大日岳(大日山谷)2501m 富山県
このルートは危険でありお勧めではないがコット谷経由で山頂に立ち山頂から一気にコット谷出合まで滑ることができる
ダイナミックなコースである。ひと味違った山行が楽しめるので通のために紹介します。コット谷まではコット谷の項を参考に
して下さい。
小又橋からいくつもの堰堤を乗り越してコット谷に立つ。堰堤はすべて左岸から乗り越した。正面のコルを目指して
頑張ろう。広々とした快適な谷である。
猛烈な雪崩
この日コット谷上部で左手稜線から落ちてきた猛烈な雪庇崩壊雪崩を目にした。昨日のものだが登行中に巻き込まれたら
終わりである。稜線まで油断をしないで一気に駆け上がろう。コルにも不安定な雪庇ができるので要注意である。
稜線からの毛勝三山
稜線からは毛勝・赤谷・剣などの展望がすばらしい。正面にブナクラ谷が見える。
大日岳前衛
早乙女岳に来てはじめて前衛が見渡せる。前衛の登りはクラストの上シュカブラが発達するため気をつけよう。
クトーをつければそのままスキーで上れるはずである。
山頂からの立山
大日岳山頂からは立山や剣岳の展望が圧巻である。雪庇にはくれぐれも気をつけたい。景色を見ようと山頂東側には
不用意に立ち入らないことだ。さあここから大日山谷に飛び込む。雪庇をさけるため大日小屋まで下って谷に入ろう。
大日岳から見た剣岳
大日岳山頂から見る剣岳は実にピラミダールで美しい。剣は山の王者である。
山頂の雪庇
いよいよ小屋付近から大日山谷に飛び込む。出だしからしばらくは急であり慎重な滑りが要求される。
雪庇が崩壊すれば谷は逃げ場がないため一気に安全地帯まで下りたい。
大日山谷上部
谷は急峻な上両サイドどこからでも雪崩が落ちてくる危険地帯である。
大日山谷上部2
この日気温が高すぎて雪の状態は悪かった。転倒しない滑りに終始した。
大日山谷二股
標高1775mで大日山谷は二股になる。ここまで一気に滑り降りる。一息つくのはまだ早い。
ここから下も恐ろしいほどの両サイドの雪崩跡である。
谷の下部
谷の下部は緩斜面となるが川が割れていると厳しい渡渉になるかもしれない。
コット谷出合
標高920mのコット谷出合。此処でやっと安全圏である。ゆっくり休もう。あとは悪雪をのんびり小又橋まで
戻ろう。林道は使わない方が賢明である。堰堤越えが安全である。
山行記録2001年4月18日(水)
時刻-標高-場所
4.03 標高490m 伊折・剣センター前ゲート発
4.23 625m 小俣の橋
5.43 920m コット谷出合
7.08 1515m コット谷コル
8.28 2035m 早乙女岳
9.51 2501m 大日岳山頂
10.14 2501m 大日岳山頂発
10.37 1775m 大日山谷二股
10.54 920m コット谷出合
11.34 625m 小俣の橋
11.50 標高490m 伊折・剣センター前ゲート
【山域】北アルプス・大日岳(2501m)
【場所】富山県
【日時】4月18日(水)前夜発日帰り
【コース】伊折−小又橋−コット谷−早乙女岳−大日岳−大日山谷−コット谷出合−伊折
【メンバー】単独
【装備】アトミックβカーブ160cm,ディアミール,TR12,アイゼン
【天気】晴れのち曇り
昨年3月5日文部科学省の冬山研修会中に起きた雪庇崩落事故の事故調査報告書が先日
送られてきた。文登研の事業に携わってきた自分にとってもこの事故ほどつらいこと
はなかった。報告書を見て一度自分なりに事故を検証してみたかった。
4月17日(火)仕事が終わるといつものようにスキーを車に詰め込む。この時期伊折
でゲートは閉じられており馬場島まで車が入れないと思い。自転車も車に乗せて金沢
を出発。富山インターで下り,とろ一へさすがにマスターもややあきれ顔。とろ一で
海の幸,山の幸を死ぬほど食べて2500円。なんと良心的な店だろう。味も金沢の一流
割烹に決して引けを取らない。お腹が一杯になったところで馬場島方面に向かった。
夜10時過ぎ伊折の剣センターに到着。思った通りゲートは固く閉ざされていた。例年
ゴールデンウィーク前後にならないとゲートは開かない。満天の星に安心しすぐに就
寝。
4月18日(水)朝3時半起床。食欲がなかったので飯は食わずに出発。ここから山頂ま
で標高差2000mちよっと先日の飛騨沢と同等である。気合いを入れて購入20年の学生
時代からのロードレーサーにまたがりスキーを担いでいざ出発だ。
4.03 標高490m 伊折・剣センター前ゲート発。暗闇の舗装道を飛ばす。歩けば橋ま
で40〜50分はかかるだろう。やはり自転車はこの時期山の必需品である。
