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FILE54 ウツギ
Deutzia crenata Sieb. et Zucc.
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図1 匂うように咲く卯の花 平成12年6月11日金沢市 |
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図2 花序のアップ 平成12年6月11日金沢市 |
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図3 花のアップ
5枚の花弁は良く観ると縁のところに折れ目が着いている。
雄しべは10本で、花糸(かし:葯を付ける柄の部分)の上端付近に1対の左右へ腕を広げたような突起がある。
雌しべの花柱は3本見える。
平成12年5月28日 野々市町自宅 |
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図4 茎の断面 髄が無く、中空である。 |
図5 果実、茎、葉には星状毛がある。 |
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夏は来ぬ
うの花のにおう垣根に、時鳥
早もきなきて、忍音もらす 夏は来ぬ。 日本唱歌集(岩波文庫)より
ここで歌われている「うの花」(卯の花:ウノハナ)はウツギのことです。
春の野山を白く染める樹木の一つです。ウツギは図4のように、幹の中心(髄)が中空になっているので空木(うつぎ)と呼ばれたものです。この枯れ枝でたき火をすると、竹を燃やしたときのようにパンパンとはじけて怖い思いをしました。卯の花は、旧暦の4月(卯月)に咲くからと言われていますが、石川県では6月の花ですからピンときません。空木の花(うつぎのはな)の略だとの説もあります。
人家の近くにも生えるので親しまれたり、垣根に利用したり、繭かきの糸口を引き出すのに使ったり(葉がざらざらしているので、繭の糸口を引き出すのに使った)、材が堅いので、箪笥や木箱の木釘や楊枝として用いられるなど、生活の身近なところにあった植物で、ユキミソウ、ナツユキソウ、アナウツギ、フエギなどいろんな地方名があります。
万葉集以来、季節感に富む花として和歌の中に詠み込まれた植物で、ホトトギスとともに詠われたものが多く、万葉集に詠まれた卯の花の歌24首の内の18首にホトトギスが詠われているといわれています(図説 花と樹の大事典 による)。なお、万葉集に詠まれた花の数の多さでは、桜に次いで第5位とのことであります。
ほととぎす 鳴く声聞くや 卯の花の 咲き散る岳(おか)に 葛(クズ)引くおとめ
万葉集 作者未詳
卯の花の 散るまで鳴くか ほととぎす 子規
が好きです。
梅雨になる前の長雨のことを「卯の花くたし(卯の花を腐らせる)」と言うそうです。
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