山の相棒

春夏秋冬季節を問わずほとんどの山行を単独で行動している僕だがこんな僕にも欠か
せない相棒が一人いや一台いる。彼とのつき合いは長いもので今年で12年目になろう
としている。丁度僕が登山を始めた時期と一致しており事実彼がいなければ僕の登山
はあり得なかったのである。

その彼とは愛車の四駆パジェロである。身長180cm,体重2300kgと見た目はごついが
実にパワフルで彼ほど頼れる存在はいない,かみさんには悪いが僕のベストパートナー
である。連休の取れない開業医が冬山を含めて北アルプスを中心に活躍するためには
如何に時間を有効に利用するかが鍵になる。

休診日一日を利用する大抵の山行のパターンは次のようになる。くたくたになって
夜7時過ぎに店じまい,晩飯は道中で食べることとし,車に荷物を詰め込んで急いで
自宅を出発する。夜中のうちに何とか登山口まで移動し急いで車中泊,翌日は日の出
前に起床し登山を開始。わき目もふらずに山に登り,山頂でしばしの休憩の後,また
もやダッシュで下山。なるべくその日の午前中には帰宅し,午後からは開放病院の往
診に出ると言った実にせわしない一日になってしまう。

このような行動パターンを実践するには車での車中泊は欠かせないのである。幸い車
の座席を倒してフラットにすれば大人二人が眠れるスペースは十分に確保できるため
自由自在に車で移動し止まったところが別荘となるわけである。車の中にはタンクに
詰めた水がありおまけに山用のガスコンロがあれば火も使え何不自由のない生活が送
れる。窓もすべてカーテンで仕切れば完璧にプライバシーは保たれるのである。年
間20から30泊は車中泊をしている計算になる。

普段から幹線道路の暴走族の爆音に悩まされている僕としては山中深く誰もいない,
音もしない,月明かりしかないそのような場所に車を止めて一人ゆっくり流れる時間
を過ごすのが好きである。

ただし最近は車中で暮らすホームレスも珍しくないので注意が必要である。里に近い
場所だとこれまでも何度か就寝中に警察官の職務質問にあったりして職業はと訪ねら
れるときが一番つらいのである。

どんな山行でも彼と一緒だとこれほど心強いものはない,ある年冬の八が岳で大雪に
見舞われてしまい下山してびっくり車が半分雪に埋まっていた。こんな時でも彼なら
楽々脱出可能であった。鹿児島の宮之浦岳に山登りに行ったときはほぼ15時間ぶっ通
しで1500kmちかく走らせたこともあった。アイスバーンの路面で普通車がスリップし
て彼に突っ込んできたこともあった。そんなときでも相手は大破したが彼はほぼ無傷
であった。

そんな彼も最近は年のせいか随分足回りは悪くなり,たくさん食べる割には走りが悪
くなってきた。それでも青春を共にしてきた彼と別れる気はなく25万km走り続けた今
でも彼の寿命がつきて走れなくなるまで一緒に山登りを続けようと考えている。

神奈川県丹沢山登山口の河原にて

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