『幸せの時…』
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タッタッタッタッ……………
いつもの通学路を駈けて行く三人。
「真琴〜、早くしろよ。 遅刻するぞ」
「あぅ〜………祐一、待ってよぅ〜っ!」
「このままじゃ、転校初日から遅刻だぞ」
「だって、お姉ちゃんが…………」
真琴は隣を走ってる名雪を伺う。
そもそも、こうして遅刻しそうになっているのは、名雪の寝起きの悪さが原因だったからだ。
「ま、真琴ちゃん……急がなきゃ遅刻だよ」
あさっての方角を見て、とぼける名雪。
「あぅ〜、お姉ちゃ〜〜〜ん」
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「到着だよ〜っ」
名雪が時計を見ると、『8:25』
「予鈴の5分前だね、間に合ったよ」
にっこり笑う。
さすがは現役陸上部。
しかも部長さんだ……息も切らしてない。
その点、現役帰宅部の俺はと言うと……。
「はぁ……はぁー……。 つ、疲れた〜」
膝に手をついて息を整える。
「ゆ…祐一。 いつも…こうなの?」
真琴も俺と同じように、はぁはぁ、と息を切らしていた。
「まあ、あきらめるんだな。 これも名雪の身内になった者の宿命だ」
「あぅ……」
「なんか、ひどい事いってるよ」
「気にするな」
俺は一言で流す。
「気にするよ〜」
「お、お姉ちゃ〜ん、明日からもう少し早く出ようよぅ〜っ」
だいぶ息の戻って来た真琴は、名雪に嘆願する。
「うん、そうするよ♪」
返事だけはいいが、おそらく無理だろうと言う事は俺が一番よく分かっていた。
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息を整えてふと周りを見渡すと、辺りには生徒の姿がまばらになっていた。
そろそろ急がないとやばいかもしれないな。
「名雪〜、俺は真琴を職員室に連れて行くから、お前、先行ってていいぞ」
「え? ……私も付き合うよ」
「そうか? じゃあ行くぞ……」
俺は職員室に向かって歩き出す。
くいくい
袖が引っ張られた。
「ん? 何だぁ……真琴?」
「ねぇ祐一。 しょくいんしつ……って……なに?」
真琴は首を傾げる。
「職員室は先生のいる所だ。」
「……せんせい?」
「あぁ………転校生はまず、職員室に行って、どこのクラスに編入されるかを聞くんだ。
まあ、経験者が言うんだから間違い無いぞ……」
「えっ〜〜! 祐一と一緒じゃないの!?」
何だ? 真琴の奴……俺達と一緒のクラスだと思ってたのか?
「あたりまえだろ? そもそも俺達と真琴じゃ、学年が違うじゃないか……」
「あぅ〜………真琴そんなの知らなかったもん……」
真琴は涙目で、縋るように名雪を見詰める。
「お姉ちゃ〜ん、どうにかならないの?」
名雪は心底、気の毒そうに呟く。
「う〜ん、こればっかりはどうにもならないと思うよ」
「あぅ……」
真琴は可愛そうな位、肩を落とす。
「まあそう言う事だ、あきらめろ」
俺はまだぐずっている真琴を引きずって、取り敢えず職員室に向かった。
「あぅ〜〜」
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職員室の前まで真琴を連れて来た時…。
キ〜ンコ〜ン〜〜〜カ〜ンコ〜ン〜〜〜〜〜〜〜〜〜
………予鈴が鳴り響く。
「ん? もうこんな時間か………仕方ないな……。 真琴……ここが職員室だ。
後は中に入って、先生の言う事をしっかりと聞くんだぞ」
「えっ? 祐一……付いて来てくれないの?」
「後で様子を見に行ってやるから」
俺は真琴の頭をぐしゃ〜と撫でる。
「頑張れよ!」
「あぅ〜……」
「真琴ちゃん、ふぁいと……だよ」
「………………あぅ……………」
今の状態の真琴を残して行くのは、正直気がかりだったが、俺達は教室の方へと向かった。
とても不安だが……これも試練だ。
………頑張れよ…真琴。
『あとがき』
なんとか第2話をお届けする事が出来ました。(^_^)
Kanon全員クリアした勢いで真琴SSを書き始めたものの、よそ様のKanonSSを
読むにつれて自信が無くなってしまい落ち込んだりもしていました。
けれど、よそはよそ、自分は自分、たとえ文章力が無くても溢れ出る妄想とキャラへの愛で
カバーするぞ〜、と自分に言い聞かせて書き上げました。(笑)
そんな訳でかなり難産だった第2話ですが、
みなさんぜひ、ご意見・ご感想をお願いしますね♪
00/04/16(日) 加筆・修正
この後の展開に祐一君の出番が無いので、祐一君が居ない時は、
真琴ちゃんの一人称に切り替えようと思い、ここで話しを分けました( ̄▽  ̄;;
でも短くなってしまったね(汗)
……でも最近、長めの物ばかり書いてたから、1シーン位のお話って
結構、すっきりしていて、好きだな♪
さて、次は真琴ちゃんの一人称にチャレンジするかぁ〜