冬の白山登山

白山は石川県を代表する山であり,石川県人なら登山に興味がない人でも一度は登頂
した経験があるに違いない。僕自身も石川県に生まれたからにはと言う軽いのりで高
校生の時に友人と二人で初めての登頂を経験した。富山県では立山が県を代表する山
であり,学校の行事として一度は登頂する機会があると聞いたことがある。金沢平野
の近郊に立てばいつでも白く輝く白山が遠くに眺められ,我々の祖先がその姿に畏敬
の念を抱き,深く信仰の対象にしたことも肯けられる。

駿河の富士,越中の立山と並んで加賀の白山は古くから日本三名山と崇められ人々の
生活とも深く結びついてきた。僕の医院の三階からも晴れた日には白山が南の方向に
眺められ白山が見える日はなぜかほっとする。

白山の一般的な登山口は標高1230mの別当出合であり,此処を起点にするなら残りは
標高差1500mであり頑張れば一般の人でも日帰りが出来る。しかしながら雪深い冬に
白山を登頂しようとすれば標高500mの白峰が起点となり,ここからだと標高差
で2200mさらに余分に別当出合まで約20kmの道のりを人力で進まなければならない。
しかも別当出合からも深い雪をラッセルしながら厳しい登行が山頂まで続く。

ここ数年毎年山スキーを利用して3月の雪深い時期に単独で白山の日帰り山行を行っ
ているが,この時期の白山登頂は厳しいが静かで実に神秘的である。
この時期運が良ければ白峰から市ノ瀬まである程度除雪されていることもあり自転車
が一部使えるが,たいていは市ノ瀬のかなり手前で除雪は終わっている。今年の3月
も例年のごとく夜中の2時に白峰を出発し山スキーで日帰り山行を行った。運良く白
峰から市ノ瀬まで自転車が使えたが,それ以後はずっと雪の上を歩かなければならな
かった。別当出合ではまだ1m以上の雪が残り深く雪に閉ざされていた。ここから尾根
に取付いて真っ白な雪原をスキーを利用して登り詰めていく。

標高2000m付近にある甚の助小屋はすっぽり完全に雪に埋まっていた。この辺りで
は5m以上の積雪があった。ここから上は完全に凍り付いたアイスバーンの世界となり
山頂までピッケルを握り,アイゼンを効かせながらの厳しい登りである。弥陀ヶ原か
ら上では冬の強い季節風が吹き付け,シュカブラと呼ばれる雪紋が美しい。雪に埋も
れた室堂を横目に山頂に到達するとそこは夏とはまるっきり違うすべてが凍り付いた
すざまじい景色が広がっていた。

この時期誰もいない山頂で一人きりの展望を味わうのは格別である。360度真っ白の
世界,この世の世界とは思えない景観である。十分展望を楽しめばいよいよ山頂から
スキーにて市ノ瀬までのロングクルージングである。半日以上もかけて登った道のり
だがスキーで下ればわずか1時間少々である。往復12時間近くかかって白峰までくた
くたになってたどり着き今年も厳しい冬の白山登山が終わった。冬の白山に登る気力
と体力がある間は仕事もがんばれそうである。

冬の白山山頂

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