大門山 1571m 石川県
大門山は加賀富士とも呼ばれ金沢平野から見るその姿は秀麗で美しい。
ただし冬季はそのアプローチの悪さと豪雪のため登山の対象になることはほとんどない。
さあスキーを使ってブナの原生林に会いに行こう。
ルート地図
登山口の五箇山が既に豪雪地帯,ここからブナオ峠まで冬季は遙かなるラッセルが続く。
冬季の単独行は気力,体力,知力が試される厳しいルートである。
今回で三度目だが人にあったことは一度もない。
危ない林道
林道の左手は深い峡谷,右斜面からは雪崩れ早朝に一気に尾根取付まで行くしかない。距離にして
約2kmである。最初の長い橋を渡ってヘアピンカーブを過ぎたすぐ脇に鉄塔がある。鉄塔から
林道を進むこと100mで尾根に合流する。
尾根取り付き
正面の尾根がブナオ峠東北東尾根である。すぐに急登。木の枝にしがみつきながら根性で登る。
尾根右手も深い谷,気が抜けない緊張が続く。しばらくは藪との格闘である。
尾根上700m付近
この日この辺りでようやく夜が明けた。手つかずのブナの原生林が主稜線まで続く。
まさに動物たちの楽園である。
大滝山,人形山
尾根から振り返れば左電波塔の建つ大滝山,右端人形山の展望が素晴らしい。
大滝山も絶好の山スキー向きの山である。
尾根上900m付近
尾根も上がるにつれ疎林になっていく。カモシカの足跡が続いていく。もうしばらくで大門山が見える。
遙か大門山
標高1000m付近からは平坦地が続く。テントを張ってのんびりしたいところである。
正面奥大門山はまだまだ遙か先である。
主稜線手前の展望
主稜線手前は尾根がやせ細り最も緊張するところである。左手奥に大笠山がそびえ立つ。
ブナオ峠
主稜線1100mから130m下ったらいよいよブナオ峠に到着する。峠周辺の小屋も雪で屋根まで埋まっている。
さあ残り標高差600mこれからが根性の見せ所である。尾根の下部は広く視界不良時は迷いやすいだろう。
主稜線1200m付近
尾根を登るにつれ右手に大門山が圧倒的な迫力で迫ってくる。さあ頑張ろう。
主稜線1250m付近
正面のピークの登りはかなり急登であり,場合によってはツボ足が無難である。これを越せばすぐに分岐だ。
分岐手前標高1450m
急登を乗り越せばいよいよ山頂は間近である。
主稜線分岐
やっと分岐だ。残り標高差70mである。最後の登りである。
山頂にて
ついに山頂到着。長い旅が終わった。背後の遙か先が金沢である。
山頂の展望
遥か先には北アルプスが,五箇山の集落も小さく見える。
主稜線の先
分岐からの先の主稜線は大笠,奈良岳などを経て更に白山まで続いている。
山行記録2002年1月14日(月)
時刻-標高-場所
4.32 320m 五箇山国道156号ブナオ峠林道口
5.51 550m ブナオ峠東北東尾根取り付き
8.19 1100m 主稜線
8.38 970m ブナオ峠
8.47 970m ブナオ峠発
10.26 1480m 大門山分岐
10.41 1571m 大門山山頂
11.02 1571m 大門山山頂発
11.29 970m ブナオ峠
11.58 1100m 主稜線
1.00 550m ブナオ峠東北東尾根取り付き
1.28 320m 五箇山国道156号ブナオ峠林道口
大門山は加賀富士とも呼ばれ金沢平野から見るその姿は秀麗で美しい。ただし冬季は
そのアプローチの悪さと豪雪のため登山の対象になることはほとんどない。三度目の
挑戦でついにその山頂に立ち山スキーで滑り降りることが出来た。久しぶりの完全燃
焼であった。
【山域】大門山 1572m
【場所】石川県
【日時】本日 1月14日(月)
【コース】五箇山国道156号ブナオ峠林道口−ブナオ峠東北東尾根−ブナオ峠−大門
山往復
【メンバー】単独
【装備】バンディットライト170cm,ディアミール2,TR12
【天気】晴れ
昨日の荒島岳から帰宅後明日この山に挑戦するかどうか晩飯を食べながら迷っていた。
過去にこの山の冬季山スキー報告はまず無いであろう。過去数度の挑戦はラッセル時
間切れでブナオ峠までしか届かなかった。この時期の快晴,今を逃せば一生成功する
機会がないかも知れない持てる力をすべて投入し挑戦することにした。
1月13日(日)晩飯のカレーを腹一杯食べてあきれ顔のかみさんに挨拶していよいよ
気持ちは高揚していく。北陸自動車道から東海自動車道に入り終点五箇山で下車。
夜10時過ぎ五箇山国道156号ブナオ峠林道口に到着。さすが豪雪地帯の五箇山このあ
たりでも1m近くの雪はある。車内で酒を飲みながら地図とにらめっこ,ブナオ峠まで
のルート取りがすべてである。頭にルートをたたき込む。
1月14日(月)朝4時起床。徐々にテンションを高めていく。ここからブナオ峠まで林
道で10km冬季単独ラッセルするには過酷な距離である。おまけに林道はどこからでも
