た〜なさん○○歳誕生日記念SS  **

【特別なCD♪】

〜とくべつなしーでぃー♪〜

 

 

ぽかぽかと暖かい夕方の風に揺られる、商店街の若い木々。

その隙間をぬってこぼれる陽射しの中で、一人の少年が呆然と天を見上げていた。

「・・・・・・・・」

彼は何も話すことなく、ただ空を流れる雲を目で追いかけたり、時折視界を通り過ぎる小鳥達を眺めている。

そんな中、ふと彼に近づく一人の足音で我に帰る。

はっと、その方に視線を向けると、そこにはきらきらと輝く髪をツインテールにした少女が、彼に不審な眼差しを送っていたのだ。

慌てて彼が話しかけようとする瞬間・・・。

すぱーん!!

「ぬぉぉぉ〜〜〜っ!!」

突然、どこから取り出したかわからない勢いで、彼女がはりせんを彼の顔面にヒットさせた。

その破壊力は絶大だったのか、彼は棒高跳びの背面飛びのような格好で宙を舞う。

そして・・・。

ずざざぁーーーっ!!

・・・・・落ちた。

まわりを通り過ぎる買い物客達が、その様子をあっけらかんと見ていた。

一瞬、気を失いかけた少年だったが、どうにか意識を取り戻すと、上半身を起こして抗議にでる。

「お、おい、おまえ!!」

「許さないんだから・・・」

「へっ?」

この怒りをぶつけようとした矢先、逆に奇襲を受ける形となる。

「あ、あのぉ〜・・」

「あんただけは、絶対に許さないんだから!!」

そう言うと、いきなり殴りかかってきた。

そんな時、少年はふと思ったのである・・。

『そういえば・・・あのゲームのキャラも、こんな登場だったな・・・。こうやって殴りかかってきたのを軽く・・』

ドゴッ!!

「ぐはっ!!」

軽くかわそうとしたにも関わらず、彼女の拳が見事にボディーへとヒットした。

「み・・見え・・・・ねぇ・・・・・・・」

「ふふふ。私は七瀬道場で副師範代をしてるのよ。素人に見きられてたまるもんか」

可愛らしい顔立ちとは逆に、不適な笑みをこぼしている。

「な・・なんの恨みがあって・・・・・」

「なんの恨みぃ〜? あう〜・・そんな事は知れたこと・・」

「だから、知らないって・・」

ドゴッ!!

「あうっ!」

「あ〜っ! それ、私のセリフゥ〜〜〜!!」

バキッ!!

「うぐっ・・・」

「・・・うん、それならよし!」

なんの事か彼にはわからないが、納得したようだった。

「あなた・・・KANONってゲーム、買ったわよねぇ?」

突然の質問に加え、全身の痛みに混乱していたが、何も答えないと結果がわかるので、やっとの思いで答えた。

「は・・・はい、持っています・・・・・」

うずくまる彼を見下ろしている彼女は仁王立ちのまま、さらなる質問をつきつける。

「それはいつ買ったの?」

「・・・・・発売からだいぶ経っています・・・」

ぴくっ。

一瞬、彼女の額に青筋が一本増えた。

「じゃあ・・・それはもちろん、初回限定版よね?」

含み笑いをしながら、怪しい形相で尋ねる。

「・・・・・いいえ」

ぴくぴくっ。

この時、彼女の顔面いっぱいに青筋が乱舞してるかのようだった。

「ねぇ〜〜〜きみぃ〜〜〜♪」

「ひぃ〜〜〜〜っ!!」

すでにこの瞬間、彼の脳裏に”死”の文字が浮かぶ。

「お、おねげぇ〜しますだ!! 俺には7つ年下の妻と3つ年上の娘がいるんでさぁ〜!! お許しぉ〜!!」

「あなたいくつ?」

「・・・・・永遠の17歳」

どすっ!!

「うぎゃぁ〜〜〜っ!!」

めちゃくちゃである・・・。

それ以前に、3つ年上の娘って・・・・・・。

「なんか、無性に腹が立ってきたわ!」

「・・・・・ずっと怒ってますけど」

ばきっ!!

