夫婦登山

かみさんと学生結婚して今年ではや20年がたとうとしている。うちには4人の男の
子がいて幼い頃から山に連れ出していたが、かみさんだけはどういう訳か山に連れて
行ったことは一度もなかった。ずっと子育てに忙しかったことも一因だが、僕が実践
してきたような厳しい山行はとてもじゃないが女性には無理だと思っていた。また無
理に誘って怪我でもされたら大変だし、自分から本当に山を始めたいと思わない限り
ただのつらいだけのスポーツに終わる可能性が高いと思っていた。

ところが今年になって初めて自分も山登りを始めたいと自ら言い出した。白山にも日
帰りで登ってみたいとも言った。僕はどうするか迷ったが“来る者は拒まず去る者は
追わず”である。本気になって山を始めたいと言う限りは協力せざるを得ないかと山
に同伴させることにした。

早速登山店で革靴を始め山道具一式を買いそろえることにした。大枚をはたいて道具
を揃えたが一度限りでもうやめたいとでも言われたら大損だとも思った。

かみさんの初挑戦は五箇山の人形山であった。標高差で1000mを超すなかなか初
心者にはきつい山であったが、意外にあっさり登り切って無事下山した。もう懲りた
かと問うとまた登りたいと言うではないか、第二弾は大猫山、第三弾は大笠山とレベ
ルアップしながらかなりハードな山ばかり立て続けに連れて行くことにした。いわゆ
るショック療法である。最初につらい目に遭っておけば以後そこそこの苦難にも耐え
得るだろうし山とは決して甘くはないスポーツであることを知らしめようとも思った。

僕の鬼コーチぶりはそれからも続いた。第4弾は赤谷山と標高差1500mあまりの
厳しい玄人向きの山であった。かみさんは11時間かけてぼろぼろになりながらも登
り切った。そしてついに6度目の登山で白山を岐阜の平瀬道から日帰りすることに成
功した。朝5時に登山口を出て午後1時に下山するという予想よりも早い行程であっ
た。やればできる鬼の目にも涙であった。

かみさんは今年から山を始めた超初心者であったが、鬼コーチの洗礼を受け何とかいっ
ぱしの登山者になったようである。山を始めてから体重も3kg減ったと喜んでおり、
なかなかこの試練を享受しているかのようであった。山は確かにつらいがその先にす
ばらしい景色や高山植物が歓待してくれる。それにもまして自然の中で思いっきり汗
をかくことのすばらしさを知ったようである。

僕自身11月から6月は山スキーで我が道を突っ走っていることもありオフシーズン
くらいは罪滅ぼしをするのも仕方がないかと最近はあきらめの境地に入っている。



大猫山山頂

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