FILE2 ミズオオバコ
Ottelia japonica Miq. (Hydrocharitaceae トチカガミ科 )
図1 ミズオオバコ群落(1998年9月6日)

 1年生の沈水植物です。オオバコに似た葉をつけることからミズオオバコと名付けられました。
 昔は、県内各所の池や水路に見られた植物ですが、今ではすっかり、減ってしまいました。1998年、加賀市の生育地へ地元の研究者の方に案内していただきました。小さな池の中でしたが、何千株というミズオオバコが茂っていました。この池が、公共工事によって破壊される恐れがあるということで、先の研究者の方が、加賀市と石川県の環境安全部へ積極的にその保護を訴えられた結果、ミズオオバコは保全の策がとられることになりました。


図2 オオバコに似た葉を水中に広げる。

図3 花弁は3枚で薄いピンクがかっている。

図4 花弁を取り外して花の内部を観た。長くて先端の裂けているのが雌しべの柱頭で、短くて細いのが雄しべ。 図5 図4の反対側から見た様子。両側からの観察を総合すると、柱頭が4個、雄しべが4個であることが分かる。

図6 子房の断面。3室。 図7 子房の断面。4室。

 花は一日花で、3枚のうすいピンクを帯びた白い花弁をもちます。似た種類としてオオミズオオバコというものを区別する学者もいます。ミズオオバコはおしべが3、子房が3〜5室で、オオミズオオバコではおしべが6、子房が6〜9室であるということです。
 この加賀市の植物は雄しべが4個のものが多く(5個のものもある)、柱頭(先端が深くさけている)も4個のものが多く(先端が深くさけている)、子房も図6・7で見るように3〜4室になっています。以上の観察から、典型的なミズオオバコではないが、オオミズオオバコというほどではないことが分かります。
 日本水生植物図鑑( 大滝末男)では、「ミズオオバコとオオミズオオバコとに区別することもあるが、これは生育環境によるもので、本質的な差異ではないと考えられる。」とあります。日本水草図鑑(角野康郎)でも「ミズオオバコとオオミズオオバコを区別する必要はない。」と述べてあります。種内変異は大きいようで、染色体数も2n=22から2n=132まで、多彩です(日本水草図鑑. 角野康郎)。
 ということで、私もミズオオバコとしておきたいと思います。

図8 花を包む苞葉には波形のしわをもつ翼がつく。 図9 果実は熟すると縦に裂け、種子を水中に放出する。

文献
大滝末男. 1980. 日本水生植物図鑑:179. 北隆館
角野康郎. 1999. 日本水草図鑑:29. 文一総合出版.