霞沢岳(2624m) 厳冬期日帰り滑走
上高地から直にそびえ立つ霞沢岳,標高も2600mを越し穂高連峰にも決してひけを取らない。
夏でも日帰りが困難なこの山に厳冬期日帰りで挑戦した。予想通り壮絶な雪との闘いであった。
しかしスキーがあればこの難行も可能であった。かなりエクストリームな山行であった。
雪の少ない尾根上は藪が残り僕たちは急勾配の厳しい登行を余儀なくされた。
木々に捕まり強引に体を持ち上げるモンキーラッセルの連続であった。
標高2400m
振り返ると焼岳,その左に白山が輝いていた。尾根は2400m付近からやせだし
右手に鋭い雪庇の連続となる。落ちたら最後まず助からない。
標高2500mにて
この辺りが核心部である。正面に岩稜帯その奥に見えるのは2600m付近ピーク,
山頂はまだまだ先で見えない。
2500m核心部
ナイフリッジ,雪庇,やせ尾根が続く核心部分を振り返る。
危険地帯は僕が先頭でルートを探した。尾根の左右どちらも急峻な谷で落ちたら終わり。
標高2550mにて
2500mから正面に見えた岩稜帯はさけトラバースしながらスキー歩行することにした。
標高2600m
ようやく山頂が見えてきた。2500mからが長かった。所々這松が顔を出す。
山頂直下にて
山頂に近づくにつれ雪面は堅くクラストし,シュカブラが美しい。
山頂の二人
穂高をバックに今日も気合い入れまくりであった。
山頂の展望
なんと言っても穂高の展望はここにまさる場所なし。
十石山
山頂から十石山に続く稜線。
約50度急斜面
稜線から最大斜度約50度の急斜面に飛び込んでみた。
ジャンクション2050mからの沢筋
この沢筋がハイライトだった。林道まで標高差500mの無木立のパウダーであった。
消えた深澤君
あまりのパウダーで雪炎が舞い上がり完全に消えてしまった。忍者もびっくり。
どこまでも快適
華麗なシュプールを残し自己陶酔に浸る山スキー馬鹿たち。
ここから見上げる焼岳は圧巻でフィナーレを祝ってくれた。
今回のコース
山行記録2004年1月12日(月)
上高地から直にそそり立つ霞沢岳,厳冬期は遙かなるラッセルと勾配のきつい尾根が
待ち受ける。この山の山頂からスキーで滑走すると言う夢がついに現実となった。山
梨の最強のパートナー深澤君と共に11時間を超す雪と藪と自分との闘いであった。
【山域】霞沢岳 2646m
【場所】長野県
【日時】本日 1月12日(月)
【コース】坂巻温泉手前路肩−釜トンネル−霞沢岳西尾根−山頂−2050m尾根ジャン
クションから沢の滑走
【メンバー】僕・深澤君
【装備】サロモン・Verse7 150cm,ディアミール3,ノルディカTR12(僕)
サロモンポケロケ 175cm,ディアミール2,ローバーのストラクチュラ(深
沢君)
【天気】快晴
1.11(日)僕にとっては2連休初日,朝からたまった雑務に追われていた。午後の天
気予報で月曜は高気圧が日本列島のど真ん中にきそうだ。これは行くしかあるまい,
深澤君に携帯すると妙高でバイトをしていた。そんなことやっている場合ではないだ
ろうとすぐに釜トンネル付近に移動するようにと連絡した。知らぬが仏,以前からの
念願だった厳冬期霞沢岳日帰り滑走に誘い出した。因みに彼は初めてこの山の名を聞
いたようで場所すら理解していなかった。
午後3時過ぎに金沢を出た僕は夜8時に釜トンネル付近で妙高から来た深澤君と落ち合っ
た。釜トン付近は駐車禁止であり,ここから下った坂巻温泉手前の路肩に駐車するこ
とにした。
早速僕のパジェロに乗り込んでもらい明日の打ち合わせをしながら酒を交わした。霞
沢岳の名を初めて聞いた彼は先日の黒姫や白鳥に比べれば楽勝でしょうと怖いもの知
らずであった。僕は以前秋に一度だけ上高地から八衛門沢をつめて日帰りしたことが
あったが,厳冬期はもちろん初めてであった。地図を見れば山頂から西に派生するき
つい勾配の尾根があった。行くならこの尾根の利用しかないだろう。しかしスキーが
使えるかどうかは不安だった。でも行けるだろう。今日は早めの夜9時に就寝とした。
1.12(月)朝2時半起床。外気温は−12度,車内は−1度だった。出発は3時半と前夜
決めていた。今日も厳しい山行になるだろう。急いでカップ麺を食べた。さあ今日も
気合い入れまくりである。
3.33 1250m 坂巻温泉付近路肩発。本当は旧安房林道入り口に止めたかったが大型
バスが止まっており願いは叶わなかった。スキーを担いでハイペースで歩き出す。し
ばらく行くと深澤君がストックを忘れたことに気づき急いで取りに帰る。また合流し
て歩き出してしばらく今度はピッケルを忘れたことに気づく。実は先日の黒姫でかかっ
た風邪が尾を引いて熱があるらしかった。でも僕は言った。風邪は山で治してこそ一
人前であると。これって藪医者?