雪崩れてくる。初回の挑戦ではテント1泊で峠までしか届かなかった。今日ならラッ
セルはないだろうが,出発は出来る限り早いほうがよいだろう。
4.32 320m 五箇山国道156号ブナオ峠林道口発。峠まで10kmの看板を横目にゲート
をくぐりいよいよ熱き山行の始まりだ。真っ暗な林道は所々斜面から落ちる雪で雪崩
れていた。早く尾根に上がらねば,しかし取付まで2kmちよっと。林道左は深い谷と
なっており川の音が不気味にこだましていた。
最初の橋を渡っている時いきなりライトが消えた。勘弁してくれ。正直怖かった。電
池切れのようだ。今はやりの発光ダイオードライトだから玉切れの訳はない。さらに
足を進めるが林道は予想通り所々雪崩れており谷まで雪が流れている。昼間はとても
進む気にならない。
尾根の取付は確か送電線の鉄塔(2.5万には書いていない)を過ぎたあたりだったろ
う。最初に取り付いた尾根はしばらく登って様子がおかしいことに気が付いた。暗闇
で鉄塔が分からなかった。再び林道に下りる,しまった時間を大きくロスした。
5.51 550m ブナオ峠東北東尾根取り付き。ようやく目的の尾根の取付だ。ブナオ
峠に至る最も安全なルートはこの尾根しかないだろう。まだ真っ暗だが以前の様子と
合致している。いきなりの急登,藪まじりの急登を木の枝をつかみながら無理矢理登
り詰めていく。右手は深い谷,転けたらただではすまない。階段歩行を交えて細い尾
根を藪をくぐりながらガンガン行く。下りも半端な滑りでは対応できないだろう。
急登を何とかクリアーし750mを過ぎたあたりでようやく尾根は緩やかになる。ようや
く人形山の肩から朝陽がさしてきた。安堵感漂い,気持ちが吹っ切れた。ここから稜
線までブナの原生林が続く。人間世界とはかけ離れた自然の宝庫である。登山の対象
にはならないためか赤布すらどこにもない。まさに自然と一対一で向き合える贅沢な
時間である。尾根は徐々に疎林となり,周囲の山並みの展望が豊かとなる。朝陽が木々
を照らし遙か彼方に白山が点に見える。まだまだ先は長い,頑張って足を進める。
主稜線手前は尾根がリッジのように細くなり最も緊張する場所である。左右どちらも
深い谷である。慎重にわたりきるといよいよ主稜線はすぐそこだ。
8.19 1100m 主稜線。何とか関門突破。遙か向こうに堂々たる威容の大門山が見え
た。さあ待ってなさい。ここから悲しいかなブナオ峠まで標高差130mの下りである。
時間が惜しいのでシールのまま滑り降りる。当然帰りは登り返しだ。
8.38 970m ブナオ峠。ようやく峠に到着。周囲の小屋は雪で屋根まで埋まっていた。
此処で大休止。いよいよここから約600mの登りである。ここからは未経験ゾーンであ
る。もう一度気合いを入れ直し,燃料補給だ。
8.47 970m ブナオ峠発。下部は広い尾根。視界が悪いと迷うこと間違いなし。この
ペースだと何とか行けそうである。天気も最高,風もない。神が与えてくれた絶好の
スキー日和である。
1400m付近の尾根はかなり急登であったが何とかスキーで登り切る。右手に見える大
門山がどんどん迫ってくる。主稜線の更に先に見える大笠山も見事である。この稜線
は遙か白山へと続いている。
10.26 1480m 大門山分岐。やったーついに分岐だ。大門山へは此処で右に折れ残り
標高差70mチヨットである。右手には雪庇の張り出し。慎重に行こう。最後の力を振
り絞りついに山頂が見えた。
10.41 1571m 大門山山頂。やったー山頂だ。周囲は360度山また山。奥の深い山域
である。遙か彼方に金沢市が見えた。この日は風もなく,山頂でゆっくりした。白山
や北アルプス,乗鞍岳,御嶽山が手に取るように見える。頑張って良かった。記念写
真を撮り一人っきりの展望に酔いしれる。さあ帰りはスキー三昧と言いたいところだ
が,雪質は悪くかなり厳しい下りになるだろう。
11.02 1571m 大門山山頂発。いよいよ下りだ。絶対に転倒しないように程々に宙
に舞った。やはり山スキーしかないだろう。尾根上は樹木を機敏に駆け抜けるまさに
大回転のようだ。
11.29 970m ブナオ峠。あっという間の快楽だった。さあここでもう一度シールを
貼り130mの登り返し。ブナ林の登りは喜び以外の何ものでもない。苦にはならなかっ
た。
11.58 1100m 主稜線ブナオ峠東北東尾根分岐。さあここからふたたびブナ林を滑り
降りるのみ。下るにつれ藪はふえ雪質は更に悪くなる。春先のような雪だ。腕の見せ
所だ。足もかなり張ってきたところでついに林道に合流。
1.00 550m ブナオ峠東北東尾根取り付き。ここから新たに崩れた箇所を横目に急
いで林道を駆け下りる。
1.28 320m 五箇山国道156号ブナオ峠林道口。何とか無事到着。数年来の念願が果
たせた。今日のように完全燃焼するスキー山行は1シーズンそうあるものではないだ
ろう。