4.23 625m 小又の橋着。此処で自転車をデポいよいよスキーの出番である。雪は
というと予想以上に少なかった。昨年の同時期よりはやはり少ない。林道開通を待っ
ていると川の渡渉が大変だろう。所々で雪は消えてはいたがまずまず支障はなかった。
税金の無駄遣いにしか思えない堰堤を次々に乗り越す。すべて左岸側から乗り越すの
がよい。渡渉は1カ所。スキーを持ってジャンプしたのがまずかった。片方のスキー
を川に落としてしまった。さあ大変だ。途中で石に引っかかったが深みにはまってい
る。仕方なく衣服をすべて脱いでスッポンポンになってスキーを回収した。一人で良
かった。寒さに震えながら急いで服を着てコット谷を目指す。20分時間をロスした。
5.43 920m コット谷出合。ここで下りの小又川本流を見ると一部で川がでている
ものの何とか大日山谷経由で降りられそうである。さあ広々としたコット谷である。
雪崩のない安全な快適な谷と思いきや,標高1250m付近で猛烈なデブリ。稜線の雪庇
崩壊が原因である。雪の状態からして昨日のものである。やはり自然は一筋縄ではい
かない。正面に見えるコルにも不安定な雪庇が・・・今日は気温が高いので心配であ
る。休まず一気に登り切るしかない。早立ちがやはり何より安全である。
7.08 1515m コット谷コル。何とか無事安全地帯に到着。振り返ると毛勝三山や赤
谷山がすばらしい眺めである。ここから稜線をクトーをつけながら歩く。薄曇りだが
風はなく暑いくらいである。
8.28 2035m 早乙女岳着。いよいよ目指す大日前衛が見えてきた。稜線左手には雪
庇がごろごろしている。坪足トレースが一つあるが雪庇上を通過していた。やはり境
界がよく分からないのだろう。僕は慎重にも慎重を重ねて上り詰めていく。前衛斜面
はクラストの上にシュカブラが発達しとても登りにくかった。見渡せば剣・薬師・毛
勝がすばらしい。最後の気力を振り絞りようやく山頂が見えた。此のあたりも例年に
なくハイマツが出ている。
9.51 2501m 大日岳山頂着。ついに山頂だ。雪は少なくハイマツや三角点が顔を出
していた。やはり今年は雪は少ないのである。立山の稜線も黒々としており。立山・
剣周辺は予想に反して雪は少なかった。山頂周辺の雪庇はいつものごとく巨大である。
山頂で下山ルートを地図で探っていたその時,携帯が鳴った。もしや・・・。その通
りかみさんからの仕事の電話だった。取り敢えず先方に必要な指示をして昼過ぎには
金沢に戻るからと言うことで電話を切った。自営業はつらい。しかし仕事が最優先で
ある。
10.14 2501m 大日岳山頂発。さあいよいよ山頂から学生が流された大日山谷に下
ることにする。雪庇をさけるためいったん大日小屋まで下った後谷に飛び込む。稜線
に張り出した雪庇を見ると怖くなった。滑走中に崩壊したら逃げ場がないため一貫の
終わりである。休まず一気に下るしかない。上部は40度程度の細い谷である。気温が
高く雪質は最悪である。転倒すれば雪崩を誘発する危険もあり慎重な滑りに終始する。
学生二名はこの急峻な谷を一気に標高差1000m近くも流されてしまったのである。一
度流されればまず止まることのない急峻な谷であった。谷の両側からもデブリがいた
るところで落ちていた。
10.37 1775m 大日山谷二股。ここまで一気に滑り降りる。一息つくのはまだ早い。
ここから下も恐ろしいほどの両サイドの雪崩跡である。標高1500m付近の遺体発見現
場付近で足を止め両君の冥福を祈った。本当に事故が残念でならない。気持ちの整理
ができたところで再び一気に下る。川は数カ所で割れてはいたが滑走に支障はなかっ
た。
10.54 920m コット谷出合。此処でやっと安全圏である。大休止した後,さらに
腐った雪を苦労しながら滑り降りた。
11.34 625m 小又の橋。車が2台止まっていた。きっと魔法の鍵でも持っているの
だろう。此処でスキーを洗い自転車にまたがり約10分で車に到着した。
11.50 標高490m 伊折・剣センター前ゲート。
急いで車に飛び乗り,1時に金沢着。そのまま仕事に向かう。
事故の後遺症で文登研では未だに積雪期の学生研修会が無期延期状態である。今回の
事故に関して様々な意見があるのはもっともだが職員や講師たちは命がけで研修会を
支えてきたことだけは事実である。せっかくの国の研修機関。官僚的発想で事なかれ
主義に走るのではなくこの事故を契機にさらに文登研が安全登山の推進役になること
を願って止まない。 僕自身が多くのことを学んだように・・・・・
機会があれば文登研発行の遭難事故報告書を是非一度お読み下さい。