『葵ちゃんアフターストーリ』
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ずばぁーん!!
ずばぁーん! ずばぁーん!!
ぎし…ぎし……サンドバッグのチェーンがきしむ。
激しい蹴りの音が辺りになり響いた。
今日も学校裏の神社では、格闘技の練習に勤しむ葵ちゃんの姿があった。
「いよぉ、葵ちゃん」
オレは片手を挙げて、軽く挨拶を交わす。
「あっ!先輩!」
葵ちゃんは、練習を中断してこちらに駆け寄ってきた。
「はぁはぁ…ふぅ…おはようございます!先輩」
息を整えながら挨拶を返す。
「あいかわらず練習熱心だな、感心、感心」
「そんなぁ、好きでやってる事ですから」
葵ちゃんは少し照れながら呟く。
「俺も見習わなくちゃな。 よ〜し、じゃあ、練習始めっか!」
「はいっ」
葵ちゃんが元気良く、笑顔で答える。
そして今日の練習が始まった。
俺がエクストリーム同好会に入って、そろそろ4ヶ月がたとうとしている。
葵ちゃんの指導のもと、こつこつと基礎を学び、最近じゃ少しは体がしまってきたように思う。
同好会が休みの日には、時々、綾香とセリオにもコーチを頼んでいる。
まぁ、綾香に言わせばまだまだらしいが、セリオが言うには、俺は筋がいいらしいそうだ。
優秀なセリオが言うんだ、少しは自信を持ってもいいだろうな…うん。
とにかくエクストリームの大会で、葵ちゃんに恥をかかせない程度には上達しなくちゃな。
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その日は、夕暮れまで練習した。
サンドバックを片付け、帰り際……
「葵ちゃん……俺、実はずっと考えてたんだけど………葵ちゃんは夏休みはどうするんだ?」
「夏休みですか?」
葵ちゃんは首を傾げ、
「私は………とくに考えていませんけど、多分ここで練習してると思います」
「そうかぁ……じゃあ合宿やらねえか? エクストリーム同好会の」
「えっ! 合宿……ですか?」
すこし考えてから、葵ちゃんはパッとした笑顔で答えた。
「はいっ!やりましょう。 うん…合宿、そうですね。 夏といえば合宿ですよね!」
うれしそうに賛成してくれた。
「じゃあ決まりだな」
「はいっ!」
葵ちゃんは元気よく返事した後、 あっ! と何かに気付いた。
「あ…あのぉ先輩? ………合宿と言う事は、その…どこかに宿泊するんですよね?」
顔を真っ赤にしながら聞いてきた。
「あぁ、その事なら心配いらないぜ……合宿先の当てはあるからな」
「いぇ、そうじゃなくて………」
「まぁ、細かいセッティングは俺にまかせてくれ」
『先輩と……』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
『2人っきりで…………』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
『宿泊……………………』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
「………………と言う事でいいかな?」
完全に自分の世界にはいっていた葵ちゃんは、突然の問いかけに、
「はっ、はい!」
おもわず返事を返す。
「じゃあ、楽しみにまっててくれ!」
「は…はぁ……」
こうしてエクストリーム同好会の合宿が決まった。