単独行について

 まず単独行は危険かと言うことですが,僕は必ずしもそうは思いません。以前メー
ルで単独行は危険だから止めなさいとの意見が多く寄せられていましたが,僕は必ず
しもそうは思っていませんでした。僕は30歳を過ぎてから山を始めましたが,これま
で山岳部や山岳会に属したことはありませんでした。これからも入りたいとは思いま
せん(入れませんと言う方がよいかも知れません)。ただし文登研からは多くのことを
学び,多くの人と仲良くなり,これからも活動をともにしていきたいと考えています。

今シーズンは毛勝の事故,大日岳の事故と身近に事故が続きましたが,一番痛感した
ことはやはり人間の力は自然にはかなわないと言うことです。単独だろうが集団だろ
うが,どれだけ優秀なパートナーが存在しようが結局自然にはかなわず,そうした意
味で自然に対しては常に謙虚であるべきですし,自分の身は自分で守るしかないと思
います。

どれほど行き慣れた山だろうが,どれだけ大勢の人数で行こうと自然の力は遙かに人
間の想像を超えています。大日岳の事故現場に事故後行ってみて改めてその感を強く
しました。

僕の場合単独行を続けるのにはそれなりの理由があります。
仕事の面や時間の都合など人とはあわせにくいと言う点も大きな理由です。
自宅を出た後高速道路上で呼び出しがかかって引き返すこともよくあります。

単独行の場合パートナーがいないときに比べてある面では危険がありますが(遭難時
の救助)ある面ではメリットもあります。個々人によってその天秤の傾きは異なります。

1,単独の場合自分しか頼れないため行動が非常に慎重になり周囲の状況もよりとぎ
すまされた五感で感じることが出来ます。逆にパートナーや集団の一員だとどうして
も人に頼る甘えが出て周囲の状況判断が鈍くなってしまいます。またパートナーに対
する配慮などから本来しなくても良い心配までしなくてはならず,より的確な安全度
の判断が落ちます。

2,単独の場合危険地帯をよりスピーディーに通過できます。僕の場合スピードには
かなり自信があり,危険地帯は休むことなく一気に通過するようにしています。パー
トナーが増えれば増えるほど危険地帯の滞在時間が長くなるためどうしてもリスクが
増えてしまいます。今年行った正月の飛騨沢滑降などはその例です。

3,僕には僕の山行スタイルがあり(前夜発早朝日帰り),行きたい山があります。さ
らに面倒なことを考えないで自然を一人で楽しみたいという考えもあります。山行に
よってはかなりエクストリームになりかなりの体力と技術を要することもあります。
その様な場所へはやはりパートナーを連れていくことは難しいです。自分と同じくら
いの体力や技術がある場合は別ですが。このMLでもエクストリームな山行を行ってい
る方がおられますが,その様な場所はやはりパートナーは連れて行きにくいと思います。

以上のような観点から単独行はある面では危険が増えますが,ある面では危険を少な
くできます。この問題は単独行者個々人の能力の差が最も大きく関与していると思い
ます。一概に単独行はイカンと言うのはどうかと思います。

またパートナーと行く以上そのパートナーに対してすべて責任を負うのが当たり前で
あり,時としては命がけでパートナーを救助したり,ともに命を落としたりすること
もあるかも知れません。逆にその様な気持ちになれない方とはやはりともにパートナ
ーを組むことは無理です。パートナーと山に行くと言うことは相手に対してそれだけ
大きな責任と義務が伴うと思います。

日本でも8000m峰に単独で立ち向かっている山野井さんや戸高さん,北村さんなどと
お話をしたり,講演会を聞いたりして彼らのポリシーを伺いましたが,皆さんそれな
りに納得できるポリシーを持っておられました。(勿論僕なんかとレベルは全然違い
ますが)

僕は自分は遭難することはないなんて自信過剰な持ち主ではありません。仮に単独で
山スキーへ行って自然に負けて,死んだとしてもそれはそれで仕方のないことだと理
解していますし,山スキーはある意味では命がけのスポーツであると理解した上で可
能な限りリスクを減らす為にはどうしたらよいかと言うことをおのおのの判断で決め
るべき事だと思います。パートナーを持つのも良いし,山岳会に入るのも良いし,装
備に金をかけるのも良いでしょう。

単独で山スキーに行く場合はそれなりの覚悟と技術,装備,体力が必要なのは言うま
でもありません。そのあたりのことを個々人で考えて自分にあった山行スタイルを選
べばよいのではないかと思います。

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