『幸せの時…』

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休み時間。

俺と名雪は、朝の約束通り真琴の様子を見に教室までやって来ていた。

教室の後ろの入口。

開いているドアから顔だけを覗かせて、教室の中を見回す。

(キョロキョロ)

「どう、祐一? 真琴ちゃん、元気にやってる?」

「う〜ん……………………おっ、居たぞ………あっ!」

思わず声が漏れた。

「ど、どうしたの祐一………まさか真琴ちゃん、苛められてるんじゃ……」

慌てた名雪が俺の頭の上から顔を出して教室の中を覗き込む。

そして……。

「あっ!」

名雪も俺が見た光景と同じものを見て声をあげた。

教室の奥の位置。

ツインテールに結んだ髪に、見慣れた赤いリボン。

間違い無い、真琴だ。

その真琴は、隣の席の女の子と楽しそうにお喋りを交わしていた。

「どうやら、上手くやってるようだな………」

俺はホッと胸を撫で下ろした。

「うん…よかったね、祐一♪」

「ま、まあ…俺は最初から心配なんかしてなかったけどな」

クスクス…。

名雪は口元に手を添えて、楽しそうに笑う。

「さっきの授業中、ず〜っとそわそわしてたのは、何処の誰だろうね♪」

「う、うるさい……」

俺は照れを隠すように怒鳴ると、

「行くぞ、名雪」

「うん」

教室の中に足を踏み入れた。

 

 

 

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「よう、真琴。 元気にやってるか?」

「あっ、祐一ぃ〜」

真琴は俺達に気付くと、席に座ったまま上半身を振りかえらせ、表情を輝かせた。

下級生のクラスに入って行くのは少し抵抗があったが、気にしてはいられない。

俺達は真琴の席へと近づいて行った。

すると、見知った顔が……

「あれ? 天野じゃないか」

「どうも、ごぶさたいたしております。」

天野はペコリと律儀にお辞儀を返した。

 

「………………」

 

そのおばさんチックな仕草に、俺は、思わず心に思った事を口走る。

「……………………あいかわらず、おばさんくさいな……天野は……」

「……………( ̄□ ̄;)」

「……………( ̄□ ̄;)」

言ってから、少し後悔した。

いくらなんでも久しぶりに会った女の子に言う台詞じゃ無いよな……。

俺はちょっと不安になって天野の様子を伺う。

しかし、天野は俺の失礼な言い草に怒るでもなく微笑む。

「せめて、物腰が上品と言って下さい………クスッ、相沢さんはあいかわらずですね」

「そ、そうか?」

「はい」

どうやら怒ってはいないようだな。

俺が安心したその時。

 

ぽかっ!!

 

真琴からのツッコミを受けた。

「祐一! 美汐に失礼な事言っちゃダメェ〜っ!」

「そうだよ祐一、今のは女の子に言う台詞じゃ無いよ」

真琴と名雪の二人に攻められた。

これは流石に分が悪いぜ……こう云う時にはやっぱり……。

「うぐぅ〜」

「あゆちゃんの真似してもダメだからね!」

取って置きの免罪符、『うぐぅ』は、名雪に軽く交わされた。

「じゃあ、うにゅ〜」

「お姉ちゃんの真似もダメ」

「わ…私、そんな事言わないよぉ〜」

思いっきり焦って否定する名雪。

これもダメか……。

「それなら、あぅ〜」

「真琴の真似もダメ〜っ!」

「我侭な奴らだな………じゃあどうすれば良いんだ?」

俺は、やれやれと云った感じで肩を竦める。

「もっと普通に謝れないの?」

「普通? …………………………そうだな……悪かったな…天野。 許してくれるか?」

「クスクス………はい、許します」

天野は楽しそうに笑い、謝罪を受け入れてくれた。

 

 

 

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「久しぶりだね、美汐ちゃん♪」

気を取りなおした名雪が挨拶を交わす。

「はい、名雪さんもお変わりなく」

「…………」

どうみてもおばさんくさいんだけどなぁ〜。

俺がそんな事を考えてると…。

「あれ? お姉ちゃん、美汐の事知ってるの?」

真琴が不思議そうに首を傾げる。

「知ってるって……真琴ちゃん、覚えて無いの?」

「あぅ?」

 

そう……真琴は過去の事を全て覚えていた訳では無かった。

まあ、居なくなった時の真琴の状態を考えれば、無理も無い事だろうがな……。

以前に、思い出して貰おうと色々と試しては見たがダメだった。

無理に思い出そうとすると、頭の中にもやがかかったような状態になるらしい。

そんな訳で、俺は真琴に美汐との関係を話してやる事にした。

      ・

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「……と言う訳だ…」

俺の話が終わると、真琴は天野に問い掛ける。

「……………………………じゃあ美汐は……真琴の事を知ってたの?」

「はい、以前に……」

「あぅ〜、ごめんね………真琴、覚えて無いよぅ……」

申し訳なさそうに謝る真琴に、美汐は首を振る。

「気にしてませんよ。  あの時の真琴の状態では仕方がありませから……」

「で…でも……」

何か言おうとした真琴を天野は制す。

「それに、真琴は帰って来てくれました……それ以上は望みません」

にっこり微笑む。

「あぅ……美汐ぉ〜」

真琴は涙目で天野に体を寄せた。

天野は真琴の背に腕をまわし、優しく抱きしめると。

「それでは改めまして………おかえり真琴…」

「うん……ただいま♪」

 

 

俺と名雪はそんな2人を優しく見守っていた……

 

 

 

 

 

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『あとがき』

う〜ん、ちょっと心残り。

思いつきで、特に全体の構想などがある訳でも無く、只、真琴ちゃん好き好き♪

と、云う思いだけで書き始めたもんだから、ボロが出るわ出るわで、もう、うぐぅ〜、って感じです(汗)

どうして祐一君は……美汐ちゃんと、真琴ちゃんを逢わせて上げなかったの?

なんて云う事は…・・・・・・・・・気にしてはいけません。

私もどうしてなんだろうと思ってるくらいだから(汗)

 

さて、次回は………特に決めてありません( ̄▽  ̄;;

まあ、美坂姉妹……北川君……佐祐理&舞……あゆ………と、真琴ちゃんに紹介してあげたいキャラが沢山いるから

ネタには困らないでしょうが……

次も早く公開できるように早速執筆開始です。

みなさん良かったら感想等下さいね♪ 一言でも良いので(汗)

最近、反応が少なくて、もしかしたら、あまり読んでくれてる人が居ないんじゃないかとちょっと心配………あぅ……

 

それでは〜っ♪

 

00/08/12