『幸せの時…』
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「遅〜〜〜〜いっ!」
俺達が学食に着くと、真琴の怒声で迎えられた。
もうすっかり以前の元気一杯の真琴だ。
やっぱり学校へ通わせた事は正解だったみたいだな。
「真琴……大きな声を出さないの」
「あぅ〜」
美汐がやんわりと咎めている。
不思議なもので、天野の言う事には、反発しないようだ。
俺達は真琴達がいる席へと向かった。
「悪い、名雪の奴が中々起きなくてな」
二人は、名雪に視線を向ける。
「……納得」
「……そうですね…」
何の疑いも持たなかったようだ。
「私……寝てないのに……」
名雪は少しいじけてしまった……ちょっと可哀想になってきたから、もうからかうのはよそう…。
そんな名雪を他所に、香里は真っ直ぐ真琴に歩み寄る。
真琴の前までくると、にっこりと人当たりの良い笑みを浮かべ、自己紹介を始めた。
「あなたが真琴ちゃんね」
「あぅ?」
「私は美坂香里…名雪や相沢君のお友達よ。よろしくね」
「あぅ……」
「ほら、真琴……ご挨拶は?」
「う…うん、え〜と…その………よ…よろしく……」
あたふたとしつつも、なんとか挨拶を返す。
「うん…仲良くしようね♪ え〜と………それであなたは?」
「あぁ……申し送れました。 私は天野美汐と申します。 以後、お見知りおき下さい…」
丁寧に深々とお辞儀。
「礼儀正しいのね……こちらこそよろしく♪」
「……はい」
香里達が、ほのぼのと自己紹介を始めた頃、北川はと言うと…
(じ〜〜〜)
真琴を観察していた。
「な…な…何よぅーっ!」
真琴は天野の袖をギュッっと握って、警戒を現す。
「ん〜……なあ相沢…この娘が真琴ちゃんか?」
「そうだけど……どうかしたか?」
「いや…あんまり水瀬さんに、似てないなと思って……」
まあ、実際血縁はないんだから似てないのも頷ける。
たが、その辺の事情をわざわざ説明する気は、俺には無かった。
「ねぇ祐一………誰? この変なの?」
真琴が、怪しいものでも見るかのような、怪訝な顔つきで聞いてくる。
俺は、そんな真琴の反応に苦笑を浮かべつつ、北川を紹介する事にした。
「この変なのはな、北川という奴で、一応俺の友達だ……」
「こらっ、変な紹介するなっ! そもそも、変と云う点では、相沢の方がよっぽど変だぞ」
「残念だが、お前には負けるよ」
「い〜や、相沢の方が変だっ!」
「北川だっ!」
「相沢だっ!」
・
・
・
・
低レベルな言い合いを始めた俺達。
香里は呆れ顔で、
「ねぇ…真琴ちゃんは、どう思う?」
「う〜、どっちも変だよぅ…」
「正解ね♪」
真琴はしばらく俺達の言い合いを聞いていたが、何かを思いつき、
クイクイ
香里の袖を引っ張る。
「ねぇ…」
「ん…何?」
「………やっぱり祐一って………その……変な奴なのかなぁ?」
やっぱりとは、どう言う事だ!!
怒鳴ろうとした俺より先に、香里が答えた。
「うん…ちょっとね…」
か…香里………
「おっ、真琴ちゃん、それに気付くとは結構鋭いな…」
北川もここぞとばかりに、反応する。
「えっ、そ…そうかなぁ……」
誉められて嬉しいのか、照れ隠しで頬を掻いてる。
「案外、俺と気が合うかもな……お兄さんと付き合わないか(キラーン)」
こいつは………手を出すなと、教室で言っておいたのに……
「えへへ〜、だ〜め……だって真琴は、ひとずまなんだから〜っ♪」
ピタッ!
真琴の言葉に、周囲の時間が止まった。
その後、一拍おいて、
『『人妻ーっ!?』』
「うん、祐一のお嫁さん……むぐぅ」
俺は慌てて真琴の口を塞ぐ。
「ひゅい〜ひぃ〜〜〜ひゃにひゅんひょひょ〜〜〜っ!(祐一、何すんのよぉ〜っ!)」
真琴は抗議の声を上げジタバタと暴れる。
「お…おい、相沢。 今…真琴ちゃん……」
「は…はは……はははは………」
俺は誤魔化し笑いをしつつ、真琴を連れて学食を出た。
(チリチリチリチリチリチリ………)
何故か、天野からほとばしる殺気が痛かった。
『あとがき』
今回は、ちゃんと真琴ちゃんが出ています(笑)
香里&北川との御対面も叶いましたし、私自身、大変満足しています…………いえ、作品の出来じゃなくて、
真琴ちゃんに、お友達が増えるのがですよ……( ̄▽  ̄;;
さあ〜て、次はどうしようかなぁ〜♪
栞ちゃんも、出演させたいしね♪
(注: この連載は、その場のノリで書いてます)
それでは〜っ♪
00/11/04(土)