FILE63  ヤマゴボウ
 図1 ヤマゴボウの全景(花序が直立している)(平成10年7月26日山中町)

図2 ヤマゴボウの花序 図3 ヤマゴボウの花

図3 ヤマゴボウの花 図4 ヤマゴボウ(花の終わった直後)

図5 ヤマゴボウの若い果実 図6 ヤマゴボウの熟した果実

図7 ヨウシュヤマゴボウの花 図8 ヨウシュヤマゴボウの若い果実 図9 ヨウシュヤマゴボウの熟した果実
 
図10 ヤマゴボウの根(何本もの直根をもつ大きな塊状) 図11 直根の横断面に同心円状の模様が見える

 
 原色日本帰化植物図鑑には、「中国原産。江戸時代の本草書にのせられ、当時は食用にされたもの。現在は山間部でまれに野生化したものに出会う。」とあります。
 近縁のヨウシュヤマゴボウは、それこそ至る所と言っていいほど、どこにでも広がっていますが、ヤマゴボウは石川県でも滅多にお目にかかれません。私の身近でも見たことがない人は大勢います。なぜか、自宅の庭に十数年前から生えています。
 はじめにヨウシュヤマゴボウとの違いをはっきりさせておきます。区別点は明瞭です。

ヤマゴボウ ・花序は直立
・子房は8溝(心皮が8個)で、心皮が離生するので、8個の分果からなる。(図4・5・6)
・中国原産
ヨウシュヤマゴボウ ・花序は下垂
・子房は10溝(心皮が10個)で、心皮が合生するので、熟すと境界が分からなくなる。(図8・9)
・北アメリカ原産

 花の美しさは、ご覧のとおり断然ヤマゴボウに軍配が上がります。雄しべの葯(やく:花粉袋)が美しく、花序が立っているのが凛々しく感じられるからです。
 なお、花弁のように見えるのは萼片です。

 私は未だ見たことがありませんが、日本の在来種でマルミノヤマゴボウという淡紅色の花を咲かせる種類があるということです。これらの3種はいずれも有毒です。
 ヤマゴボウの若葉はあくを抜けば食用になるとのことですが、根には多量の硝酸カリを含み有毒とされています。漢方では、根を日干しにしたものを商陸(しょうりく)と称し、利尿剤に用いられていますが、誤食すると脈拍が弱くなったり、血圧が異常に降下し、心臓麻痺を起こすこともあります。また、食用にされる若葉にしても、多食するとジンマシンや吐き気、下痢などを起こすそうです。
 ヤマゴボウ(山牛蒡)の味噌漬けなどとして観光地の土産物として販売されているものの本体は、ヤマゴボウではなく、アザミ(モリアザミなど)の根ですから安全ですが、名前だけにつられて本物のヤマゴボウを食べると危険です。ご注意を。
 ヤマゴボウの地上部は1年性ですが、根は多年性で大きな塊になります。何本もの太い直根があり、横断すると年輪のような同心円状の模様が見られます。

ヨウシュヤマゴボウについて詳しく知りたい方は「カネゴン先生の植物教室」(ここをクリック)をご覧下さい。



花模様