日本海から剣岳往復

毎年エベレストには大勢の登山者が登るが,シェルパに荷物を持たせて案内してもら
い酸素を付けかつ標高の高いベースキャンプから登るならそれほど対した偉業とは思
わない。暇と金だけの問題で僕でもできそうである。しかし独力でベンガル湾の海か
ら自転車と徒歩でエベレスト山頂まで人力で登った青年の記録には大いに感動を覚え
た。これが本当の意味での世界最高峰の登頂だと。

僕が大好きな剣岳2998mに関してもバスで標高2400mの室堂まで上げてもらいそこから
山頂を目指す登山は釈然としない。愛する剣岳を登るならやはり日本海から登って始
めてその価値が分かるというものである。標高差も約3000mとちょうど区切りがよい。

日本海からの剣岳往復。この山行は以前から計画していたが,なかなか実行する機会
がなかった。念願は今年の9月7日に実行することができた。

この計画の最大のポイントは早月川河口から馬場島までの自転車である。暗闇の町中
の自転車は怖いし,このあたり土地勘がないので道がよく分からず無事馬場島までた
どり着けるかどうかである。目標タイムは12時間であった。

9月6日(土)この日メチャメチャ仕事が忙しく,金沢を出たのは夜8時過ぎであった。
一路魚津へ,早月川河口には遊園地のミラージュランドがあり,大きな観覧車が目印
になる。すぐ裏が日本海であった。自転車の整備を終え車よけの点滅ライトを取り付
けた。これなら酔っぱらいも気が付いてくれるでしょう。ちょっと横になって深夜1
時を出発時間とした。

9月7日(日)深夜1.00に海抜0mの日本海を自転車で出発した。ここから馬場島まで距
離28km,標高差800m,ひたすら登りであった。馬場島までの道ははっきり分からず右
往左往しながら霧雨に打たれながら必死にペダルを漕いだ。最初の関門であった。

深夜3.40 ようやく標高760mの番場島に到着した。既に足はパンパンであった。雨具
をしまいここからいよいよ標高差2200mの早月尾根登山である。あんまりペースを上
げると途中でばてかねないのでマイペースで歩くことにした。案の定途中から左足大
腿部が痙攣しはじめたが何とか無難に6.53 標高 2155mの早月小屋に到着。既に空は
晴れ渡り周囲の山並みが美しい。ここから剣岳山頂まで残り標高差約800m頑張るしか
ないでしょう。まだまだ気力は充実していた。

前泊者を何人も追い越しついに8.51 標高2998m の剣岳山頂に到着した。視界は良く
遥か穂高連峰や白山まで見渡せる。日本海から7時間51分。まずまずのタイムであっ
た。さて何とか12時間の壁は切れるか。山頂で記念写真をバチバチ撮ってさあ行きま
すか。

早月尾根は標高差はきついがよく整備が行き届き本当に歩きやすい,ダブルストック
の助けを借りてドンドン標高は落ちる。山頂から3時間少々でようやく番場島に到着。
もう着いたも同然だ。ここから自転車にまたがりいざ日本海へ。最後の気力を振り絞
り必死にペダルを漕いでいく。しかし海からの強い向かい風が容赦なく吹き付け足が
とても重い。

やった,海の臭いがする。ようやく海が見えてきた。ゴールも近い,1.33ようやく日
本海に到着。今日は能登半島もよく見えた。出発から実に12時間半。12時間は切れな
かったが初挑戦にしてはまずまずのタイムだ。日本海をバックに写真を撮りしみじみ
感慨に浸った。


馬場島にて

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