・・・・・やめときゃいいのに。

彼女は、すっと彼に背を向けると、まわりに集まっているギャラリーに向かって微笑んだ。

「みんな、Kanonの初回版を持ってるわよね♪」

ずざざざっ!!

ばっ!!

だだだだだっ!!

・・・・・・・みんな逃げた。

商店街を一陣の風が吹き抜ける。

そこに残った2人の若者は、ゆっくりと視線を合わせると、お互いを見て微笑んだ。

「や・・・やあ・・・今日は・・いい・・・・・・天気だね・・・・・」

全身から噴き出す汗で、一瞬で地面に湖が出来あがる。

その水面に写る彼女の鉄火面・・・。

「ほ〜んと・・・まさに、地獄日和よね♪」

天気は、このまま下り坂らしい・・・。

長く長く続く、重い沈黙の中・・彼女が懐に手を入れた。

『拳銃!!』

彼は直感する。

だが・・・違かった。

彼女が取り出したもの・・それは。

「・・・・・・何、それ?」

何気なく、勇気のある少年だった。

普通は聞けないと思うが・・・それとも、冒険者か・・・・・。

その問いに、口元をにっと上げると微笑んで答える。

「これはねぇ〜・・・Kanonの超・初回限定版よ!!」

「・・・・・・・・・」

なぜ、超?

不思議と、これだけは聞けない彼であった。

「なぜ、超がつくかというとねぇ〜・・・」

・・・・・説明があるらしい。

律儀である・・・。

「このCDをパソコンに入れて起動すると・・・あう〜〜〜♪

突然、彼女は喜びらしい奇声をあげて踊り出した。

 

数分後・・・。

 

一通り喜んだのか、踊り疲れたのか・・・肩で息をしながら、彼に向きなおす・・そして。

「あげる♪」

「いらない!!」

即答である。

「な、なんでよぉ〜!! 肉まん一個でいいのよ?」

要求に上乗せを試みる彼女・・・。

「なおさら嫌だ!!」

失敗だった・・・・・。

「あう〜・・・・・わかったわよ・・・ただであげるわよ・・・・・」

さっきとは裏腹に、妙にシュンとした可愛らしい態度になる少女。

断るつもりが、その表情に心が揺らぐ。

「・・・・・・もらって・・・くれる?」

ちょっと上目づかい・・・今にも泣きそうな瞳・・そして、かみ締める唇。

「あう〜〜〜、お願いぃ〜〜〜!!」

そう言った彼女は、おねだりの雰囲気をあふれさせ、思わず彼の胸へと飛び込んだ。

彼もまた、勢いに流され、両手を広げて抱きしめ・・・・・いや、全力で締め付けられていた。

「うぎゃぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!」

少年の悲痛な叫び声が、無人の商店街をこだまする。

「もらってくれるわよね?」

そう言うと、にこやかに微笑んだ。

「あうあうあうあうぅ〜〜〜〜っ!!!」

「それ、私のセリフッ!!」

ばきっ!!

「うっ!!」

ミシミシと響き渡る音とともに、彼の声も徐々に消えていった・・・。

そして・・・・・。

彼の両手がだらりと落ち、そのまま動きをとめて地面に崩れ落ちた。

「ねぇ・・・CD、もらってくれる?」

「・・・・・・・・・はい、喜んで・・」

少女は勝利したのだ。

「ふぅ〜・・・つい、本気を出しちゃったわよ・・・」

彼女は額の汗をぐいっとぬぐって、胸元に入れてたCDを彼に手渡す・・というより、握らせた。

少年はそのCDのケースをやっとのことで見るなり、言葉を失った。

そこには、真っ黒なケースにドクロの絵・・そして、手書きらしい可愛い文字で書かれてた一文・・・。

 

【超・初回限定版特典 : と〜っても可愛い、真琴ウイルスCD梱包♪】

 

