかわかりきってはいるのだけれど、
浩之、君は僕を笑うかい?
男が男に惚れるっていう事はおかしいのかな?
浩之、君があかりちゃんと結ばれた事は僕も知っている。
今となっては君とあかりちゃんの関係は公(おおやけ)になっている。誰に恥じる事もない、素敵なカップルだよ。
正直、僕はあかりちゃんの中途半端さに苦りきっていたんだ。 二人の全く進展しない関係にもね。
・・・・・浩之、僕はね、自分が女だったらどれほど良かっただろうって何度も思ったりしたんだよ。
そしたら浩之を誰にも渡したりしなかったし、僕と君との長い付き合いで培ってきたモノ全てをもってして、
君を行きつくことのできる最高の状態まで押し上げられる自信も僕にはあった。
・・・でもね、なんでかな? 今となってはこれで良かったとも思っているんだ。
そう、僕は浩之と同じ、男だ。だから、君があかりちゃんと一緒になったとしても、僕と君との関係は少しも薄らいだりしない。
もし僕が女の子だったら、きっとあかりちゃんと浩之を取り合うことになっていただろうからね。
そしてその結果がどうあれ、僕は浩之かあかりちゃんのどちらかを失う事になる。
やっぱり僕は、君と同じ男で良かったのかもしれない。
あかりちゃんには話せない悩みも、僕ならば聞いてあげられるかもしれないしね。
だから浩之、この次の人生でも、また、逢おうね。
『友達で仲間で時にはライバル』
by 霞月洋祐
私の名前は姫川琴音。
藤田さんとは高校1年生の時に出会いました。
その頃の私は憂鬱でした。
私には超能力があり、けれどもそれを自分でコントロールする事ができなかったために、学校の皆さんに
迷惑ばかりかけてしまっていて、孤立していたんです。
私は常に、ここではないどこかへ行きたいと思っていました。
自分が自分でいられる場所。超能力なんか無くたっていい、みんなと仲良くできて、好きな絵を描けて、
イルカさん達と心を通わせられる、そんな場所へ。
けれどもそんな場所があるはずもなく、たとえあったとしてもそこに行くことが私にはできませんでした。
だって私は何も持っていなかったから。
何かをしたい、けれども何もできない、そんな自分に苛立ち、胸を掻きむしりたい衝動に駆られたりもしたけれど、
痛みが怖くてそれすらもできない、そんな馬鹿でつまらない女の子でした。
覚えていますか?藤田さん。
あなたはそんなかたくなな私を諭し、世の中と和解する事を教えてくれましたね。
とてもやさしい藤田さんにとっては、そんなのはなんでもない、ちょっとした親切でしかなかったのかもしれません。
でも……。
私は藤田さんの事が好きだったのだと思います。 そしてその藤田さんが好きな、神岸先輩の事も。
だから私、藤田さんと神岸先輩がお付き合いなさっているんだ、って聞いた時も、全然悲しくなかったんです。
私は確かに藤田さんの事が好きでしたけど、やっぱり神岸先輩にはかなわないって事もわかっていたから。
でも私にとって、藤田さんは恩人です。
だから一言、ありがとうございましたとお礼を言わせて下さい。
そして、おめでとうございますとも。
いつかどこかで、藤田さんの事を思い出したら、その時にはあなたの夢を見てしまうであろう事を許して下さい。
さようなら、私のノスタルジア。あなたは私にとって、永遠に青春の光です。
藤田君、覚えとるかな?
アンタが2年の時のクラス委員長をやっとった保科智子や。
私、神戸に帰らずにこっちでやってく事に決めたんや。
転校してきた当初は早よ神戸に帰りたい帰りたい言うてたのに、なんでやろ?って思うかも知れんね。
でも実は、藤田君の御陰なんやよ?
私な、正直藤田君の事が好きだったかどうか、自分でもわからんのや。
それに近い気持ちを抱いとった事は事実やけど、あの頃はウチもいろいろと悩んどってそれどころでは
なかったのかも知れん。
藤田君、アンタは今でも優しいんか?
私に微笑む事を思い出させてくれた、あの頃の藤田君のままでおるんか?
