長く辛かった冬が終わる
あいつと出会った冬
あいつと結ばれた冬
そして、悲しい別れ………
色々な事があった。
それでも、あいつは帰って来てくれた。
この家に
そして、俺のもとに………
『幸せの時…』
− 1 −
「それじゃ、真琴。 行ってくるぜ」
「行ってくるね、真琴ちゃん」
いつもの登校風景。
「うん…いってらっしゃ〜い」
真琴は手を振って見送ってくれた。
俺達が見えなくなるまで、ずっと…ずっと……
一つ目の角を曲がり、真琴から俺達の姿が見えなくなると名雪が静かに口をひらく。
「ねえ祐一………気付いてる? 真琴ちゃんの事」
「あぁ、あんな顔されたらな……」
真琴はいつも、笑顔で見送ってくれる。
………無理して作った笑顔。
だけど見送る姿からは、いつも寂しさが滲み出ている。
あいつは結構意地っ張りだから、自分からは寂しいなんて絶対言わないだろうし……。
「なんとか、しなくちゃなぁ………」
俺はこの時、既にある事を考え始めていた。
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日曜の朝。
俺は、頃合を見計らって切り出した……。
「真琴………お前学校へ行ってみないか?」
「えっ!? 学校?」
「あぁ……いつも家で留守番してても暇だろ?」
俺は出来るだけ穏やかに話した。
「あぅ〜、ヤダよぅ〜っ」
途端に嫌そうな顔をされるが、俺はひるまず続けた。
「学校に行くと、たくさん友達が出来るぞ」
「………友達?」
真琴は、『友達』という言葉に反応する。
「………祐一………それ本当?」
興味が出てきたのか、上目づかいで伺う様に聞いてくる。
「あぁ、本当だぜ。 そうだよな? 名雪…」
隣でくつろいでいる名雪に同意を求めた。
「うん、本当だよ。 真琴ちゃん可愛いから……すぐに友達出来ると思うよ」
名雪の言葉に、真琴はパッと嬉しそうに顔を綻ばせる。
が、次の瞬間我にかえり、急に沈み込んだ。
「あぅ〜………でも…真琴、本当の人間じゃないし………」
「そんな事、関係ないだろ!」
「あぅ……でも…」
「人間だろうが妖狐だろうが、真琴は真琴……だろ?」
真琴は、じぃーっと俺の顔を見詰める。
「いいの?」
不安げな眼差し。
「……真琴……本当に学校へ行ってもいいの?」
「いいに、決まってるだろ」
ポンッ、と頭をひと撫でし俺は言った。
「そうすれば、毎日一緒に学校に通えるしな」
途端に真琴の顔に、満面の笑みが浮かぶ。
「うん、真琴学校に行く〜。 そうすれば、いつも祐一と一緒だね♪」
「あぁ……そうだな…」
真琴は、学校へ行く気になってくれた。
これで、真琴に寂しい思いをさせずに済むだろう……。
それに真琴に友達が出来るというのは良い事だしな。
そんな事を考えていると、不意に名雪が話し掛けてきた。
「ねぇ祐一……私、思ったんだけど……。 真琴ちゃんって戸籍とか無いよね?」
「………戸籍?」
「うん。 転入の手続きとかってどうなるんだろね?」
「うっ……」
………そ、そこまでは考えてなかったぜ。
「祐一………真琴学校には行けないの?」
真琴が不安気な視線を向けてくる。
う〜ん、どうしよう。
戸籍って、どうすれば貰えるんだ?
