剣岳ワンディ山頂滑降(ダイレクトルンゼ)
剣岳山頂から滑降する人は珍しくも無いが,日帰で滑降した報告は無い。早月尾根経由で山頂に立ちダイレクトルンゼ
を滑降した後剣沢を登り返して立山川から馬場島に戻った。約12時間,累積標高差2900mであった。
周回ルートマップ
馬場島からの北面経由
馬場島からは直接尾根に取り付かず白萩川を渡る橋まで林道を進み橋付近から北面にせめ尾根に上る。
早月尾根突き上げ地点
早月尾根1350m付近を目指して尾根に乗り上げると快適である。
猫又山
早月の右手には朝日に照らされた猫又山が美しい。早朝はクラスとしクトー必須である。
大日岳
尾根の右手には大日岳が美しい
立山川
早月尾根を上がるにつれ立山川が見えて来た。帰りのラインは赤に決めた。中央鞍部が室堂乗越。
早月尾根2050m
この辺でようやく剣が見えて来た。一気にモチベーションは上がる。
早月2100m
尾根上には至る所にテントが張ってあった。
早月小屋
標高2200mの早月小屋で積雪5m,ここからが核心部となる。行くしか無い。
標高2450m
ここまでスキーで歩けたが,ここからは厳しい雪壁の連続の為アイゼンで歩く事にした。
標高2600m
まだ固い雪面をアイゼンを蹴り込みながら慎重に進む。左手は池ノ谷,滑落したらまずアウト。
標高2800m
剣北面はカチカチのアイスバーン状態,滑降は厳しい。さあもうすぐ山頂だ。
剣岳山頂
馬場島から8時間,ようやく到着。まだまだ体力十分,さあ後半戦に突入。
山頂の展望
今年の剣沢は雪がとても多い。ここは山スキー天国である。
山頂からのコース
このコースがダイレクトルンゼである。厳しい壁が続く。
さあ飛び込みます。
まず名人から,次に僕がジャンプターンで飛び込んでいく。転けたらまず助かる事は無い。
山頂直下
ドンドン飛んで高度を落とす。山頂直下が核心であとは快適な雪面であった。
飛ぶしか無い
平蔵谷目指して急斜面を飛ぶしか無い。
広角で
ターンする度に雪が崩れデブリが起きる。何度も逃げ回った。
ノドめがけ
さあ平蔵が見えて来た。ノドは狭いので雪崩に気を付け一気に行くしか無い。
無事滑降
無事滑降して平蔵谷に来た。ここはシュプールが一杯だった。
剣沢登り返し
標高2050まで滑り降りてここから剣御前小屋まで標高差700mの登り。
剣全景
剣沢上部から見る剣岳は絵になる。
剣沢キャンプ場
GWの剣沢はテントが一杯だ。
立山
剣御前まで登ればもう帰るのみ。立山も雪は多くたくさんの人で賑わっていた。
立山川へ
雷鳥沢2550m付近からシュプールのないルンゼに飛び込んだ。ここも超快適だった。
恐い立山川
立山川は両側から雪崩れていた。時間を見計らって一気に馬場島まで行く。
馬場島
今日も最上級の試練と憧れであった。剣岳はやはり山の王者である。
山行記録:2006年5月4日 標高-場所
4.00 760m 馬場島発
6.26 1350m 早月尾根稜線
9.13 2224m 早月小屋着
10.10 2450m アイゼン歩行
11.28 早月尾根標高2800m
12.13 2998m 剣岳山頂着
12.38 2998m 剣岳山頂発
1.11 2050m 平蔵谷出合
3.13 2750m 剣御前小屋
3.30 2650m 立山川エントリー
3.56 1750m 立山川二股
4.26 980m 取水口
4.50 760m 馬場島着
剣山頂から滑降する事は珍しくない。しかしすべて自分の足で山頂に登り上げてワン
ディで滑降する人はまずいないだろう。成せばなる名人を誘いGWのメインイベント
にした。累積標高差は2900m、約13時間の挑戦であった。
【山域】剣岳
【場所】富山県
