『千鶴さんの休日』
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し〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
千鶴さんの良くわからないフォローに、その場にはなんともいえない空気が漂っている。
しばらくして、
「あ、あの〜綾香さん? あの人は、いったい?」
その場の空気に堪えられなくなった葵ちゃんが、助けを求めるように聞いてくる。
「私に聞いてもわかんないわよ。いきなり飛び出して来たと思ったら、いい歳した大人が
『イヤですぅ』 なんて、ぶりっこして・・・・・・・」
ピクッ!
いい歳ですって!!(怒)
「ちょっと、そこのあなた? 今、 な・ん・て いったのかな?」
表情には笑顔が浮かんでいる。
その実、千鶴さんは鬼の力を解放していく。
「えっ! な、何??」
千鶴さんから発せられる殺気のような気配を感じ、とっさに構えを取る綾香。
「綾香さん!」
危険な気配を察して、綾香に近づこうとする葵ちゃんを
キッ!
目線ひとつで止める。こ、怖い〜。
「葵、気をつけて!この人、なんかやばい感じ」
千鶴さんは、笑顔を浮かべたまま、綾香に近づいて行く。
「そう、あなた、綾香って言うのね」
そう言うと、不意に笑顔が消え、
「・・・・・・綾香ちゃん・・・・・・・・・あなたを殺します」
そう言うと、鬼の力を全開にする。
綾香の『いい歳した大人』と言う言葉に、千鶴さんは完全に切れてしまった。
千鶴さんが綾香に対して力を向けようとしたその時、
「どうした!何があったんだ?」
耕一が現れた。
先程からの不穏な気配を感じて駆けつけて来た。
その瞬間に、殺気はピタッと収まった。
千鶴さんはゆっくりと振り返り、
「あら、耕一さん、こんな所で会うなんて奇遇ですね」
その顔には、笑顔まで浮かんでいる。
「き、奇遇って、千鶴さんなのか? どうしてこんな所に?」
耕一は不思議に思って聞いてくる。
「偶然なんですよ、偶然。たまたま散歩してたら、ここに来ちゃったんですよ。そうしたら、
この子達が何か面白そうな事をやってたから、見学させてもらってたんです。
そうですよね?」
千鶴さんは笑顔でごまかしに入った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ジト目で、無言の2人。
「え〜と、そうですよね?」
もう一度聞く。
表情には、『そうだと言って?』と言うサインと冷や汗が浮かんでいる。
耕一が2人に、
「そうなのか?」
と聞くと、2人はそろって首を振る。
みんなの視線が千鶴さんに集中する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てへ」
かわいらしく、舌を出してごまかそうとする。
その場にいた、みんなは心の中で呟いた。
『この偽善者!』
その後、千鶴さんは、耕一に連れられて帰っていった。
帰り際に、耕一の方はしきりに申しわけなかった、と謝まってくれたが、
当の本人は、『私、悪くないもん』 と、まだブツブツ言っていた。
その場には2人が残された。
「綾香さん、あの人達、結局、何だったんでしょうか?」
「さ、さあ?でもあの女の人、只者ではないわ、あらゆる意味でね」
「へぇ? そうなんですか。私は、ただの変な人だと思いますけど・・・・」
彼女達の中では、千鶴さんは変な人として記憶された。