五竜岳(2814m) 冬季日帰り滑走

冬季五竜岳を日帰り登頂した報告はまずお目にかかったことがない。だからやる価値がある。予想通り

12時間を超す標高差2000mの厳しい難行であった。やはりスキーの機動力はすごい。

大遠見過ぎの朝陽の歩行

遠見尾根は小,中,大,西と四つのピークを持つ。スキーがあればトラバース可能だ。中遠見

以外はシールの登り返しは不要だった。まさに山スキー無しでは考えられない尾根である。

鹿島槍北壁

残念ながら稜線より上部は雲が流れ展望は効かなかったが北壁はキラキラ輝いていた。

稜線のシュカブラ

強風の通り道にはシュカブラが発達し素晴らしい景色であった。

大遠見付近から見る五竜

行きは雲で見えなかったが帰りは素晴らしい眺めであった。進むに連れ五竜が迫ってくる。

常にこの尾根からは五竜の展望を楽しむことができる。

ヒマラヤ襞

朝陽に輝く稜線東面には冬ならではの輝きがある。

稜線に出た2700m地点から

強風で岩が露出していたりアイスバーンになっていたりと稜線に出てからが核心である。

山頂にて

厳しい難行に打ち勝った。その形相は赤鬼,青鬼であった。

剣の展望

山頂からの展望は素晴らしい。雪炎が舞う冬の剣は絵になる景色だ。

鹿島槍

双耳峰の鹿島槍は雲の上に顔を出していた。

山頂から下山路を見下ろす

下りも気を抜けない下行が続く。

稜線下大斜面

この大斜面に自分たちだけのシュプールを描いた。

大斜面の滑走

カール状の素晴らしい斜面である。うーんシアワセ。

パワフルな滑り

深澤君のテールを沈めたクネクネ滑走。まさに達人である。

西遠見手前

西遠見手前の鞍部付近から見上げる五竜は圧巻であった。

一気に尾根を行く

尾根を一気に滑っていく。スキー無しの冬の登山は考えられない。

大遠見下りにて

手前が中遠見,奥が小遠見。中遠見のみシールの登り返しがある。

小遠見にて

小遠見から里まで一気に行ける。犬川,平川に下る手もあるが雪崩には十分注意したい。

山行記録2003年12月23日(火)

ここ数度の厳しい藪ラッセルで鍛え上げた僕たちは気力と体力の限界に迫るべく,多
分報告の無いであろう冬の五竜岳の日帰り滑走に挑戦してみた。やはり12時間を超す
限界に近い山行で完全に燃え尽きてしまった。

【山域】五竜岳 2814m
【場所】長野県
【日時】12月23日(火)
【コース】五竜遠見スキー場駐車場−遠見尾根−五竜岳往復
【メンバー】僕・深澤君
【装備】サロモン・Verse7 150cm,ディアミール3,ノルディカTR12(僕)
    サロモンポケロケ 175cm,ディアミール2,ノルディカFun drive(深沢君)
【天気】晴れ,ガス,強風

12月22日(月)白鳥山行後の温泉でこの計画を告げられた僕は朝から仕事中もモチベー
ションは上がりっ放しであった。仕事が終わった夜一目散にまた高速を飛ばして五竜
に向かった。夜10時過ぎ五竜遠見スキー場に到着すると既に深澤君は山梨から到着し
ており早速僕のパジェロで宴会となった。いつものように彼は半額に値落ちしたお総
菜をスーパーでたくさん買い込んでいた。宴会は早々に切り上げ明日の厳しい山行に
備え就寝した。

12月23日(火)朝2時起床。寒い朝で食欲は全くなかったが無理矢理胃の中に消化が
良く高カロリーの食事を詰め込み徐々にモチベーションを上げた。既に深澤君も起き
て準備をしているようだった。ここ数日のドカ雪でスキー場は駐車場からたっぷりの
積雪であり今日も厳しいラッセルが待ち受けていることを予想できた。

2.58 810m 五竜遠見スキー場駐車場発。ゴンドラは始発が8時であり,今回は自分
の限界を試す山行のため要はないのでここからのスタートだ。山頂までの標高差は
約2000mであり遠見尾根のアップダウンを考えれば更に高度差は多いだろうと思われ
この時期の山行としては一級の厳しさだろう。いきなり暗闇のスキー場をトップギア
で歩き出す。

藪ラッセルに比べれば赤子の手をひねるような感じで直登の連続でドンドン高度は上
がる。街の夜景がよく見えるようになるといよいよリフト終点地蔵の頭が見えてきた。

4.19 1673m 地蔵の頭着。標高差850mを1時間20分。時間600mは稼いだことになる。
これで今後の行程がかなり楽になった。スキー場を離れると膝くらいのツボ足のトレー
スがあった。小遠見山手前の1892mにその足跡のパーティのテントがあった。脇を通
り過ぎたがまだ就寝中であった。今日山頂を目指すのであろうか。ここから先はトレー
スは一切無く,深澤君と交互にラッセルすることにして体力の温存を図った。

