その名も恐ろしげなドクウツギは、海岸の荒れ地、河川敷、林道脇などに繁る落葉低木です。夏の日、赤い球形の果実が実ると、急に目立ちます。子どもが喜んで食べそうな赤い実ですが、別名イチロベゴロシ(市郎兵衛殺し)と言われるように、猛毒のアルカロイドを含んでいて、呼吸停止や心拍停止を引き起こす有毒植物です。最近はあまり聞きませんが、かつては新聞に時折、子どもが中毒死したとか、村人総出でドクウツギ退治をしたとの新聞記事を見たことがあります。下段の写真のように、3本の太い葉脈が縦に走っているのが特徴で、見極めは簡単です。
はじめは赤く色づきますが、完熟すると紫黒色になります。不思議なことに、白山に住むニホンザルは、ドクウツギの果実を食べるのだそうです。未熟で赤色の時には毒があるが、紫黒色に熟した時には、毒は消失しているという説もあります。しかし、危なくて実験するわけにはいきません。果実の中にある種子の毒が消えることはなさそうです。
ドクウツギの仲間は、世界の10カ所ほどの地域に隔離分布をすることで有名です。白亜紀当時の赤道(今の赤道とは60度ほどの傾きがある)に沿って分布しているとか、大陸移動の結果であるとか、そのほかいくつかの仮説がありますが、隔離分布の謎は、未だ解けておりません。
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