…なんでやろな?藤田君の事を思い出そうとすると、私や長岡さんとケンカしとった場面しか頭に浮かんで
こないんよ。ふふっ、おかしなもんや。
懐かしいな。
なんや、こう、情熱だけが、豊かに、確かに併っとったってな感じや。
藤田君、あの頃の私らって、かっこ良かったな。確かにかっこ良かった。
書きたい事がいっぱいある様で、無い様な、変な感じや。
なんや所々インクがにじんどるけど気にせんといてや。
もう二度と同じものは書けへんと思うから、このまま送らせてもらうわ。
最後にひとつだけ、ワガママを言わせてな?
私な、もう一度だけ、藤田君に『委員長』ではなく、『智子』って呼んで欲しかったんよ?
じゃあな、藤田君。 ばいばい。神岸さんとお幸せにな。
Hello!ワタシの名前はレミィと言いマス。
ヒロユキとワタシの歴史は、アカリやマサシと同じ位に長いんデスよ!
ま、ちょっとブランクがあったりもしたけど、そんな事はノープロブレム。
そう言えばワタシ、初めてヒロユキと出会った時は何故かキンパツではなくクロパツだったんだよネ。
ドーシテかなぁ?アハハッ、わかんないデス!
ヒロユキ、子供の時のワタシとアナタの事、まだ覚えてますカ?
ネエ、ヒロユキ、ワタシ達、どうして高校に入ってから再会したんでショーかネ?
ナゼ再会できたのでショーか?
もしかしたらヒロユキは違う高校に行ってたかもしれないし、それより前にヒロユキがドコか他の所に
引っ越していたかもしれない。
ワタシが日本に帰ってこなかったかもしれない。
いつだったか、ヒロユキが『ぶつかった出会いはドラマチック』みたいな事を言っていた事があったケド、
こっちの方がずっとドラマチックだとは思わなイ?
たくさんたくさんの偶然を経て、ワタシ達は再会できたんだヨ?
ワタシはステイツにいた頃、ダディからGUNの使い方を教えてもらいマシタ。
14歳の夏休みにオーストラリアを旅行してきて、原住民のヒトからブーメランやスロウイングを
少しだけ習ったこともありマス。
日本に帰ってきてからはヒロユキも知っているとおり、弓道をやっていマシタ。
ヒロユキ、わかっていましたカ?
私が本当に射止めたかったモノは、ウサギやイノシシや弓道場の的なんかではなく、
アナタのハートだったってコト。
動く標的に関しては百発百中だったワタシのウデを持ってしても射止める事ができなかった、唯一の例外。
それがアナタでした。
デモネ、しょうがないヨ。 いくらワタシのハンティングの腕前が良くったって、既にスナイプされている獲物を
もう一度狙う事なんてできないヨ。
『将を射んと欲すればまず馬を射よ』って言葉、あるよネ?
だからワタシはまずヒロユキのベストフレンド、マサシの方から固めていこうと思い、ランチの時間に
それとなくマサシに 「ワタシはヒロユキの事が好きなんだヨ」 って素振りを見せてきたつもりなんだケド、
今思えばそこからアカリに遅れをとっちゃったのカモ知れないネ。
マサシに頼ったりせず、ワタシ一人の力だけで正々堂々とヒロユキにアプローチすべきだったヨ。
ネエ、ヒロユキはワタシの事、好きだった?
アカリほどじゃなくてもワタシの事を好きでいてくれましたカ?
SFの空はとても青いデス。
この空を見上げる度にワタシは、ヒロユキ、アナタの事を思い出しマス。
この空の彼方でつながっている日本に、アナタに、想いを馳せマス。
もしも明日が晴れならば、アナタはワタシの事を思い出してくれるでしょうカ?
お久しぶりです!藤田先輩。
同好会の件ではお世話になりました、松原葵です。
なんでしょうね、なんというか、今、私の心は甘酸っぱい気持ちでいっぱいです。
まるで初恋の時に戻ったみたいに。うふっ、なぁ〜んて。
やっぱり先輩は、神岸先輩を選ばれたんですね…。ふふ、おめでとうございます。
とってもお似合いですよ!