彼は、そのCDを投げつけ・・投げつ・・投げ・・・れなかった。

「な、なぜ手から離れない?!」

少年の手はすでに『ぱぁ〜』の状態なのに、不思議とCDは手から離れなかったのだ。

「ぬぉぉぉ〜〜〜っ!! なぜだぁ〜〜〜!!!」

「それはね・・・」

慌てる彼の正面に、少女が見下ろす形で立ち尽くして言う。

「一度、そのCDを握ったら最後・・・パソコンにインストールしない限り、手から離れないのよ♪」

すごいことを平然と言いきった。

しかし、そんなことより混乱している彼。

「ちゃんとインストールするから・・・CDを取ってくれ!!」

「ダメ!! きっと、あなたはやらないで捨てちゃうから!!」

「捨てない、捨てない! だから・・・あれ? でも、なんで君は手から離れたんだ?」

当然の質問である。

が・・・・。

「・・・・・企業秘密♪」

両手をうしろで組んで、にこっと笑う彼女。

「あう〜・・・また会おうね♪」

そう言い残して、慌てる彼を残したまま背を向けて走り去っていった。

「お、おい!! ちょっと待って・・うわぁ〜!!」

ずしゃっ!!

必死になって追いかけようとするが、さっきの攻撃で体が思うように動かなく、そのまま前のめりに転んだ。

慌てて立ちあがろうと顔を上げると、もう視界には彼女の姿はなかった・・・・・。

「お、おい・・どこに・・・・・・あれ?」

ふと、彼の目の前に白い名刺が落ちてあるのに気づく。

悲鳴をあげる体をやっと動かして、その名刺をつかむと、小さな声で読み上げた。

そして、愕然とした・・・。

そこに書かれてたこと・・それは・・・・・。

 

【Kanon 超・初回版推進委員会会長

      『沢渡 真琴を愛する会♪』 −福島支部長−   かすき】

 

彼女は・・いや、彼は女装をしていたのだ。

その事実を知った少年は、いつまでも・・いつまでも・・・夕焼けの浮かぶ空を眺め続けていたそうな・・・・・・。

数時間後、やっとのことで家に帰った彼。

仕方なく、そのCDをパソコンにインストールすると、恐る恐る起動した。

だが・・・何も起こることなく、ごく普通のKanonがはじまったのだ。

その瞬間、なぜかケースが手から落ち、少年が喜びの声をあげる。

「やったぁ〜〜〜!! これで、俺は自由だぁ〜〜〜っ!!」

そう叫んで、パソコンのそばを離れていった。

しかし、彼は知らなかった・・・彼のホームページのことを・・・・・。

今までなかったそのTOPのコンテンツに、『チャット』が出来たことを・・・・・。

そしてその中に、真琴が生活していたことを・・・・・・彼は知らない。

彼が気づいたのは、それからさらに数時間後だったらしい。

削除しても消えない・・・しかも、変な言葉をどんどん覚えていったのだ。

 

そして数週間後・・・彼は、真琴なしでは生きられない体になったという・・・・・。

 

 

余談だが・・・・・それから、またさらに数週間後・・・駅前にいた彼は、髪の長い少女と出会うことになる・・・・・。

そう、彼女の正体は・・・・・・。

 

 

〜Fin〜

 

 

 

【あとがき・・・のようなもの(笑)

 

・・・・・・・・・。 ( ̄▽  ̄;

どうしましょう?(爆)

自分で言うのもなんですが・・・変ですね、この物語(?)は。(汗)

でも、楽しんで書いてましたよ、私は♪ (⌒▽⌒;

きっと、少年が誰なのか・・・懸命な人はすぐわかるよね♪

あえて、誰かは言いませんが・・・これを読んだということは、そのHPを知ってる証拠です。(爆)

きっとあなたも・・・いつか、彼みたいに真琴もどきに出会って、愛の洗礼を受けることでしょう♪

もし、真琴のチャットを見かけたら、その人は・・・・・・。 (*⌒▽⌒*)

 

最後に・・・。

た〜なさんの誕生日なのに、こんなSS(?)を贈ってしまってすいませんでした。

もう一度言っておきますが、た〜なさんは・・・。(以下略)  詳しくは、もうひとつの作品のあとがき見てね♪

ちょっと遅れましたが・・・た〜なさん、17歳のお誕生日おめでとぉ〜♪(爆)

来年は17歳だね♪

私も早く、誕生日を・・・・・・迎えたくないね。 ( ̄▽  ̄;

 

それでは・・また。

『はっぴ〜ば〜すでぇ〜・・・た〜なお兄ちゃん♪』 \(*⌒▽⌒*)/