『葵ちゃんアフターストーリ』
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俺と葵ちゃんは道着に着替えてきた。
綾香とセリオはまだ来ていないようだ。
「先輩 せっかくの合宿なんですから、何か目標をもって練習したほうがいいんじゃない
でしょうか?えっ〜と、そのほうが効果的だと思うんですけど」
葵ちゃんが提案してきた。
「そうだなぁ」
確かに、ただやみくもに練習するより何か目標があった方がやる気が出るってもんだしなぁ。
「で、葵ちゃんは何を目標にするつもりなんだ?」
「私ですか? そうですねぇ・・・・・・う〜ん」
葵ちゃんは考え込んでしまった。
「葵ちゃんが、綾香に勝つってのはどうかな?」
「えっ! そんなぁ 無理ですよ。綾香さんに勝つだなんて絶対無理です!」
即座に力いっぱい否定される。
「でも、葵ちゃんは、綾香が目標なんだろぉ。綾香を目標に何年も頑張ってきたんじゃないか」
「それは そうです・・・私もいつかは綾香さんにおいつきたいと思ってはいます・・・けど、
今はまだ・・・・・・・・・」
葵ちゃんは自分に自信がもてない。
これが試合の時に、『勝てるだろうか・・・』 『勝てるはずがない・・・』と、不安にかわり、
本来の実力を発揮出来ずにいる。
「葵ちゃんはあの坂下にだって勝ってるんだから、もっと自分に自信をもってもいいん
だけどなぁ」
もし、綾香に勝つことができたなら、葵ちゃんは少しは自分に自信がもてるだろうか。
「・・・・・・・・・・」
「俺、前にいったろ」
「えっ・・」
「『葵ちゃんは強い!』って」
「せんぱい」
葵ちゃんが熱い目で見つめる。
「とっ、とにかくだ、実力をちゃんと発揮できれば、綾香にだって勝てるはずだ!」
「はいっ!」
いきおいよく葵ちゃんが返事を返したその時、
「あらっ? だれに勝つのかなぁ〜」
不意に背後から声をかけられた。
「あっ 綾香」 「綾香さん!」
2人の声がハモる。
振り向くとそこには、道着に着替えた綾香とセリオいた。
いつのまに近づいたのか、まるで気配が感じられなかった。
「そうゆう話は、あたしがいない時にしてもらいたいわねぇ」
綾香は、いたずらっぽい笑みを浮かべている。
「でも、葵。やっと、その気になってくれたのねぇ。たのしみにしてるわよ」
「すっ すいません綾香さん、わたしは、別に・・・」
弁解しようとしている葵ちゃんをさえぎって、
「いいの、いいの。わたしも本気の葵と戦いたいとず〜と思ってたんだから」
「ほんと、たのしみだわ」