大日岳(人津谷経由,山頂から雑穀谷滑降)(2501m) 

人津谷は冬の登山ルートである。前大日,早乙女岳を経由し大日岳に至る長大な尾根である。

山頂から急峻な雑穀谷を滑走し,標高医1600mで前大日に登り返す。累積標高差は約2500mと

一級のコースである。根性と気合いしかあるまい。

人津谷の概要はまずこちらへどうぞ

2万5千の地図

前大日の展望

前大日まで来れば大日岳の展望が開ける。左早乙女の登りはクラストと雪庇に注意。

ここからしばらく下って鞍部に着く。帰りはここに登り返す。

滑降コース

山頂から雑穀谷に落ちる滑降コース。標高差約1000mの玄人好みのコース。

早乙女岳にて

折角だから記念写真でも。150cmの板は快適である。

大日目指し

まだまだ山頂は遠い。ここから1時間半はかかる。

山頂間近

この辺りは氷の世界である。下りの滑りも難しい。

山頂からの下り

標高2501mの山頂で剣の展望を楽しんだらいざ滑降である。

快適斜面     

斜度も手頃,雪質もばっちり。今日も貸し切りである。

標高2200m

どこまでも快適に落ちていく。雪崩の心配はなかった。

2200mの見上げ

いつもながら調子でドンドン下る。

鳥人

気持ちよく飛んでますね。どんな雪質でも自由自在の超人(鳥人)。

標高2000m

この辺りで右又と合流。

雑穀谷本谷合流

どこまでも快適な斜面。標高1500mまで下って,鞍部1760mまでわずかの登り返し。

前大日手前からの滑降

うまく稜線を巻けば登り返しは一切無い快適な尾根。

標高1650m

はっきり言って最高です。

ブナ林

地図上1566からはブナ林の快適な滑り。

ラスト

やっぱマウンテンバイクでしょう。こんな姿で下ります。

              山行記録2004年3月14日(日)

今日は今期最大の累積標高差2500mに及ぶハードコースであった。雪庇崩落事故以来
毎年行っている現地調査と山頂からの雑穀谷滑降を兼ねて今日もあの人と完全燃焼し
た。

【山域】大日岳(北ア)
【場所】富山県
【日時】本日 3月14日(金)
【コース】立山駅手前橋近くゲート−人津谷−文登研前進基地−前大日−早乙女岳−
大日岳−雑穀谷−前大日登り返し−立山町
【メンバー】僕・深澤
【装備】サロモン・Verse7 150cm,ディアミール3,ノルディカTR12(僕)
    K2・summit 153cm,ディアミール2,ローバストラクチュラ(深沢)
【天気】曇りのち晴れ・強風

笠の疲れも無いわけではないが今年も冬の大日へは行かなければならない。快晴の予
報を見ていつものように前日急遽行くことにした。

3月13日(土)深澤君にも山梨からいらっしゃいと午前中携帯した。彼も行くしかな
いでしょうと7時間の下道でやってきた。午後7時半富山インター出口で待ち合わせを
してとっておきのとろ一へ招待した。カウンターに座るなり女将さんが今日先生のHP
を見てきた山屋さんが既に何人も来たわよと驚いていた。初めての深澤君も既にこの
店では有名人であった。会えて良かったと女将さんから感激されていた。

鱈汁・鳥から・すり身上げ・ウナギ蒸籠・を始め山海の珍味をたらふく食べて店を出
た。女将さんから差し入れもたくさん頂き感謝感激だった。

道中文登研本部に挨拶によると講師仲間や山岳関係者が20名ほど会議を行っていた。
明日も大日に入山し現地調査に出かけるという。本当に頭が下がる思いだった。ここ
でも深澤君は有名人だった。ご馳走を勧められ楽しく歓談した。少し遅くなったが皆
さんと別れてここから車で数分のゲートに戻った。3時間眠れれば上出来だ。明日も2
時起床と伝えた。

3月14日(日)朝2時起床。既に深澤君も起きていた。さあ急いで準備をする。今朝は
アミノ酸ゼリーをとり活力を付けた。もちろんマウンテンバイクも持ってきた。スキー
を担いでいざ出陣。

2.46 460m 立山駅手前橋近くゲート発。空には星が見えていた。称名滝に向かう有
料道路を人津谷出合まで自転車で漕ぎ出す。出合までは約3kmである。これからはマ
ウンテンバイクが活躍する時期である。時は金なり。

3.05 580m 人津谷出合(喫茶クムジュン)。この辺りでも1mほどの積雪はあろう。
しかし昨年よりはかなり少ない。ここで自転車をデポしいよいよ人津谷に入る。暗闇
の中林道をカットしながらドンドン進む。ラッセルはもう無かった。楽勝である。杉
林の中をコンパスどおりドンドン行く。鞍部のやや左に出過ぎて標高差で50mほど鞍
部に下る羽目になった。

5.05 1300m 文登研前進基地。谷を登り切った所に前進基地がある。久しぶりに対
面した。雪庇事故以来講習会も中止になっているので実に悲しげな様子であった。積
雪は4m20cmであった。屋根もすごい雪である。ここでも昨年より積雪は1m近く少ない。
ここから進路を右に取り前大日を目指す。尾根の北側のため新雪が残っているようで
稜線までチビラッセルがあった。

