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FILE31 ネナシカズラ Cuscuta japonica Choisy |
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図1 ハマゴウを覆い尽くすネナシカズラ。 加賀海岸で撮影したもので、茶色に見えるものがすべてネナシカズラ |
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図2 春5月、発芽をしたネナシカズラが砂から顔を出して、宿主を求めている |
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夏から秋にかけての山野・河原・海岸などいろんなところで見ることのできるヒルガオ科の寄生植物です。ヨモギのような草から、ハマゴウのような小低木、またエノキのような樹木にも寄生します。いろんな植物に迷惑をかけているうえ、蔓(つる)が宿主の上に覆い被さって茂り、はっきり言って汚らしい植物です。でも、よく見ると健気で、美しいところもありますよ。
学名の Cuscuta は、「からみつく」という意味のギリシャ語
「 kassyein 」 に由来するということです。
ネナシカズラは文字通り根の無い葛(つるくさのこと)です。発芽したときには、根も芽もよく分からないイトミミズみたいな、あるいは紐(ひも)のような蔓として伸びて、宿主となる植物を探します。図2は、加賀海岸で、砂の中から発芽して、宿主を必死で(?)探しているところです。手近な植物にまといつくと、寄生根を出して植物から栄養分を吸収するとともに、根が枯れていきます。 |
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図3 ノウルシに寄生したネナシカズラ。吸盤のような寄生根を宿主に差し込む。 |
図4 ネナシカズラを無理矢理はがしてみると、寄生根のあった場所が深い傷跡になっている。 |
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図5 左:寄生されたノウルシ。右:ネナシカズラ。
赤インクを吸わせたので、維管束の部分を中心に赤く染まっている。 |
図6 図5と同じく右のネナシカズラが、左のノウルシに食い込んでいるのが分かる。 |
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その後は、寄生根で栄養分を吸いながら先へ先へと蔓を伸ばしていきます。この蔓は、夏には、すっかり宿主の植物を被ってしまいます。この時期、藪(やぶ)の上にラーメンをぶちまけたような景観になるのですぐに発見することができます。(似たような景観になるものとして、アメリカネナシカズラがありますが、これは別のFILEとして後日報告したいと考えています。) |
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それでは、ネナシカズラの発芽の様子を見てみましょう。 |
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図7 夏、元気のいい株は赤くなっている。この画像は9月で、果実はまだ完全には熟していない。 |
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図8 上図の果実を割って、種子をつぶしてみたら、イトミミズのような胚(幼植物)が出てきた。何と緑色をしていた。太い部分が〔根〕、細いところが〔芽〕。 |
図9 果実が完全に熟し、冬を越して種子が散乱した状態。 |
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図10 左下は1日目(発芽後24時間以内)。約1.5mm。右は未発芽。発芽前には、水分を吸って大きく膨らむ。5月21日。単位は0.1mm。 |
図11 発芽後24時間以内では、根の先端部はまだ平滑。 |
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図12 2日目(発芽後48時間以内)。1日の間にずいぶん伸びた。5月22日。 |
図13 図12の根の先端。細かな根毛が生え出している。 |
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図14
3日目(5月23日}。この時期の成長速度は驚異的である。
スケールは目盛り付きスライドガラスで、最小目盛りは0.1mm。スケール全体は1cmあり、100等分されている。 |
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図15 5月23日。図14の根の先端。短くか細い根毛が沢山見える。先端部はすでに枯れ始めている。 |
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図16 芽の先端。中央に鱗片状に退化した葉が1枚見え、先端は3裂している。5月24日。 |
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図17 シャーレで培養したネナシカズラ。5月27日。伸びた伸びた。1週間でこんなに伸びた。右が芽。左が根。約12cmほどの長さがありそう。宿主に寄生できなくても、種子に持っていた養分と水だけでこんなに長くなることができる。たくましい。 |
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図18 砂から伸び出したネナシカズラの芽。普通の藪(やぶ)の中で芽を出したネナシカズラを見つけることは容易ではないが、海岸では、砂の中から出てくるので、見つけやすい。とはいっても直径1mm弱で、淡い色なので、相当眼をこらさなくては見つけることはできない。(平成14年5月6日) |
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図19 5月6日。先端部(左側)3〜4cmだけ砂から顔を出した図18のようなネナシカズラを砂から引き抜いたもの。8cm以上は砂に埋もれていたことが分かる。 |
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図20 間違ってハマゴウの枯れた茎に絡まってしまった。これでは生きていけない。 |
図21 なんとかウンランにたどり着けた。 |
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図22 葉を展開したばかりのハマゴウにからみつくネナシカズラ。(平成13年6月2日) |
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図23 ハマハタザオをがんじがらめにしたネナシカズラ。(平成13年6月2日) |
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図24 エノキに寄生したネナシカズラ |
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図25 ハマベノギクに寄生したネナシカズラ |
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図26 花序 |
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図27 花。花冠は5裂。柱頭は2個。 |
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図28 蕾(つぼみ)の解剖
茶色に見えるものは葯(やく:花粉袋)で、その下に二つある白いこぶは雌しべの柱頭。イボイボの付いた鱗片も見えている。右下の隅の膨らんだところが子房。一つの花の長さは約4mm。
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