「……………………………」
ダメだ……思いつかないぜ……。
やっぱりこう言う事は、大人の秋子さんに聞いてみるのが1番かもな……。
俺はダメもと覚悟で、秋子さんに聞いて見る事にした。
「あの……秋子さん? 真琴の戸籍ってどうにかなりませんか?」
「ふふふ……大丈夫ですよ♪ その事については、もう手を打ってありますから……」
「えっ、手を打ったって…………どうやったんですか?」
戸籍なんて簡単にどうこうなるもんじゃないと思うが……。
「実は、ちょっと知り合いに頼んでね…………”偽造” してもらいましたから♪」
普段と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべたまま、秋子さんはとんでも無い事をサラッと告げる。
「ぎ、偽造!? 一体どうやって?」
「それは………ひ・み・つ……ですよ、祐一さん♪」
秋子さんは、口元に人差し指を当てて、楽しそうに微笑む。
(…………あ、秋子さんって一体……)
あっけにとられて黙り込んだ俺に代わって、秋子さんが真琴に話し掛ける。
「……と言う訳で、真琴はこれから、正式に私の娘と言う事になるわよ。 名雪はお姉ちゃんになるわね♪」
「へへっ、お姉ちゃんか………何だか恥ずかしいな♪」
秋子さんも名雪も、当然の様にすんなりと真琴を受け入れた。
だが真琴は、急な展開に戸惑っているようだ……。
「あぅ……いいの? 真琴なんかが家族になっても……」
「真琴ちゃんは、もうとっくに家族だよ」
「そうよ、私もずっと前からそう思ってたわ」
二人は真琴の不安を包み込むように、優しく微笑みかける。
「でも……でも………」
尚も不安げな真琴。
「それに、真琴は祐一さんのお嫁さんでもあるんだから、もう家族以外の何者でもないわ」
「あ、あぅ〜……」
真琴は、『どうしたら言いの』と言う眼差しを俺に向ける。
俺は、真琴の頭に手を乗せて言った。
「よかったな、真琴。 お母さんとお姉ちゃんが出来たんだぞ。……それに素敵な旦那様もだ」
「…………………………………」
真琴はどうしていいのかわからずに、秋子さんを見詰め……。
「あぅ〜………お、お母さん?」
「なぁに……真琴?」
名雪を見詰め……。
「お、お姉ちゃん?」
「なに? 真琴ちゃん」
二人共、優しい眼差しで真琴を見守っている。
真琴の顔に、パッと笑顔が浮かんだ。
「お母さん、お姉ちゃん、祐一。 へへっ、真琴の……真琴の家族なんだね♪」
真琴がこの家に帰って来てからの、一番の笑顔。
そんな真琴を見て俺は思った。
秋子さんがいて
名雪がいて
そして、みんなの中で笑ってる真琴がいる。
これこそが、俺が望んだ光景そのものだったと………。
『あとがき』
ついにKanonのSSに手を出してしまいました。(^_^)
発売後は、ネット上どこにいってもKanonの話題で一杯だったので、洗脳される様に
いつのまにか買っていました。(笑)
確かに話題になるのがわかるぐらい良いゲームでしたね。
しかし、全体的に見て、最後にはハッピーエンドになっている(?)シナリオでも
その前に、1度は、不幸な展開になって、気持ちをどん底まで落としている為、
最後を迎えて、よかったね、と思いつつも、暗い気持ちが心に残ってしまいました。
でも、そうする事でPlayerの心に残るシナリオになっているとも思えるので、後は、
SSの方で、幸せにしちゃおう(笑)、と思い真琴SS書いて見ました。
所々、私の思い込みや願望が入り混じっていますがご容赦下さい。(致命的な所があったらご指摘下さいね)
全体のテーマとして、とにかく真琴を幸せに、と思って書いていくつもりですので
よかったら、ぜひ、ご意見・ご感想をお願いしますね♪
99/07/17(土) 改稿
お話の冒頭部分をちょっと追加しました。
後、一部文章を変更しました。(ほんのチョットですが)
祐一が真琴に、学校へ行くよう薦めた背景を描写して見ましたがどうでしょう?
99/09/06(月) 加筆・修正
00/04/16(日) 加筆・修正
久しぶりに読み返すと、文章がかなり変ですね(汗)まあ、KanonSSの1発目だから……( ̄▽  ̄;;
と、言う訳で色々修正して見ました♪
でも、半年もすれば又、変に見えるんだろうな……