乙妻山北東斜面(2318m) 長野県

2年前の同時期はじめてこのルートを訪れた時あまりの素晴らしい斜面に深く感動した。

静寂さ,壮大さ,奥深さどれをとっても一級の斜面である。出合から稜線まで1000m

弱の一枚斜面でありデブリや雪崩のない真っ新の斜面である。これこそ山スキーヤー

の聖地と言っても過言ではないだろう。

登山口大橋

上信越道信濃町インター下車,戸隠へ向かうこと30分,戸隠手前の大橋が登山口である。

常に車数台分除雪されている。標高1140mである。日帰りはかなりきついので自分の体力と

相談して一泊が望ましいだろう。この場合北東斜面出合付近が幕営地点になる。

林道

しばらくは平坦な林道を黒姫方面に進む。進むこと約2kmで分岐となる。この辺りで約1m50cm

の積雪があった。

標高1280m分岐

標高1280m辺りが林道分岐二股である。黒姫は右。乙妻は左である。進むこと10分で目指す尾根が見えてくる。


佐渡山南鞍部と取り付き尾根

写真最後方右に目指す鞍部が見える。取り付き尾根はその手前である。鞍部尾根から本格的な登りである。

疎林の快適な登りが鞍部まで続く。

佐渡山南鞍部標高1580m

この鞍部はブナの原生林が茂りとても感じのよいところだ。高妻方面は朝陽で輝いていた。

ここでシールを外し佐渡山西面をなるべく高度を落とさないように出来れば北東斜面出合付近まで下ろう。

出合少し手前で再びシールを履き川を渡って林道沿いに標高1380m北東斜面出合を目指す。

北東斜面出合の緩斜面

緩斜面の登りがしばらく続きしばらくで正面に乙妻山北東斜面全容が見える。乙妻山も見える。

斜面は真っ新な標高差約900mの一枚斜面だ。人間社会とは縁のない原始的な臭いのする静寂に支配された大斜面

である。

標高1500m斜面下部

一泊の場合この辺りで幕営することになる。雪洞に適した斜面も多い。さあ頑張って大斜面を登りきろう。

斜面中部からの景観

振り返れば写真の黒姫山や妙高山が美しい。標高が上がるにつれ火打や焼山も姿を現すだろう。

斜面中部の岳樺

この斜面には青空と純白の斜面さらに岳樺がよく似合う。さあ稜線も近づいてきた。もう一息でつらい

アルバイトが終わる。


斜面上部の景観

斜面上部からは右から妙高,火打,焼山の素晴らしい景観が楽しめる。

稜線到着

やっと稜線到着。ここではじめて左手に高妻山が望める。

乙妻山

稜線右手には乙妻山が間近に迫る。稜線右手の雪庇には充分気を付けたい。

乙妻山山頂にて

山頂にて愛機とともに記念写真を撮る。

快適なシュプール

この真っ新な大斜面に僕だけのシュプールが描ける。なんと贅沢な遊びだろう。深雪をものともせずスキーは

よく浮いた。粉雪を蹴散らし,一本のシュプールを刻み込んだ。4時間のラッセルが15分の一本のシュプールに

変身だ。これこそ山スキーの醍醐味である。

                                 

山行記録2001年3月14日(水)

時刻-標高-場所

4.42 1140m 大橋発
5.14 1270m 林道分岐二股
5.30 1370m 鞍部尾根取付
6.13 1575m 佐渡山南鞍部
6.51 1360m 乙妻北東斜面出合
11.17 2230m 稜線
11.37 2318m 乙妻山頂
11.53 2318m 乙妻山頂発
12.30 1410m 乙妻北東斜面出合
1.53 1575m 佐渡山南鞍部
2.35 1140m 大橋着

【山域】乙妻山(北東斜面)2318m
【場所】長野県
【日付】3月14日(水) 前夜発日帰り
【行程】大橋-佐渡山南鞍部-佐渡山西面トラバース-北東斜面出合-北東斜面-乙妻山往復
【メンバー】単独
【装備】アトミックベーターカーブ160cm-ディアミール-ノルディカTR12

2年前の同時期はじめてこのルートを訪れた時あまりの素晴らしい斜面に深く感動した。
静寂さ,壮大さ,奥深さどれをとっても一級の斜面である。出合から稜線まで1000m
弱の一枚斜面でありデブリや雪崩のない真っ新の斜面である。これこそ山スキーヤー
の聖地と言っても過言ではないだろう。今回2度目の挑戦でパウダーに出会えた。