神岸先輩ってすごいですよね。お料理がプロ並にできて、細かいところに色々と気がついて、
やさしくって、誰とでもまっすぐ話せて、いつでも前向きで。私なんかじゃ到底かないません。
でもやっぱり、神岸先輩にだって足りない部分はあります。
人間なんですから、これはしょうがないですよね。……あっ!その、悪口を言っているんじゃないですよ?
その神岸先輩に足りない部分を埋める事ができるのが、藤田先輩しかいないって事です。
逆に、藤田先輩に足りない部分を埋める事ができるのは、やっぱり神岸先輩しかいないんじゃないでしょうか?
お互いがお互いを補い合える。これって、とっても素晴しい事ですよね。
やっぱりそういう所ひとつとっても、私はダメなんですよね。
私ったら、先輩にお世話になってばかりで、先輩に何かお手伝いできた事なんかないですもんね。
言葉、気持ち、思い出。そんな素晴しい贈り物を藤田先輩からたくさん頂いて、なのに先輩に
何もお返しできなかった自分が、とっても歯がゆいです。
この場を借りてお詫びさせてください。
私、空手は二段を認可されています。けれども人間としてみると、多分、初段にも届いていないと思います。
私が『人間初段』を受ける事ができるのは、いつの日なのでしょうか?
う〜、ダメですね、私! スマイルスマイル! これから一生懸命頑張って、藤田先輩や神岸先輩に
追いついてみせます!
いつか本物のスーパー松原葵になって、先輩の前に現れますからね!
それではこれで失礼します。お体に気をつけて。
私の名前は長岡志保。
浩之、あかり、雅史とは中学の時からのけっこう長い付き合い。
私達は四人でひとつだった。そう、高校一年生の時までは。
ダメだったんだよね。 私達、完成し過ぎてた。四人の関係が完璧になるのが、あまりにも早過ぎた。
私達があの穏やかな時間の中で完成された後も、世界は終りはしない。
私は混乱する。
たしかに四人で、ひとつの山の頂上までたどり着いたけど、まだこんなにも陽は高い。
あっちのほうに更に高い山がそびえ立っている。
このままここで、陽が落ちるまで待っていてもいいのだろうか?
みんな一緒でいられるかどうかはわからないけれど、あっちの山を目指して再び歩き始めた方が
お互いの為になるのではないだろうか?
そう思って、私は二人の背中を押してあげたつもりだった。
一歩下がって、二人の後ろ姿を眺めてみる。距離が近すぎてわからなかった、地面に伸びる二人の影。
私は1+1=2ではないことを知った。
大きいね。強いね。綺麗だね。
でも、どうして私は泣いているんだろう?
きっとこれは親友涙。大きな喜びと少しの寂しさを封じ込めて、大好きな二人を笑顔で送り出す事のできる、
あったかい涙。
あかり、浩之、…また逢おうね、きっと逢おうね。私はいつでもあなた達の側にいるよ!
………フゥ〜、なんだかアタシらしくないわねぇ?
だから、今だけはあの頃の志保ちゃんに戻るよ?
あかり、ヒロ、おめでとう! アタシ達、いつまでも親友でいようねっ!
<END>
あとがき
皆様こんにちわ!作者の霞月洋祐です。
あかりハッピーエンドSSのハズなんですけど、これってSSと呼べるのかなぁ?
え〜、今回の登場人物は、(雅史を除いて)あかりちゃんとのVSイベントがある人達ばかりを集めてみました。
故に、マルチや芹香先輩はいないんです。ファンの方ごめんなさい。
また、資料がPS版のものしかなかった為、そっちをベースに書いてあります。
もしかしたらパソコン版と若干の違いがあるやもしれませんが、そこはご容赦の程を。
ちょいと説明を加えさせていただくと、このSSの時期設定は、浩之とあかりちゃんが結ばれた後、
という点以外は謎です(笑)
結ばれてすぐかもしれないし、みんな高校卒業してしばらく経ってからかも知れません。
そもそもこの「結ばれた」という表現自体が曖昧で、恋人としての「結ばれた」なのか、
結婚等としての「結ばれた」なのか、その辺は敢えてぼかしています。
どちらかひとつが判明すれば、おのずと時期も限定されていく訳なのですが、ま、その辺は皆様の想像に
お任せするということで(笑)
物語を書くのはとても楽しいですね。ではまた。
『大本命は葵ちゃん!』の霞月洋祐でした。