シャックを創れ! 

*「シャック」とは受信室の意で、受信機周辺装置やそのレイアウト全般を示す。

「シャックを創れ」。これは1976年6月のクーガー2200発売時、同時にその周辺機器をもPRする松下電器(現パナソニック)のキャッチフレーズである。カタログに必ず載っていたセット一式の写真に当時のBCL少年はどれだけ魅せられたことか。
メインの受信機に2200を選び、セットにあこがれたものだが当時の資金力からいって全部集めるのは無理だなと実感した。それでも機会ある度にそれら周辺アクセサリーを買っていたが、無理と思われたコレクションを32年目にしてついに完成させることができた。当時のファンにとっては羨ましく、誇るべきコレクションだと思う。 

ついに完成、オリジナルシャックを再現!
 まず新発売当時のカタログに掲載されている「シャック」のアイテムをすべてリストアップしよう。

品 名 型名 価格(円) 備  考(寸評など)





クーガー2200 RF-2200 34,800 この機種が発売される前にヒットしたスカイセンサー5800, 5900やクーガー 115などと異なり横長の型である。システムラックの構想をあらかじめ考慮しての設計だったのか。スイッチ類の配置がよかったとみえて、プロシード2800にもその配列が受け継がれている。
アンテナカップラー RD-9810 6,800 クーガー2200とコーディネートされたデザインであり、このペアを前提にシステムラックが設計されている。そのためそれ以降の大型化した受信機(プロシード2800等)ではラックでの置き場所がなくなってしまう。カップラーの内部は結構空間があるしもう少し小さくならなかったのだろうか。
BCL専用ヘッドホン RD-9205 3,900 松下からは本機以前にもBCL用ヘッドホン(ラジオ購入者へのプレゼント)があり、いずれも片耳仕様だった。長時間聴いていても疲れないようにとの配慮だが、どれくらいの時間を想定していたのだろうか。短時間なら両耳でも支障ない。
システムラック RD-9860 9,000 ラジオ本体を置く下段板は卓上面から7cmほどの高さがある。地震などでラジオ転倒時の損傷が気になるが、この高さはフィルムスケールへの目線を考えてのことだろう。他のアクセサリーをきれいに収納し機能的にもいいデザインだが、2200のイヤホン兼スピーカー端子の位置が支柱に少しかかり、これは惜しくも設計ミス。2,3年に1度くらいネットオークションで見かけるが、落札額は10万円以上と高額。
カセットテープレコーダー RQ-308 20,600 カタログではのちにほぼ同型のRQ-332に差し替えられていたもよう。録音、再生、早送り、巻き戻しの最低限の機能のみ備わっている。ワンプッシュで録音できるが、再生しようとして間違えて録音を押してしまう危険も。
24時間タイマー付き時計 TE-61 8,900 時間のずれがほとんどなく正確な時を刻んでいる。タイマー機能は付属のピンを挿すことで働くが、15分毎にしか設定できないのは惜しい。ピンを紛失しやすいこともウィークポイント。30年以上使い続けているとカタカタ音が気になったり、タイムアジャストがルーズになったりと不具合が目立ってきた。
VHF・TV音声コンバーター RD-9580 6,500 VHF帯のみ受信可能。首都圏ならテレビ局が多くてよかったかもしれないが地方ではVHFの局が少なく、利用価値は今一つだった。地デジ移行になった2011年7月以後は完全に価値が消滅。果たして今後VHF帯に何の電波が入ってくるのか。
スポット照明
(ミニパナアーム)
LS-423 4,580 夜間受信の際、暗い部屋でこの照明だけ点灯させればいい雰囲気を醸しだしてくれる。点灯時はそれなりに発熱するため、消費電力の少ないLED電球に換えるとよい。ただしノイズが発生しないものを選ぶ必要がある。オークションへの出品が極めて少なく、5年に1度あるかないか。
3m垂直アンテナ RD-9160 4,980 現物未確認。ネットオークションでの出品例が少なく、入手困難なアイテムの1つ。その割に落札額は高騰していなかったような。
逆L型アンテナ RD-9150 3,000
合 計(逆Lアンテナ除く) 100,060 当時全セットのローンの案内チラシがあった。

専門誌 カタログで確認できるのは「BCLマニュアル」、「WRTH'76」、「世界の放送」、「世界のベリカード」、「短波放送入門」。
IRC・受信報告書
地球儀・地図 同型の地球儀がクーガー2200購入者へプレゼントされていたとの情報もある。
ログノート・ベリカードアルバム ラック中段にアドカラー製スタンダードアルバム。
和英・英和辞典 カタログでは岩波書店のもの。
返信用封筒 細かくつっこめば、「返信用」よりも発送用に多く使うはずだ。
ペナント 側面にラジオ・オーストラリアのもの。ラック上段に乗っているペナントは不明。
音声カセットテープ カタログには「世界の放送局」とのタイトルがある。
他  ループアンテナ  RD-9170 9,980  1m角サイズ。
プリセレクタ  RD-9830    

 個人的な振り返りだが、周辺機器コンプリートまでの履歴をたどってみる。

1)第一の拡張、アンテナカップラー
クーガー2200を購入したのは1976年8月。それとコーディネートしているアンテナカップラーが標的になるのは自然なことだろう。「シャックを創れ」カタログでなくても、このペアはよく一緒に写っていたので。中学校の修学旅行のとき貰った餞別をケチって購入資金の一部に充てた(1977年10月)。これと相前後して中学の技術科実技の木工工作で、システムラックを意識したブックスタンドを作製し(本物は手に入らないと思ったから)、最初のシャックらしきものができた。
2)最重要アイテム、システムラック
高校入学後はBCLブームは完全に下火になっていたが、思い出したように時々ラジオを聞き、月刊「短波」を買ったりもした。このころ電気店の店頭にはBCLラジオ関連のものはなくコンプリートなど全く意識していなかったが、「短波」の通販広告でシステムラックを発見し迷わず購入した(1980年12月)。他の機器を収納でき多目的に使える最重要アイテムといえ、入手したときの喜びは大きかった。このときラックに収まったのは2200、カップラー、1978年2月頃購入したタイマー付き時計、およびカセットレコーダー(たまたま用があって親が購入したものを共同使用)である。
3)長いブランクの後の買い増し
これ以降長い間周辺機器が増えることはなかった。それどころか本体の2200を一時排除したり、ラックが本当に本棚になったりもした。しかし何度目かのBCL復活の際にオリジナルのレイアウトを再評価し、それ以降2200はずっとラックに収まっている。品数として増えたのはネットオークションを活用し始めてから。生活環境の問題があってそれへの参入はかなり遅れてからだったが、TVコンバーターとヘッドホンをゲットした(それぞれ2007年10月、2008年5月)。
4)スポット照明への思い入れ
当時のカタログでヨゼフ・ナジ氏がスポットライトに浮かび上がるシャックを背景にラジオを操るカットがあったが、その影響からか後になって照明になるものが欲しいと思うようになった。既に純正を入手する時期を逸しており、電池式のアーム型照明など使えないかと2,3度試したがどれもイマイチ。純正品志向が強まりリサイクルショップに行ったときには必ずチェックしていたし、ネットオークションでも一般家電の照明にまでカテゴリーを広げて監視し続けていた。1年以上粘って遂に出品を確認、高値承知で落札したのだった(2008年11月)。足掛け20数年、意外なアイテムが一番思い入れが強かったと言えるかもしれない。
「シャックを創れ!」のカタログ カタログを元に忠実に再現

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