3月13日(火)夜8時金沢発。仕事が終わり次第,スキーを積み込み一目散に高速に入る
。食事はいつもの有磯海SAのスタミナ定食だ。ここのレストランはホテルニューオオ
タニの直営店なので味はとても良い。北陸道から上信越自動車道に入ると路肩に雪が
高く積まれていた。ここ数日のドカ雪のせいだろう。深夜近く戸隠手前の大橋に到着
。車はなかった。雪は深く1m50cmはあった。すぐに車から出て雪の状態を確認。周囲
はフカフカの雪だった。明日の厳しいラッセルを覚悟してすぐに就寝した。

3月14日(水)ラッセルはきつそうなので早めに出発とした。朝4時起床。車内でも氷点
下一度だった。急いでパンをかじり茶をわかす。

4.42 1140m 大橋発。いつも以上に気合いを入れて出発する。満点の星と半月が輝
いていた。しばらくは平坦な林道を黒姫方面に進む。林道だけはトレースがあり助か
った。

5.14 1270m 林道分岐二股。黒姫は右。乙妻は左である。しばらくでトレースは消
え,いよいよラッセルになった。深いところで膝下,概ね靴の半分程度だった。ただ
しスキーが潜ると雪が重くかなり重荷になった。

5.30 1370m 鞍部尾根取付。ここから本格的な登りである。疎林の快適な登りだが
場所が悪いとかなり潜るため尾根の左手の堅そうな斜面を選んで高度を上げる。

6.13 1575m 佐渡山南鞍部。この鞍部はブナの原生林が茂りとても感じのよいとこ
ろだ。高妻方面は朝陽で輝いていた。朝焼けは素晴らしい。ここでシールを外し佐渡
山西面をなるべく高度を落とさないように出来れば北東斜面出合付近まで下ろうと考
えた。帰りのラッセルは御免なので下りのトレースも登りで使えるようにと登り易さ
を考えて下ることにする。スキーを履いても靴まで潜るため滑りは悪かった。何とか
出合少し手前まで下ることが出来た。再びシールを履き川を渡って林道沿いに北東斜
面出合を目指す。

6.51 1360m 乙妻北東斜面出合着。ここまでかなり体力を消耗していた。ここから1
000m弱の登りを一人でラッセルを続けるには何時間かかるだろうか。少し弱気になる
が,登りが厳しければ厳しいほど下りは楽しいスキーが期待できるので,気合いを入
れて頑張ることにした。緩斜面の登りがしばらく続きついに北東斜面全容が見えた。
すばらしい,やはり真っ新な一枚斜面だ。人間社会とは縁のない原始的な臭いのする
静寂に支配された大斜面である。相変わらずラッセルはきつい,どうした訳か登るに
つれ深く潜るようになってきた。だんだん傾斜は増しつらくなるばかりだ。何時にな
ったら稜線に着くのだろう。背後に見える妙高山や黒姫山を慰めに黙々と標高を上げ
る。出合を出て4時間のラッセルの後ようやく稜線に届いた。最後は体力より気力だ
けだった。

11.17 2230m 稜線。ここから左へ行けば高妻山,右は乙妻山だ。稜線でやっとラッ
セルから開放され氷化した斜面を快適に進む。

11.37 2318m 乙妻山頂着。やっと山頂だ。後立山連峰。火打,焼山など大パノラマ
が広がる。頑張ってよかった。思う存分景色を楽しんだ後,いよいよお待ちかねである。

11.53 2318m 乙妻山頂発。この真っ新な大斜面に僕だけのシュプールが描ける。な
んと贅沢な遊びだろう。深雪をものともせずスキーはよく浮いた。粉雪を蹴散らし,
一本のシュプールを刻み込んだ。4時間のラッセルが15分の一本のシュプールに変身
だ。これこそ山スキーの醍醐味である。

12.30 1410m 乙妻北東斜面出合。大休止の後シールを履き,下りでつけたトレース
を忠実に鞍部を目指す。これには大いに助かった。

1.53 1575m 佐渡山南鞍部。シールを外し大橋まで一気に滑り込んだ。

2.35 1140m 大橋着。

金沢まで高速を飛ばし2時間半で到着。便利な時代である。
厳しくもあり充実した一日だった。一日で体重は3kg減ってしまった。

このルートはシールの脱着が頻回のため,シール不良は致命的です。


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