FILE23  サネカズラ
 図1 サネカズラの雄花

図2 雄花の雄しべの集合体
 平開した葯の間に広い面積を占める赤い部分があるが、これは「葯隔(やくかく)」である。多くの花の雄しべでは、2個の半葯で1個の葯を構成し、その半葯をつなぐ組織を葯隔という。サネカズラでは、この葯隔が極端に広い。

図3 半葯と葯隔を示す参考図。赤い半葯の間にある狭く白い部分が葯隔。材料はコオニユリの雄しべ。(サネカズラでは、葯隔が赤く、葯が白いので注意)

図4 雄しべの集合体の顕微鏡写真
   葯が平開して、花粉が葯隔上にこぼれている。

図5 サネカズラの雌花

図6 サネカズラの雌花
 球状の子房の側面から花柱(花柱と柱頭の区別がはっきりしない)が突き出している。

図7 果実    

 どこかで聞いた名称ですね。そうです、小倉百人一首に登場するマツブサ科の蔓性の植物で、その果実が美しいので、「実葛(美しい実のかずらの意)」と呼ばれているようです。花は直径1.5cm位と小さく、果実ほどには目立ちませんが、それでもゾクッとするくらい美しい花です。

 小倉百人一首で、
   名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
                         三条右大臣
と歌われていることで有名な植物です。

 サネカズラは、富山県・福島県以南に分布する常緑のつる植物です。石川県では、奥能登の外浦地区を除く全域の低地に分布します。社叢林でよく見られますが、金沢城公園にも多く見られます。
 花期は8月で、未明に開いて、夜には枯れます。

 図7は、果実です。一つ一つの赤く丸いものがそれぞれ果実で、それが沢山集まって集合果を作っています。
 別名の「ビナンカズラ(美男葛)」は、枝の皮に含まれる粘液を水に混ぜて、びんつけ油の代わりに整髪に使ったことによると言われています。


 この話を知人にしましたら、かつて母親から聞いたことがあるとのことで、新たに取材をして下さいました。サネカズラをどのようにして整髪料として使用したかという様子が目に浮かぶような報告です。
「鹿児島では『ひねかずら』というそうです。そのつるを20cm位に束ねて、石などで叩いて繊維をつぶしてから洗面器の中に入れてお湯をかけると、ぬるぬるになるそうです。そのぬるぬるの液体を束ねたつるで髪を洗うと柔らかい髪になるそうです。今でいうリンスのはたらきがあるのかもしれません。
 前回聞いたときには油カスも使うと聞いた覚えがありましたので、詳しく聞きましたら、昔は椿油を作るときにできるカスを固めて取っておいて、それを少しずつ削り取って、ひねかずらのぬるぬるの液体に混ぜて髪を洗ったそうです。今でも母は椿の実を拾って、椿油を加工するところに頼んで椿油を持っています。椿油が貴重でカスまで使うためにそうしたのか、そこまでは分かりません。大昔はシャンプーもリンスもありませんから、こうした方法で洗っていたのでしょうね。」というものです。ありがとうございました。


 
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誌2005
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