『葵ちゃんアフターストーリ』
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「で?浩之はどうすんの?」
「えっ、俺か?」
突然、俺の方に話がふられた。
「そうだなぁ、まあ無難に1回戦突破ってとこかな?」
ふぅ〜
綾香がため息をはきながら、やれやれといったアクションをとる。
「あんたねぇ、葵にはあたしに勝てって言っといてそれは無いんじゃなぁい」
「でも、先輩はまだ格闘技を初めて、まだ間もないわけですから・・・」
葵ちゃんがすかさずフォローをいれてくれる。
「甘い!甘いわよ。葵だってわかるでしょ、浩之の格闘センスはかなりのものよ」
(以前は、まだまだっていってたじゃないか!)
びっしぃ!!
綾香は俺を指差し、
「そもそも、あんたに格闘技を教えてるのは誰だとおもってるのぉ?」
うっ!
「エクストリーム高校生チャンピオンたるのこの綾香さんと、私に匹敵する実力をもつ葵、
それにあらゆる格闘技のデータを持つセリオ、日本でこれ以上のコーチはいないわよぉ!」
たしかに、これ以上のコーチは考えられないだろう。
もしかしたら、俺、結構やれるんじゃないか?
葵ちゃんに自信を持て、と言った手前、いつまでも弱気でいられないしな。
「わかったぜ、綾香!こうなったら1回戦突破なんてけち臭い事は言わないぜ!!」
「そうそう、浩之ならベスト16ぐらいには・・・・・・」
綾香の言葉をさえぎって、
「やるからには、優勝をめざすっ!!」
えっ?
「先輩、それはちょと目標が大きすぎるんじゃ・・・」
いくらなんでもそれは無理だろうと、葵ちゃんが止めようとしたが、
「大丈夫だって、それより葵ちゃん、いっしょにアベック優勝を狙おうぜ!」
「えっ?アベック優勝??・・・・・・・・」
「ちょっと!浩之それは調子に乗りすぎよ!いくらセンスがあるって言ったってまだ格闘技
を始めたばっかなのに」
「なんか、さっきと言ってる事が違ってきてるぞ、それに、俺に格闘技を教えてるのは
とぉ〜ても強い先生方なんだろぉ」
うっ!
「い、いくら先生が良くったてねぇ・・・・・もう、葵もなにか言ってよぉ!」
綾香が葵ちゃんに助けを求める。
『先輩と……』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
『2人で…………』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
『アベック優勝…………………』
葵ちゃんは小さな声でつぶやく。
「あ、葵?どうしたの?」
葵ちゃんの様子がどこかおかしい。
きっ!葵ちゃんは綾香を見据え、
「わたし、絶対綾香さんに勝って見せます、 先輩の為にも!!」
ぶぅわっ!!
一瞬、葵ちゃんの背後に炎が上がった・・・・・・・ように見えた。
「よ〜し、よく言った葵ちゃん。2人でがんばろうな!」
「はいっ!先輩」
2人は異様な気合を持って見つめ合っている。
「なぁに?結局私が悪者になっちゃうっわけ!」
なんか仲間はずれにされたみたいで面白くない!
なでなで
「えっ!」
なでなでなで
セリオが綾香の頭をなでている。
「セッ!セリオ!! 何してるの?」
動揺しながら綾香が聞くとセリオは、
「芹香様に教わりました。綾香さんはこうすると落ち着くんだと」
なでなでなでなで
「落ち着きましたか?」
ぷっ!
あははははははは・・・・・・・・
「セリオもういいわ、もう大丈夫だから、ありがとう」
まだ見つめ合っている浩之と葵を見て、
「ねぇ、セリオ?」
「はい」
「あなたは、私を応援してくれる? あっ!いっとくけどこれは、命令じゃないからね」
セリオは綾香を見つめ、僅かに微笑み
「はい」
ただそれだけの答えだったが、セリオの微笑みがそれ以上を物語っていた。
「そう、ありがとう」
綾香の顔にも笑みが浮かんだ。