厳冬期,羅臼岳日帰り滑降

 厳冬期の羅臼岳の日帰りスキー滑降はほとんど記録は無いと思われる,ウトロから知床峠を経て

羅臼岳まで往復約30kmの12時間の激しい山行であった。

赤が今回たどったコース,ウトロ側ゲートから標高差約1500m,往復約30km

知床横断道から見る羅臼岳

冬期閉鎖中の知床横断道ゲートから知床峠までは片道約10kmのつらいラッセルが続く。

横断道から左手に羅臼岳が見えたが上部は濃い雲に隠れその全容を見る事はできなかった。

知床峠

3時間かけてようやく知床峠標高730mに到着した。ここから山頂まで直線距離で約4km,山頂まで

強風と氷との闘いが続く。

標高900m

羅臼岳は円錐状の山,強風を避けるため南東斜面から山頂を目指す。正面は海別岳方面。

ガスの中

天候は今一で中腹以上は濃い雲がたれ込めていた。標高1000mを超えるとまともに強風を

受けるようになり雪面も氷化しはじめた。

眼下に知床峠が

登るにつれ眼下に知床峠が見渡せる。

海別岳,斜里岳

遥か南西方向に海別岳,斜里岳が続く。

スキーを担ぐ

標高1200mでもうスキーは使えなくなりアイゼンに履き替えスキーを担ぐ,

ここから山頂まで強風との闘いであった。

登頂後下山開始

山頂は深い雲に隠れ視界はまるで無く,強風で立っていられなかった。時間も遅く急いで

下山を開始した。写真は標高1500m辺りを下山中。

スキー滑降開始

シュカブラのハイ松帯を慎重に下って行く。

ようやく視界が

ハイ松帯の滑りは楽しくはないがそれでも充実感に浸って下って行く。

ジャンプ

氷化した斜面をジャンプターンの連続で下って行く。

ようやく安全地帯に

標高800mまで下りようやく安全地帯へ

知床峠付近まで戻る

知床峠から羅臼岳を振り返るがまだ雲ははれていなかった。

ようやく全貌が

知床横断道下山中ようやく羅臼岳の全貌が見えた。

記念写真

もうクタクタの二人であった。今日も完全燃焼。

夕映えの羅臼岳

夕映えの羅臼岳が僕達を見送ってくれた。

落日間近

羅臼岳ありがとう。

山行記録2005年1月2日(日)

【山域】羅臼岳 1661m
【場所】知床半島
【日時】1月2日(日)
【コース】ウトロ温泉発―知床横断道―知床峠―羅臼岳往復
【メンバー】僕・深澤君
【装備】サロモン・ポケロケ 165cm,ディアミール3,TR12(僕)   
    サロモン・ポケロケ 175cm,ディアミール2,LWストラクチュアー(深沢君)
【天気】曇り

この時期知床横断道は通行止めであり、ウトロから峠まで約10kmのラッセルのおまけ
がある。峠から山頂まで直線距離で約4kmこの時期の羅臼では道内でも有数の強風が
吹き荒れるという。今日は風との闘いである。

5.06 150m 知床横断道路閉鎖ゲート発。山頂まで標高差1500mさあがんばっていこ
う。峠からの読図は明るくならないと地形が読めないため少し遅めのスタートであっ
た。

行けども行けども一向に峠に着く気配はない。そのうち足に靴擦れが出来はじめての
つらい道中になる。これはまずいとペースを落とすが深沢君はどんどん先に進んでい
きあっという間に見えなくなってしまう。もう勘弁して欲しいと思う頃出発から約3
時間を経てようやく峠が見えてきた。

8.07 780m 知床峠着。そこそこのペースではあったがこの時期の10kmの道のりは楽
ではなかった。残念ながら羅臼岳中腹以上は厚い雲に覆われておりその全貌を垣間見
ることはできなかった。この時期の登頂の成否は強風の克服にあると感じていた僕は
円錐形の形をしたこの山の南東斜面から山頂を目指すことにした。

知床峠からこの山を右回りで黙々と登り詰め岩場を避けながら登れそうなルンゼを詰
めていく。やはり強風のせいで登るにつれ雪は少なめでカチカチの氷の斜面に変化し
ていった。高度が上がりもうスキーは限界だと感じた僕たちは潔くアイゼン歩行にし
てスキーを担ぐことにした。

その作業が終わる頃深沢君が足元にプラスチックの欠片が落ちているのを発見。もし
かしてと板を見たら彼のディアミールが酷使に耐えかねて割れてしまっていた。事の
事態の大きさにしばし呆然とした彼であったが、こんな事で敗退したくない僕たちは
とにかく知恵を絞り補修をして危機を乗り切ることにした。この氷化した急なルンゼ
をスキー無しで下る自信は無いという彼であった。

10.46 1300m スキー担ぎアイゼン歩行開始。次々に現れる嫌らしい難所を何とか
こなし、高見を目指すが強風でサングラスは凍り付き目には容赦のない雪炎の嵐と前
進は過酷度を増していく。ついに強風でスキーを担ぐことはできなくなりデポを決め
た。

11.30 1500m スキーデポ。僕たちを支えていたのは山頂に立ちたいというモチベー
ションだけであった。芦別と違いホワイトアウトでも高見を目指せば山頂には着くし
山頂で方向をあわせれば無事知床峠には戻れる自信はあったのでとにかく上を目指し
た。帰りの方向を見失わないように所々でハイ松をほじくり出して目標とした。これ
は大いに助かった。

登るにつれますます風は厳しくなりもう這って進むしかなかった。高度計はも
う1700mを越しすでに山頂が近いことを示唆している。かすかにガスが晴れた瞬間、
ついに山頂が見え僕たちはようやく登頂に成功した。

12.43 1661m 羅臼岳山頂着。強風とガスの中もう写真を撮るどころでもなく一刻も
早く降りたかった。さあ帰りも長いし暗くならない内に下ろう。日は短い。

12.48 1661m 羅臼岳山頂発。ガスの中ほじくったハイ松を頼りに進路を見極め降り
ていった。あとは無事に下山するだけである。

1.16 1500m スキーデポ,滑降開始。ようやくガスの中スキーを発見。もう大丈夫で
ある。無事に帰れるだろう。氷化したルンゼを慎重にターンしながら下っていく。時
折ガスがはれ峠が見えた。凍り付いたハイ松帯や厳しい急なルンゼを下って標高
も1200m辺りまで落ちるとあとは最高のパウダーが待っていた。

耐えてがんばって良かった。ようやく北海道に来た甲斐があったと実感した。

2.31 780m 知床峠着。これでもう安全地帯である。この頃ようやくガスも晴れ渡り
山頂が神秘的な輝きを放って僕たちを見送ってくれた。

夕焼けに染まる真っ赤な羅臼岳の写真を撮るために何度も立ち止まって感慨にふけっ
た。

4.33 150m 知床横断道路閉鎖ゲート着。ようやくゲートが見えた。約12時間に及ぶ
自分と山との闘いに完全燃焼した僕たちであった。

下山後ウトロで温泉につかりそのまま徹夜で車を走らせ小樽に早朝到着して仮眠をし
た後朝10時発のフェリーに乗り込み北海道山スキー三昧は終わった。


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