『葵ちゃんアフターストーリ』
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「あっ あのぉ 先輩? ここって……その……」
葵ちゃんが戸惑い気味に聞いてくる。
「おぉ…綾香ん家だ」
目の前には広大な敷地と、大きな屋敷がいくつか見える。
これ全部が綾香の家らしい。
「綾香さんの……それじゃ合宿って?」
「あぁ ここでやるつもりだ。なんでも、綾香専用のトレーニング施設があるらしいんだけど、
合宿の事を話したら使ってもいいって言ってくれてな」
「そうなんですか……………綾香さんの 『・・・・・2人っきりじゃなかったんだ』」
少し残念そうな顔で呟く。
「あらっ 2人っきりじゃなくてそんなに残念なのぉ〜」
「えっ!」
突然、何処からか聞こえて来た綾香の声に、葵ちゃんはキョロキョロとあたりを見まわす。
「あ〜あ、 わたし葵にきらわれちゃったかなぁ〜」
「えっ! そんなぁ!そんな事ありません。わたし綾香さんの事好きです、尊敬してます、
綾香さんはわたしの目標なんです、きらいになるなんて……」
葵ちゃんは姿の見えない綾香にたいして、必死に弁明している。
「あ、葵ちゃん 落ち着いて! こらっ 綾香! 葵ちゃんをいじめて楽しんでんじゃねえ!
とっとと出て来い!」
「あら ずいぶんな言い方ねぇ」
どうやら、綾香の声は、門に備え付けられているインターフォンから聞こえてくるようだ。
俺はインターフォンに近づくとキッパリと言い切った。
「とうぜんだ! 俺たちはお客様だからな。ぞんぶんにもてなされる義務がある!」
ぷっ!
「あはははっ 何それ、いったいど〜考えたらそうゆう考えができるわけ」
綾香の笑い声が響く。
「まぁいいわ。いま、セリオが迎えにいったからもうしばらくそこで待っててね」
少し間をあけて…
「お・きゃ・く・さ・ま! ぷっ! あはははっ…………」
ひとしきりの笑い声のあと音声がとぎれた、
まったく、失礼な奴だ!
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それからしばらくすると、セリオがやって来た。
「浩之さん、葵さん、お待たせいたしました。」
あいかわらず礼儀正しい。
「よぉ! セリオおじゃまするぜ!」
「セリオさん こんにちわ」
「はい……ようこそいらっしゃいました……綾香さんがお待ちです……こちらの方へどうぞ」
俺たちは、セリオの案内で綾香の所へ連れて行かれた。
「はぁい 浩之、葵もよくきたわねぇ〜」
連れてこられた先で綾香に出迎えられた。
「………………」
「………………」
俺と葵ちゃんは呆然と立ちすくむ。
そこは、とにかく広かった。
俺は、綾香専用のトレーニング施設と聞いていたから道場ぐらいの大きさはあるだろうと
考えていたが、考えが甘かった。
さすがは天下の来栖川、そこは大きな体育館ぐらいの広さにトレーニング機器らしきものが
そこかしこに設置されている。
「どうしたのぉ〜2人とも?」
「いや、ちょっと…なぁ……」
「はい、想像していたより立派な施設なんで……」
葵ちゃんは、もの欲しげに辺りをキョロキョロしている。
まあ、そうだろうなぁ、サンドバックとパンチミット位の器具で毎日練習してきたからなぁ。
それにしても……俺は辺りを見回し、
「この施設、本当にお前1人で使ってんのか?」
「まあ基本的にはあたし専用なんだけど、たまにおじいさまのボディーガードの人なんか
が練習にくるかなぁ…………あぁ…後は、昼間に長瀬も使ってるみたいだけどねぇ」
「長瀬ぇ〜 あのじいさん強いのか?」
「そうねぇ〜………本気で戦ったら私でも無事ではいられない……ってとこね」
うっ! 今度から先輩と帰る時は、気を付けよう。
「さぁ 早く支度して、 練習を始めるわよ!」
こうして合宿が始まった。