巨木

僕の登山の楽しみの一つに山中での巨木との出会いがある。山での代表的な巨木と言
えば杉やブナ,桂の木であろう。重荷を背負い,険しい山道を歩いているときでもブ
ナや杉,岳樺などの木々の中で森林浴するだけで疲れはほぐされ,ストレスは解消さ
れなぜか安らぎを覚えるのは山をやる人間なら誰でも感じることだろう。山行中樹
齢1000年を越え,幹周りが10mを越すような巨木に出会うととても特をしたような気
分になるから不思議なものである。自分が生まれる遙か太古の昔から誰にもその存在
をじゃまされることなく同じ場所で何百年という風雪に耐え,此処まで大きく育った
巨木に対し時には畏敬の念さえ起きてしまう。この先自分が死んでからも更に何百年
も生き続けることを考えれば益々感慨深い。巨木の歴史を考えると人の人生80年なん
て本当にちっぽけなものである。

こうした巨木は高く伸びるほど落雷や台風の影響を受けやすくなるから大きくなれば
なるほどますます生存が難しくなる。幹周りが太い割に高さがさほどでもない場合は
そのほとんどが落雷や台風の影響を受けて木の先端が折れているからすぐ分かる。出
る杭は打たれると言うが自然の猛威にうたれてもうたれても成長しようとする巨木に
はその生命力の強さを感じる。

過去に出会った巨木の中で最大のものは岐阜県石徹白の銚子ガ峰の登山口近くに存在
した石徹白の大杉である。国の特別天然記念物にも指定された樹齢1800年,幹周
り18mと言う巨木であった。大地に根を張ったそのどっしりとした他を寄せ付けない
圧倒的なその巨大な存在感に僕は驚いた。と同時にこの素晴らしい巨木を後世にまで
大切に守り続けていかなければならないと痛感した。また屋久島の宮之浦岳を登山し
た時には縄文杉に驚かせられた。屋久島は台風の通り道に存在するため巨木はほとん
どが上部を折られていたが,その幹の太さには驚かせられた。九州福岡県の霊山英彦
山にある鬼杉も樹齢1200年のそれは立派な杉であった。

今僕が最も関心を寄せているのは,最近白山山系の山奥で発見された桂の巨木である。
市ノ瀬から藪を漕いで沢を数本渡って行かなければならない山奥に存在するため長ら
く人が目にすることができなかったという。幹周りは15mを越し,樹齢1000年は越え
ているだろうと思われる巨木だという。無雪期は難しいが,春先になって藪が雪に覆
われたら是非とも会いに行きたいと今から楽しみにしている。


石徹白の大杉

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