地図上1566から前大日までは緩斜面でアップダウンがあり時間がかかる割には標高は
稼げない。この辺り弥陀ヶ原,鍬崎山,薬師岳,毛勝山の展望は雲がかかって今一だっ
た。

6.47 1778m 前大日山頂着。ようやく此処まで来た。今シーズンラッセルに明け暮
れた僕たちは今日のようなチビラッセルは高速道路を歩くような感じだった。ここか
らしばらく下っていよいよ早乙女への急な登りである。

早乙女への登りは雪庇とクラスト斜面に気を遣わなければならず,強風にも悩まされ
寒さに凍えながらの登りであった。

8.04 2040m 早乙女岳着。ルンルンルン。まだ8時だから10時前には山頂に着きそう
だ。大日前衛の登りはクラストにシュカブラと歩きにくかった。振り返って立ち止ま
りながら写真もたくさん撮るので時間はかかった。さあ見えましたよ。

9.59 2501m 大日岳山頂着。ついに到着。セーフ10時前だった。山頂の雪庇は非常
に安定していた。しかし無木立の山頂部ではどこが本来の山頂かよく分からない。初
めての深澤君は雪庇の上でしばし待っていた。事故当時端から20m近く崩壊したんだ
よ。今の君の位置では完全にアウトだね。と言うと信じられないと言う顔をしていた。
これが自然の驚異である。毎年来ても雪庇の状態は変わっておりどこからどこまで安
全なのかなんて,正直神様でも分からないと思った。風は相変わらず強く記念写真を
撮ったら早々に下りようと話した。立山方面も真っ白で静まりかえっている。

10.24 2501m 大日岳山頂発 雑穀谷へ。山頂から西に落ちる最も急な斜面を選択し
た。地図では等高線があるので楽勝である。Go Go。150cmの板をおもしろいように振
り回しながら華麗に深澤君は滑っていく。クラストしていようがモナカだろうが彼に
は関係ない。どんな雪面にも対応できるオールラウンドプレーヤーだ。僕も雪質の良
い斜面を選んで粉を巻き上げながら滑って行った。

最高の斜面であった。ジャンプターンにも格好の斜度でサラサラの純白の急斜面だ。
雑穀谷の本流まで標高差約700mの超快適斜面だった。是非お勧めです。

11.14 1800m 本谷合流。本流に着いてから前大日を過ぎた鞍部が見える位置まで滑
り込んでいよいよ登り返しである。雑穀谷はスベスベの快適斜面であった。デブリも
皆無であった。

12.00 1550m 雑穀谷1550m。ここらでシールをつけて上に見える鞍部を目指す。登
りは200mちよい。楽勝ですね。下から見上げる大日も圧巻であった。

12.48 1778m 前大日山頂着。ここから僕らがつけたシュプールを振り返り自己満足
に浸った。後は稜線を北面の良い雪を選びながら一気にブナ林を滑り降りる。

1.22 1300m 文登研前進基地着。大勢集まっていた関係者にご挨拶をして基地を後
にした。人津谷も快適な斜面であった。だから山スキーは止められない。

1.45 580m 人津谷出合(喫茶クムジュン)着。もう着いたも同然。ここでスキーを
担ぎゲートまで走らせた。

1.59 460m 立山駅手前橋近くゲート。お疲れ様。ここで記念写真を撮り別れた。筋
肉痛が少し出たが,いつの山行のものか分からないくらいである。いよいよ春の雪で
すね。もうパウダーが楽しめないのかと思うととても悲しいです。

追記・・大日岳雪庇事故に関する私見

事故後積雪期の文登研の大学生対象の研修会は完全に中止されている。先の大長の事
故ももし文登研の研修会が行われていればと残念に思う。この事故で同僚講師2名が
訴えられ,いつ終わるか分からない裁判に毎月仕事を休んで自腹で富山の裁判所に通っ
ている姿を見て自分たちは一体何だったんだろうと考えさせられる。ボランティアー
で少しでも学生さんのお役に立てればと長年命がけで頑張ってきたが,100%の安全
性が保てるはずもない冬山でもし自然の気まぐれによる事故が起きたら自分も訴えら
れる可能性があると思えば,自分や家族を犠牲にしてまでも学生さんのためにと講習
会に参加できるはずがない。何かあれば自分を含めて家族全員に迷惑をかけかねない。
この裁判は単に当事者だけでなく,今後大学生の安全登山を守るために誰が何をすべ
きかという深い示唆を与えていると思う。僕自身裁判が終わり同僚たちの無罪が明ら
かにされるまで講習会には参加できないと思っている。
 また冬の同コースを実際歩いたこともないような第三者の山屋さんが机上の空論で
誰かに責任にがあるかのような無責任な発言をする度に悲しい気持ちになってしまう。
あなたの周囲で不可避の自然現象で仲間が怪我をしたり亡くなったりしたことはない
のですか。その責任をもしあなたが問われたらどうしますか・・・。

HOMEへ戻る