『幸せの時…』
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学食に戻ると、何故か俺達のテーブルの周りだけ異様な雰囲気に包まれていた。
にやにやと妖しい笑みを浮かべる北川と香里。
ジト目で責めるような視線を送る天野。
「???」
首を傾げる俺達に、北川と香里が口をひらいた。
「相沢、真琴ちゃん。結婚…おめでとう♪」
「クスッ……相沢君もやるわね♪」
「なっ!?」
「あぅ!?」
俺達は咄嗟に名雪に視線を向けた。
「……(サッ)……」
名雪はすかさず視線を逸らす。
「………」
「………」
(こ、こいつ……バラしたな……)
(あぅー、お姉ちゃんー)
取敢えず俺は、名雪におしおきをしつつ二人と話す事にした。
グリグリ
「う、うにゅ〜。祐一痛い……」
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「その……なんだ。分かってるとは思うが……」
俺は含みを持った口調で話し掛ける。
言わんとしてる事を理解したのか、二人はコクリと頷いた。
「大丈夫よ、他言はしないわ」
「安心しろ、俺は口が固いほうだぜ」
「そ、そうか…たすか…」
『『学食1週間でいいぞ(わ)』』
二人は互いに顔を見合わせると、にっこり微笑んだ。
「……なっ……そ、そんな条件が飲めるわけ…」
「北川君、放送室は何処だったかしら?」
「!?」
「放送室は確か……」
意味ありげな会話。
二人はそこで言葉を止めて俺の反応を伺う。
どうやら俺に選択権は無いようだ。
「………くっ……了承だ…」
俺は涙を飲んで条件をのんだ。
二人は両手をパンッと合わせて喜びあう。
「悪いわね、相沢君」
「持つべきものは友達だな」
ぽんぽん…っと肩を叩く北川と香里に対して、おもわず殺気が漲る。
(く、屈辱だ……)
「ねぇ祐一」
真琴はぷるぷると肩を振るわせる俺を心配そうに見詰め、袖を引く。
「あの二人ってホントに友達なの?」
「………さっきまではそう思ってたが、ちょっと自信がなくなった……」
「…………」
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「……相沢さん」
今まで沈黙を守っていた天野が静かに口を開く。
じっと真剣な眼差し。
友達を脅迫するような二人とは大違いだ。
「なんだ?」
俺の返答には答えずに、天野は真琴に視線を向ける。
「あぅ? どーしたの美汐?」
天野はそのまま、じーっと真琴を見詰め続ける。
やがて、ふっと表情を緩めると、再び俺に向き直る。
「相沢さん。真琴を……幸せにして下さいね」
「あ、あぁ…もちろんだ」
「あぅ…」
改めてお祝いの言葉を貰うと、何故か照れるものがある。
北川と香里に脅された後と言う事もあって、余計に心にくるものがあった。
「天野、任せてくれていいぞ。 真琴の事は俺がしっかり……」
「それと……学食1週間です」
俺の話しを遮って、天野はピシャリと言いきった。
「…………………はい?」
一瞬、何の事だか分からずに首を傾げる俺に、天野はもう一度繰り返す。
「……学食1週間です。当然、デザートも付けます」
何故かデザートが上乗せられていた。
「あ、あの……天野…さん?」
「それ位当然です。学食位で許してもらえるのですから……」
「……………」
(何故に天野に許してもらわなければ……)
天野は真琴に向き直ると、真琴の手を両手でぎゅっと握る。
「真琴」
「あぅ…?」
「相沢さんに酷い事をされたら、私に言って下さいね。力になりますから……」
「う、うん」
「……………」
(り、理不尽だ。 兎に角理不尽だ。 俺が一体何をしたと……)
こ、このやり場の無い怒り、何処にぶつければいいのだろうか……何処に……。
辺りを見まわす。
ふと目に付いたものが1つ。
取敢えず……。
ぐりぐり
「う、うにゅ〜。祐一痛い……」
『あとがき』
…………………手屁、お久しぶりです(汗)
ちょっと個人的に、お仕事で出張が4ヶ月も続いちゃってまして、 真琴「あぅ〜、ネットゲームはやってるくせにぃ〜っ」
SS書く気力が沸かなかったのです(汗)
でも、何人かの方から感想めーるを戴き、ちょっぴり気力回復♪
裏で書いてる夏祭用原稿の合間に(笑)こちらの方も、こつこつと書いて行こうと思ってます。
(注: この連載は、その場のノリで書いてます)
それでは〜っ♪
02/05/05(日)