医王山(郷土の山)

医王山は金沢市民にとって最も親しみやすい山であろう。白兀山896mと奥医王山939m
の二つの山からなり左右対称のこの山並みは金沢平野のどこからでも眺めることがで
きる。白山と並んで石川県の名山と言っても過言ではないであろう。もちろん日
本200名山にも名を連ねている。僕自身最も数多く登山を楽しんだ山と言えばやはり
この医王山であろう。まだ幼い幼稚園生のころ父親に連れられたのが最初の登山であっ
た。下り坂をはしゃいで走り下り,加速がついて止まることができなくなり砂利道で
大転倒し全身を擦りむいたことが昨日のことのように思い出される。

この山の最もポピュラーな楽しみ方と言えば見上峠から西尾平,覗,大沼,鳶岩を経
由して白禿山頂に至り眼下に広がる金沢平野や砺波平野を楽しんで下る周遊コースで
あろう。医王山のシンボルでもある鳶岩に立つとその下は絶壁であり此処で逆立ちす
る猛者もいると聴かされてゾクゾクしたものである。

夏は海に近い自宅から自転車で夕霧峠までよくトレーニングに出かける。標高差
約900m,片道約20kmを大体2時間くらいで駆け上がるのだが,帰りに一気に自転車で
下る快感がたまらない。冬は山スキーである。見上峠からトレースのない林道をスキー
を駆使して雪を掻き分け山頂に至る。時には4m近い積雪で山頂の展望台がすっぽり埋
まっていることも度々であった。山頂から雪に埋まった樹林帯を雪を舞いながら滑り
降りるのは最高の快楽である。誰もいない冬の医王山は特に自然と一体になれるから
好きである。

冬医王山に行くときは大抵天気が荒れていることが多い,と言うのは悪天候でも医王
山なら遭難することもないし丁度トレーニングには最適だからである。と言っても冬
山を甘く見てはいけない。ある冬の日,登り始めた早朝はまだ曇り空で穏やかであっ
たが,徐々に天候は悪化して嵐になったことがあった。僕は早々に山頂からスキーで
滑り降りて引き返したが嵐の中を山に向かう単独の登山者とすれ違った。大丈夫かと
心配しながらすれ違ったのだが,翌朝の新聞で登山者が一人遭難したことを知った。
その後例の登山者が山頂手前でホワイトアウトに道を失い凍死しているのが発見され
たと新聞で報じられていた。冬山は初めての体験だったと言うことであった。

身近な山とは言え冬山は決して侮ってはいけないとあらためて自戒したものだった。
今日も自宅付近から医王山を仰ぐことができるがこれからも永遠に金沢市民の憩いの
山として存在し続けることであろう。



冬の医王山

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