5.40 2007m 小遠見山。ここのアップダウンは右からトラバースして難なく切り抜
けた,やっぱスキーでしょう。しかし次の中遠見は地図では山頂から60m近く下るた
め左側を巻いたが積雪は多く場所によっては膝下ラッセルとなった。それでも暗闇の
中周囲の地形が見えずトラバースがうまくいかずかなり下る羽目になった。帰りはシー
ルで登り返しである。次のピーク大遠見付近でようやく背後から朝日が昇ってきた。
朝焼けの鹿島槍の写真を撮りたかったが稜線より上は雲が流れておりおまけにこの日
はかなり強風が吹き荒れ厳しい登りであった。谷からもゴーゴーと不気味な音が鳴り
響く。

8.10 2268m 西遠見山。強風に耐えて何とか到着。目指す五竜も雲の中,まだまだ
体調は良かった。ここは左から完璧にトラバースして鞍部に出た。帰りは登り返さな
くて良い。この鞍部から稜線まではカール状の大斜面である。この斜面に自分たちだ
けのシュプールが刻めそうだ。もうワクワクドキドキで一気に足は速くなった。

8.51 2500m 五竜山荘着。ようやく稜線である。しかし稜線は一層強い風が吹き荒
れとおり,おまけにガスで視界は全くない。しばらく小屋裏で休息をとった僕たちは
いよいよ山頂に向けアタック開始である。雪が付いていれば山頂までスキーを使う予
定だったが小屋からはガチガチのアイスバーンと岩に阻まれポケロケに合うクトーを
持ち合わせていない深澤君はスキーを諦めた。僕はクトーを付けもう少し先までスキー
で進んだ。

ガスと強風は鳴りやまず稜線に出てからは本当につらかった。僕も途中でスキーを諦
めアイゼンに履き替え深澤君を待つが一向に来ない。おかしいもしかして滑落でも。
視界がまるでないので僕は大声を張り上げながらもう一度下った。しばらくしてよう
やく彼の声が聞こえた。新調した靴にアイゼンが合わず10円玉で6角レンチの代わり
をしていて時間がかかったらしい。合流後再度山頂を目指す。トレースはないため凍
り付いた岩や雪壁に難儀したが最後山頂が見え四つん這いになりながらようやくゴー
ルにたどり着いた。

10.33 2814m 五竜岳山頂着。実に7時間半。厳しい道のりであったが,気力は充実
しておりお互いの顔を見合わせた。まさに赤鬼青鬼の厳しい形相であった。標
高2700mより上では晴れており剣の展望は素晴らしかった。この展望を楽しんでいる
間は寒さはまるで感じなかった。さてそろそろ行きますか。

10.51 2814m 五竜岳山頂発。雪壁は後ろ向きで這うようにしてドンドン下り一気に
スキーデポまで下った。

11.42 2685m スキーデポ地点。もう一度小屋裏で風をしのいで休憩した後はいよい
よお待ちかねの大斜面である。交互に会心のシュプールを刻みあった。魔法の翼を持
つ僕たちは中に舞い続けた。たまらんな。いつものようにお互いの滑走シーンを取り
合う。下りは快適だった。アップダウンの多い遠見尾根もスキーがあればトラバース
トラバースで登り返さなくて良いのである。

12.43 2268m 西遠見山。西遠見を過ぎ五竜を振り返ると一層の感激がこみ上げてき
た。この先大遠見間でようやく前泊パーティとすれ違う。やはり深いラッセルに苦し
められていた。今日の登頂は全く無理で今日は西遠見泊まりだろう。このペースなら
最低でも3泊ないと下山は無理であろう。やはりスキーの威力はすごい。

1.35 2040m 中遠見山。手前の鞍部で初めてシールで50mほど登り返したが,ここの
みの登り返しであとは全部滑れた。

2.21 2007m 小遠見山。時間があれば犬川か平川に下る予定であったが夕方から用
事のある僕はこれを諦め尾根伝いで下ることに決めた。

2.45 1673m 地蔵の頭着。既に足はガクガクである。踏ん張りきれず転倒すること
もあった。ようやくスキー場に着いたがもちろんコース外に出てパウダーを楽しませ
てもらったのは当たり前である。

3.03 810m 五竜遠見スキー場駐車場着。お疲れ様12時間を超す難行であったがやり
遂げたという感は強かった。この人と二人でくめば冬の北アルプスの日帰り山行圏は
更にその可能性を広げることができそうだとしみじみ思った。

この時期五竜を日帰りした方はいますでしょうか。いたり知っている方がいればご連
絡下さい。


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