【日時】5月4日(木)
【コース】馬場島―早月尾根―剣岳山頂―ダイレクトルンゼ―平蔵谷出合―剣
沢―剣御前荘―立山川―馬場島
【メンバー】深沢名人と二人
【装備】フォルクルマウンテンノバート156cm,TLT,ガルモントメガライト(僕)
サロモンバース7 140cm,ディアミール,ガルモント(名人)
【天気】文句なしの快晴
湯ノ谷の感動も冷めない内に急いで僕たちは馬場島へと移動した。この日ゲートは開
き馬場島まで車で入山できた。馬場島は待ちわびた登山者の車でごった返していた。
夜パジェロで作戦会議、剣山頂には雪の緩む12時を過ぎる頃着けば良いと明日の出発
は朝4時とした。
5月4日(木)朝3時起床。今日も満天の星を見上げ否応無しにモチベーションは上
がる。今日はやるしかない。絶対成功させると誓った。
4.00 760m 馬場島発。ここからスキーで歩く。すぐに早月には取り付かない。大窓
方面の林道を進み白萩川を渡る橋付近から斜めに早月尾根1300mを目指す。これがベ
ストだ。快適な歩行でどんどん高度を上げる。猫又を横目に稜線を目指す。
6.26 1350m 早月尾根稜線。ようやく到着。雪は多く。早月尾根もスキー歩行が楽
である。尾根上には至る所テントがあった。早月尾根のスキー歩行は雪は多くてもそ
れなりに難儀である。ツボ足トレースを利用してスキーを担いでも良いがそれでは山
スキーヤーの名が廃る。あくまでもスキーヤーはスキー歩行である。
9.13 2224m 早月小屋着。ようやく到着。積雪は5m以上ありそうだ。小屋も9割
方埋まっている。ここからもガンガンスキーで進む。転けたら池ノ谷の藻くずになる。
10.10 2450m アイゼン歩行。ここからもうスキーは無理だった。厳しい雪壁が続く
ためスキーを担ぎアイゼンで進む。早月尾根の北面は雪が堅くまだガチガチで北面ト
ラバースは恐怖だった。
11.28 早月尾根標高2800m。ここで剣が圧倒的に見える。獅子頭付近は雪が堅く緊張
した。慎重に行く。ここを突破するともうすぐ山頂だ。
12.13 2998m 剣岳山頂着。やった到着だ。8時間を超す闘いだった。山頂には登山
者が多かった。しかしスキーヤーは皆無だった。先は長い長居は無用だ。
12.38 2998m 剣岳山頂発。山頂直下は最も緊張する急斜度だが、雪は緩み緊張感は
それほど無かった。名人と交互にジャンプターンでこなしていく。ギャラリーは多い
から無様な滑りはできない。ダイレクトルンゼに入るともう楽勝だがターンの
度に表面が崩れ表層雪崩となり落ちていく。巻き込まれないように慎重に滑る。
危険地帯ののどは一気に行く。あっという間に平蔵谷に合流し剣沢まで滑り込む。
1.11 2050m 平蔵谷出合。無事安全地帯に着く。さあ標高差700m登り上げればもう
登りは無い。剣沢を快調に進む。雪は多くこの辺りの小屋はかなりダメージを受けた
ようだ。
3.13 2750m 剣御前小屋。着きました。やりました。後は馬場島まで滑るだけです。
立山川はシュプールも多かった。僕たちはまだシュプールのないルンゼからエントリー
した。
3.30 2650m 立山川エントリー。快適なルンゼである。二人で自在にシュプールを
描いて一気に行く。もう大満足だ。
3.56 1750m 立山川二股。ここからは両サイドから雪が落ちてくる。休まず一気に
行こう。
4.26 980m 取水口。雪割れはまだほとんど無かった。快適にここまで滑る事ができ
た。もう安全地帯だ。ここから林道を漕ぐ。
4.50 760m 馬場島着。試練と憧れの石碑の前で記念写真だ。今日は僕たちにとって
本当の試練と憧れであった。剣岳感動を有り難う。