3.52 1300m 釜トンネル入り口。ようやく釜トンだ。登山届けを出し部分的に凍っ
たトンネルを滑らないように歩く。
4.21 1455m 釜トンネル出口。ここからは路面に雪があるためスキー歩行とした。
真っ暗な林道を慎重に進み西尾根取付を探す。ふむふむ,下堀沢の対岸だからこの辺
りであろう。さあ行きますよ。
4.37 1500m 霞沢岳西尾根取り付き。いきなりの急登,尾根上は雪はそれほど多く
なく,いつもの如く藪ラッセルであった。もう慣れたものである。先頭を交互に代わ
りドンドン高度を上げる。トレースはもちろんなかった。それにしても勾配のきつい
尾根である。藪に妨げられてうまくジグを切れない僕たちは木の枝を両手でつかみ強
引に体を持ち上げる名付けてモンキーラッセル(ただ猿のようだと言うだけ)を繰り
返した。厳しいモンキーラッセルは西尾根のジャンクションまで続いた。今日も激し
いなとお互い顔を見合わせてあきれ顔。
7.52 2050m 西尾根ジャンクション。もう辺りも明るく穂高岳には朝陽も輝いてい
た。帰りはこのジャンクションから一気に沢を下るのが楽しそうだなとお互い納得し
あった。
しかしここからも延々と厳しい登りが続いた。この尾根至る所に大岩と倒木が行く手
を阻みそのたびに巻くのだがその都度深く厳しいモンキーラッセルの繰り返しであっ
た。標高も2400mを過ぎると右手には雪庇,左手には深い谷おまけに岩稜のやせ尾根
とこれでもかこれでもかと難題が降りかかってくる。ビビルようなナイフリッジも出
てきたりしてロープがあった方が良かったなと思う始末。それでも僕たちの高見を目
指す厳しいスキー登行は続く。
標高2500m辺りからは完全に埋まっていないハイマツが出てきた。這松に足を取られ
ながらも山頂はまだまだ見えない。十石山や焼岳が下に見えるようになるとようやく
山頂が近づいてきた。
11.46 2646m 霞沢岳山頂着。万歳,ようやく着きましたか。出発から実に8時間を
過ぎていた。もうくたくたであった。山頂は360度素晴らしい展望。眼前に穂高,遠
くに白山,焼岳,乗鞍といつまでも見ていたい気分であった。さて記念写真を撮った
ら行きますか。
12.24 2646m 霞沢岳山頂発。山頂からしばらくは堅い斜面であった。部分的に50度
近くのパウダー斜面に飛び込んだ。最高ですね。登りで苦労したやせ尾根も下りは北
面のパウダー斜面をドンドン斜滑降,それにしてもよくまあこんな急な尾根をスキー
で登ったものである。下りの途中木の枝にストックを取られ折れてしまった。窮すれ
ば通ず,折れたストックの先端を逆さに差し込んでテープでぐるぐる巻き,どうだ素
晴らしい機転でしょう。何もなかったようにまた滑り出す。
1.39 2050m 西尾根ジャンクション。ふーっ,ようやくジャンクションここからが
今回の真骨頂である。日の当たらない無木立の沢筋を一気に行く。素晴らしい雪質,
目から鱗が落ちるパウダーであった。全身にパウダーを浴びながら標高差500mの最高
の沢筋であった。僕たちは鳥になったように宙に舞い続けた。写真を取り合い粉を舞
いあげ続ければもうすぐフィナーレであった。
2.13 1500m 霞沢岳西尾根取り付き付近林道。ワンシーズンに一度あるかないかの
最高の斜面であった。お互い泣きたくなるほど満足した。後は一気に林道を滑り降り
る。
2.30 1300m 釜トンネル入り口。ここでスキーを担ぎ早足で一気に下った。
2.49 1250m 坂巻温泉付近路肩駐車着。しめて11時間16分,今日も完全燃焼して燃
え尽きてしまった。
自宅に帰って体重計に乗ると何と今日1日で5kgの体重減少。これがすべてを物語って
いた。今シーズンから使っている150cmのVerse7今日も素晴らしい浮きを見せてくれ
ました。短いことのデメリットは今のところ殆ど感じていません。メリットは多いで
すが。今日もポケロケとそれほど違わない滑りでした。ようやくこの板にも慣れてき
たようです。
HOMEへ戻る